規格外
地中から姿を現した黄金の巨大なソレは俺の想像を遥かに超えていた。
ツノ、顔、首、、、全てのサイズが規格外である。
この2日出会って倒して来た魔物なんてコイツに比べたらアリンコみたいな物だ。
肩、胸、腹、、、次々に全貌を表す黄金魔竜の姿に圧倒されつつも、俺は有る考えが頭をよぎっていた。
「こいつ・・・もしかして・・・」
俺の予感が正しければ多分こいつは・・・
一瞬思考に神経を奪われ動きを止めてしまったオレにリサが叫ぶ。
「サイキョー!?何固まってるの!!」
「早く避難するんだ!こっちの岩陰に隠れろ!!」
いつのまにか数十メートル手前にあった岩の後ろに身を隠していたホークスもこちらに指示を飛ばす。
「あ、いや、コイツ多分・・・」
言いかけた瞬間、ついに黄金魔竜の足が地表に現れ、
「グオオオオオオオオッ!!」
と言う雄叫びをあげて一気にその巨躯を持ち上げる様に立ち上がった。
そして・・・
ゴチーーーーーーンッ!!
黄金魔竜は鍾乳洞の天井に豪快に頭をクリティカルヒットしてそのまま崩れ落ちた。
「ギャアアアアアアアス!!?」
・・・うん。
何となくツノと頭のサイズを見た時にこの空間には入りきらないんじゃ無いかなーって思ってたんだよね。
てかどうやってここに入って来たんだよこの竜。
眠ってる100年間で育ったのか?
はたまた鍾乳洞自体が竜が眠った後から上に出来たのか?
全ては謎で有る・・・が、コレはチャンスなんじゃなかろうか?
シーン。
余りのことに放心状態のリサとホークスの二人に声をかける。
「おい、今のうちに鍾乳洞を抜けるぞ!」
俺たち3人は全力で鍾乳洞後半戦を走り抜けた。
ジョーカーだけは高笑いしながら螺旋力で浮かんで付いて来た。
飛ぶの気に入ったのかな厨二病君。
とにかく黄金魔竜が気を失っている間にドロンしたかったのでモンスターと出会っても完全に無視して走りつづけた。
結果、ネットゲームで言う所の【モンスターがトレインした状態】になってしまっていたが、気にしてられない。
鍾乳洞を抜けてから考えよう。
走り続けること数十分後、やっとこさ出口の光が見えてきた。
後ろには下手をしたら100匹近いモンスターがトレインしているかもしれないが、俺たちのスピードが速かったのもありだいぶ差が開いている。
コレならば数分は追い付かれないだろう。
鍾乳洞を抜け切ったら草むらから岩陰にでも身を隠してやり過ごそう。
しかし、そうそう上手くいかないのが世の常である。
鍾乳洞から滝の反対側に抜けた俺たちを待っていたのは大量の魔物の群れだった。
二足歩行の武器を持ったキツネと犬の間の子の様な風貌のモンスター、【リカント】。
その数、およそ100匹。
「おいおい、何だよコイツら!?北の森にいるんじゃあ無かったのかよ?」
「群の真ん中に一回り大きなリカントがいるわ。おそらくアイツがリカントロードよ。」
リサが指差した先には銀色の毛並みの他のリカントとは体格も筋肉量も違うあからさまにボスッポいリカント亜種がいた。
「やれやれ、人間ども、こんな場所まで踏み込んできていたか。パトロールをしに来て正解だったな。」
うお?コイツ、人の言葉を喋るのか?
「我が名はリカントロードのウィスハート!リカントを束ねるモノだ!!」
魔物が喋る事自体が珍しいのでこう言う感想を抱くのは可笑しな話だが、魔物の声にしてはガラガラしていなくて意外と通る声だ。
不思議な事に親しみを感じる。
「我らは魔王軍とは組さない。しかし人間と組するつもりも無い。この【渇き知らずの滝】は言わば我々リカント族と人間との領土の境界線だ。こちらに踏み込むようなら容赦しない。」
うわぁー喋れば喋るほど魔物感薄れるぅ〜。
「こちらは100匹以上の軍勢、それに対してお前達は4人・・・多勢に無勢だ。大人しく引き返すが良い。」
確かに多勢に無勢だが、ポーションの原材料の一つである【蒼天の実】が北の森にしか無いんだから引くわけに行かない。
「俺たちは別にお前らと事を構えるつもりは無い。ただ北の森には貴重な植物がたくさん有るんだ。人間にとって必要不可欠なモノも多い。それらを採取させてくれれば問題ない。」
話が通じそうだと踏んだのか、ホークスがウィスパーとに呼びかけた。
「ダメだ!北の森は我々リカントが統治した!人間が侵入する事罷りならん!」
「もともと北の森はザーキミヤ王国が統治して居たのよ!」
リサも加わる。
「しかしオヤハ王が殺されて国は滅んだのであろう?ならばもはやザーキミヤ王国が統治していたのは過去の話だ。今の統治者はこの我、リカントロード・ウィスハートである!」
「永劫の闇の中を彷徨うがごとく話にならないな、やはり獣とでは交渉不成立ないのでは無いか?」
何て?
しかし戦って通ろうにも100匹は多過ぎるし・・・ん?100匹・・・そうだ。
「ジョーカー、ちょっと耳貸せ!」
「何だ?我が盟友・最強よ。」
「いいから耳貸せ!」
ゴニョゴニョゴニョ
俺はジョーカーにこの場を切り抜ける作戦を耳打ちした。
「なるほど、では早速行くぞ!リサ!ホークス!二人とも我が近くに集うが良い!」




