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金色の真実

天から金色の鱗がまるで桜吹雪の様に舞い落ちてくる。

その鱗は空中をある程度浮遊すると更に霧散し、キラキラ光る黄金の雨粒になり最後は地面で光輝く粒子になり消えて行く。

普通の魔物と違い伝説の魔竜の最期は壮大にして荘厳を極めていた。


リカントの群れから歓声が上がる。


と、その時だった。

地面で光の粒子となっている黄金魔竜だったものから強い意識、いや、意思のようなモノが俺の中に入り込んできたのだ。


「!?!?」


あまりに突然の出来事に絶句してしまい声も出ない俺に対して、その意思のようなモノは語りかけてきた。


「「我が名は黄金魔竜、伝説にして太古の魔竜。しかし、我はかつて人で有った。」」


「な!?」


あまりの突拍子も無い言葉に思わず声が漏れる。

黄金魔竜が、もと人間??

俺は疑問を共有するために辺りを見回して仲間の顔を探してみる。

しかし、ここで周りの様子がついさっきまでと一変している事に気が付いた。


「な、何だここ・・・?」


俺はいつのまにか渇き知らずの滝では無く、辺りを黄金の粒子と黄金の花と黄金の大地で覆い尽くした異空間に転移させられていたのだ。


「ここは我が深層心理の空間。外の世界とは隔離された時間の止まった世界だ。

我を倒したお前とだけ話せるように他の者達と時空を遮断させてもらった。話が終われば元の時空の元の時間に戻す。」


「な、なんだよ話って。」


竜と会話している事自体がすでにかなり有り得ない事なんだが、、、俺はこの後さらに有り得ない真実を知る事になる。


「先ほども話したが我はかつて人であった。ここでは無い別の世界で結婚し、子供、そして孫に恵まれ、次の世に色々な物や想いを託し、繋げ、後は緩やかな死を待つだけの老人で有ったのだ。」


ゴクリ、と俺は唾を飲んだ。

今の俺は自分が何の為に生まれて何の為に生きて行くのかなんて解らない。

しかし、この魔竜・・・いやこの老人はソレを悟り達成たんだろう。

語りかけてくる穏やかな声からなんとなく俺はそう確信した。


「日に日に胸が痛むようになり、身体の自由も効かなくなり、いよいよ死期を悟った時・・・つい一瞬、本当に少しだけ・・・思ってしまったのだ。健康で力強く脈動していた頃の肉体が、若さが恋しい、と。」


人生の悟りも、その僅かな想いも、まだ若く経験浅い俺には到底理解できない。


「その時だった。我が身体が感じた事の無い程の激しい振動を始め、景色が歪んだ。なにがなにやら解らず目を閉じたのだが、次に目を開けた時には我は彼の地にはおらず、この世界、エスブリッジに転移していたのだ。」


「え??・・・おいちょっと待て。」


「更に、強い肉体を恋しく思った心に、もしくは理想に反応したのかもしれん。我が肉体は巨大な黄金の竜へと変異していた。」


「まさか、まさか!?」


「我が真の名は今鹿風谷(いましかふうや)。こことは別の世界、日本という島国の人間なのだ。」


何てこった。

コイツは、黄金魔竜は、年老いた時間軸の俺が、今鹿風谷が転移して、さらに理想の力で竜の姿に変異した存在だったのだ。


リサの【性別が変わる】理想の力にも驚いだが、まさか人間以外に変異することまであるなんて・・・。


「その後数百年を竜として過ごすうちに次第に理性は薄れていき、ただただ食事と睡眠と闘争本能のみを満たす野獣、いや魔竜に成り果てていたのだ。」


数百年か。

長い、長すぎるぜ。

R先生も真っ青な年月だ。

この人はその悠久の時をどんな気持ちでで過ごしてきたんだろうか?


「しかし、今お前に倒された事によってやっと長きに渡る竜の呪いが解けた。やっと死ぬ事が出来る。ありがとう。」


そうか、この人は元の世界で人生を全うした後に転移したから終わる事が望みだったんだな。

やり残した事が沢山あるから元の世界に戻る事が望みの俺達とは根本的に違うのだろう。


「最期に、お前に我が力を授けて逝こうと思う。」


「いやいやいや!竜になんかなりたくねーよ!?」


「いや、あくまでもベースの肉体はお前だ。我の、、、黄金魔竜の力と魔力、そして経験をお前に加算する。」


「・・・何で、何でそんな事するんだ?」


「ふむ、そうだな。我を倒してくれた礼と、それから・・・何となく我がこの世界にいた証を残したいのかもしれんな。」


自分が生きた、自分が居た証を何かに刻みつけておきたい。

その気持ちは今の俺にも理解できた。


「それに、お前も今鹿風谷なのであろう?」


「!!・・・気付いていたのか?」


「まあな。我が力がこれからこの世界で生きていく糧になる事を祈るよ。もし、元の世界・・・日本に帰る事ができたら、妻や子供をよろしくたのむ。」


いや、まだ俺未婚なんだけどな。


「では、さらばだ。」


そう言うと、黄金魔竜の意識は俺の中に溶け込むように消えていった。


「お疲れ様、ゆっくり休んでくれ。」

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