天に唾吐きし者達
ヅガガガガゴゴゴゴゴオーーンッ!!
凄まじい轟音と共に乾き知らずの滝が丸ごと吹き飛び地形が変わる。
オレ達とリカント達が居る位置のほんの数メートル先まで大地にヒビが入っている。
・・・あっぶねー。
雲散霧散した滝の水が辺り一面を雨景色に変えた。
滝が無くなり行き場無くなった上流からの川の水の流れはクレーターになった部分に溜まり始めている。
そのうち池、もしくは小さな湖にでもなりそうだ。
バッサバッサバッサバッサ!!
爆発の水蒸気と砂煙が収まり視界が開けてくると、今度は巨大な羽音が聞こえて来た。
空を見る俺達、そしてリカント達が見たものは絶望的にデカイ黄金色のモンスター、黄金魔竜であった。
「な!?バカな!?なぜ黄金魔竜が目覚めているのだ!?こいつは滝の鍾乳洞で深い眠りについているはずでは無いのか!?」
驚愕の声を上げるリカントロードウィスハート。
あー、ごめんねー、うちの厨二病患者が刺激して起きちゃいましたー。
・・・と、馬鹿正直に言ったらマジギレしそうだから黙っておこう。
ホークスとリサとも目配せしてうなずき合う。
「ギャー!グギャー!?」
余りの恐怖に奇声をあげて北の森の方角に逃げ出すリカント達。
その声に反応して黄金魔竜が口に巨大なエネルギーを貯め始める。
「あ、ヤバイ」
あれはおそらく乾き知らずの滝を吹き飛ばした光のブレスだ。
あんな物をまともに食らったらリカントどころか北の森も吹き飛び兼ね無い。
ポーションの材料調達どころでは無くなる。
「ジョーカー!!全属性反射鏡であのブレスを防いでくれ!!」
「いやしかし、あれだけ広範囲だと全属性反射鏡の防御力はかなり下がるぞ?」
「それでも良いから頼むぜ天才!」
「お、おう!我に任せとけ!!」
こいつの扱い方が段々と解ってきた気がする。
「ウィスハート!!リカントとジョーカーやオレ達も含めた全員にタートルプロテクションを掛けろ!!」
「は?なぜお主が仕切っているのだ!?しかもお前達にまで・・・」
「良いから早くしろ!仲間のリカントが死ぬぞ!!」
「ぐぬっ・・・ま、魔力の障壁よ、皆を守る盾となれ!【タートルプロテクション】!!」
凄く不満そうだが緊急事態と判断したらしい。
ウィスハートは渋々俺達を含めた黄金魔竜以外のこの場にいる全員にバフをかけた。
身体の周りに緑色の淡い光が灯る。
・・・よし!
と、次の瞬間。
「グアオオオオオオッ!!!」
激しい咆哮と共に黄金魔竜の口に蓄積された超高圧エネルギーが光のブレスとなり俺達目掛けて一気に放出された。
「今だジョーカー!!」
「フハハハハッ!我が力見せてくれる!
超広範囲版! 全属性反射鏡ぅ!!」
今までに無いほど広域な光と螺旋のエネルギーの壁が俺達とリカントを包み込んだ。
ドッガーーーーーーーーーーン!!!
光の極太ブレスと全属性反射鏡が激しくぶつかり合う。
時間にして5秒ほど。
威力にして半分強を防いだくらいで全属性反射鏡は砕け散った。
よし、思いの外防げた。
あとは、、、
「ジョーカー!俺をブレスの方へ螺旋の力で思い切り飛ばせ!!」
「承諾したっ!!」
「うおりゃああああああああっ!!!」
残った光のブレスのエネルギーに向かって、俺は拳を突き出して突っ込んだ。
世界最強の理想の力、それは攻撃力のみの話では無い。
防御力も耐久力も世界最強の筈だ。
さらにウィスハートのバフも掛かっている。
ズバババババババッ!
俺の拳は光のブレスの中をブチ抜き根元の黄金魔竜の口元に抜けた。
「ギャオーーー!!」
一瞬驚きの声を上げる魔竜。
俺が抜けて来た事で光のブレスはだいぶ霧散した筈だ。
あれならタートルプロテクションがかかっていれば、ダメージゼロ・・・とはいかないが死ぬ事は無いだろう。
さて、んじゃあ行きますか!
「喰らいやがれっ!」
俺は黄金魔竜の目と目の間、眉間の部分に全力で剣を突き立てた。
其処だけ竜の鱗が無かったし、何となく【ここが弱点だ】といった予感がしたのだ。
ザシュウゥゥッッ!!
「グギャーアアアアッ!!」
ホークスの無限収集箱から借り受けている【黒曜真打刀】が眉間に7割以上食い込み、たまらず黄金魔竜が唸り声とも悲鳴ともつかない雄叫びを上げる。
「今だ!一斉攻撃っ!!」
俺が叫ぶ!
一瞬戸惑って顔を見合わせるホークスとリサだったが俺が黄金魔竜に突き立った黒曜真打刀を指差していることに気が付き即座に行動に移った。
「ホースプラズマ!!」
リサが雷属性の中位魔法を唱える。
本来なら黄金魔竜の分厚い金色の鱗に阻まれダメージは通らないのだろうが、リサが狙ったのは魔竜本体では無く眉間に突き刺さっている剣だ。
剣に落ちた電撃は眉間の傷口を通して黄金魔竜の内部に直接流れ込む。
「グギャアアアアアアッ!」
続けてホークスが竜の背を器用に駆け上がりながら雷属性下位魔法【ポニーボルト】を唱える。
しかし魔法の対象は黄金魔竜では無く自身が右手に構えた刀の切っ先だった。
「魔装剣・雷刃!」
魔装剣とは、【紅の聖剣】ホークスの数ある剣技のうちの一つで、魔法を自刃に宿らせ斬りつける属性剣撃である。
ホークスは【雷刃】、文字通り雷の魔力を宿した刀で魔竜の眉間、俺が突き刺した黒曜真打刀のすぐ脇を突き刺す。
「グアオオオオオオ!?」
「無限収集箱!!」
空中に現れるプチブラックホール。
ホークスは其処から黄金魔竜に刺したものとは別の刀を取り出して頭部から足に掛けて走り抜けながら連撃を放つ。
「秘技、瞬光殺・12連斬撃」
本来ならば強靭な鱗に弾かれてしまうはずなのだが、ホークスは小器用に鱗と鱗の間に差し込むように刀を通して斬りつけているのだ。
伊達に剣聖と呼ばれているわけでは無い。
さらにこちらの刀にもいつのまにか魔装剣・雷刃を使っている。
「グガガガガァ!」
痺れて硬直し、両翼を無防備に開く黄金魔竜の隙を突き、ジョーカーが超力を発動させる。
「天界の神々に成り代わり、我が貴様を永久の眠りへ誘ってやろう!神罰天雷撃!!!」
ズガガガガガガガッッ!!
巨大な無数の落雷が渦を巻きながら黄金魔竜の眉間に刺さった二本の刀や翼に落ちまくる。
そして。
ズドーーーーーン!!!
ついに巨大な古の竜は空から大地に叩き落とされたのだった。




