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使ったら補充しなくちゃね

「一体全体なんでこんな事になっているのですか?」


怒り半分驚き半分、そこにほんのり呆れた雰囲気も加えたような表情でアール先生が尋ねる。

ちなみに俺とホークスは地面に正座している状態である。


「いや、これには深い訳があるんですよアールさん!最強のヤツが無茶するもんだから・・・」


「ホークスが俺の攻撃受ける度にいちいち大怪我するので仕方なくポーション使い続けました。」


被せ気味でアール先生に説明する俺。

ホークスが何か言いたげにこちらを見ながら口をパクパクしているが無視しよう。


「いやあまさか俺に剣術を教えてくれるはずの、いわば師匠ポジションの人があんなに繰り返しボコボコになるとは思わなかったので・・・」


「ちょ?おま!?」


とりあえずアール先生怖いから罪はホークスに全部被って貰おうナスリツケヨウソレガイイ。


「ハァ・・・」


先生は俺たちを交互に見比べて溜息をつくと、一回深々と瞼を閉じ、しばらくした後話し始めた。


「まあ私の理想の力【莫大資金】が有ればポーションの材料は幾らでも買い足せますから良いのですが、ただ材料の中に一つだけ市場に出回り難いモノが有るんですよ。」


アール先生がそこまで話すと脇に控えていた目深にフードを被っていた女性が一歩前に出て話し始めた。


「ポーションの原材料は【癒し草】、【蒼天の実】、【清めの水】、この3つなんだけど、蒼天の実が最近全然手に入らないの。このお屋敷から北へ10キロ程行ったところにある森に実っているんだけれど、私一人では取りに行くのは難しいから。」


そういうと彼女は被っていたフードを脱いで顔を出した。

俺と同じくらいの年代だろうか?

後ろで束ねられ腰まで有る淡い栗色の髪、色彩の薄い黒目、整った人形の様な顔立ち・・・。

俺の初恋の人、植野歩女(うえのあゆめ)とはまた違ったベクトルで可愛らしい女の子だ。


「おっと、ご紹介が遅れました。彼女はリサ・キキノーデ。魔法薬やマジックアイテムの錬成を生業にしている魔法使いです。彼女に依頼して対魔王軍戦闘用の回復薬などを作って貰っているんですよ。」


歩女(あゆめ)が想像したことの無いような可愛らしい女の子だとしたら、リサは男子高生がいつも想像している理想の女の子、と言った感じだろうか。


「貴方方二人にはポーションを必要以上に使い込んだ責任を取ってもらう為、修行も兼ねてリサと一緒に北の森へ【蒼天の実】の採取に行ってもらいます。」


とたんにホークスがギョッとした表情をする。

何だ?


「アールさん、北の森に行くのは構わないが、その・・・リサも一緒に行くのか??」


「そりゃそうですよ。貴方には蒼天の実と他の実の区別がつかないでしょう?あの森には似たような実も植物も沢山ありますからね。」


「ぐぅ・・・。」


苦虫を潰した様な表情をするホークス。

・・・はっはーん。

さてはこの2人、過去に何か一悶着有ったな。

日本に恋人が居るってのにふしだらなヤツだ。

・・・あ、コイツ10年後の俺だった。

ふしだらブーメラン。


「えっと、ホークスに最強さん。そんなわけなんで北の森にご一緒させていただきます。宜しくお願いしますね。」


物腰や喋り方や声も、如何にも可愛らしい女の子と言った感じだ。

先に歩女(あゆめ)に出会ってなければ特別な感情を抱いていたかもしれない。


「えっと、多分俺と同じくらいの歳だよね?だったら敬語とか、「さん」付けとか要らないよ?風谷・・・じゃない、「最強」って呼んでくれ。」


「ありがとう、じゃあ宜しくね、「サイキョー」それから「ホークス」、短い旅だけど宜しくね♫」


はい可愛らしい。

楽しい旅になりそうだ。

おっとイカンイカン、俺には植野歩女と言う心に決めた女性がいるんですよー。


「ああそれから、今回の旅にはジョーカー君も同行させます。やはり実戦経験も重要ですからね。」


一週間アール先生にみっちり鍛えられたジョーカーがどんな進化を遂げているのか、実はほんのり楽しみでも有る。


「では早速皆さんには旅支度を整えてもらいます。出発は2時間後、屋敷の玄関口に集合という事で。」


アール先生の号令で一同解散し、俺は屋敷であてがわれた自分専用の個室に戻った。

しっかし、最後までホークスが浮かない顔をしていたのが若干気になるなぁ。

よっぽど酷い振られ方でもしたんだろうか?

プークスクス。


個室に戻ると俺はベッドに横たわり仮眠を取る事にした。

六畳ほどの部屋はアール先生、つまり68歳の俺がデザインしただけの事は有り、何処と無く日本の実家の自室を思わせる雰囲気がある。

落ち着くなー。

・・・やはり何としても日本へ帰らなければ。

今度の旅はその為の第一歩だ。

頑張ろう。

決意を胸に俺は目を閉じ、ひと時の休息を満喫した。


1時間ほどの仮眠を取った俺は浴室で湯を浴びアール先生が用意してくれた旅用の装備に身を包んだ。


厚手の布で作られた服の上にホークスの装備に近いレザーの軽鎧を付け、マントを纏う。

背中にはリュックの様なカバンを背負う。

中には最低限の食料と水が入っている。

そして腰にはホークスが無限収集箱(パンドラボックス)から出してくれた刀【黒曜真打刀】をさす。

いかにも旅人っぽい出で立ちになった。



「さて、出発だ。」

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