頭からポーションビッショビショかけました。
ドボドボドボドボドボドボドボドボ・・・・
俺がホークスの懐から取り出した回復薬・ポーションをビシャビシャのヒタヒタになるまでかけてやると、何だか苦しそうに呻いていた彼は、それまでとはまた違った呻き声を発し始め
「ゲホッ!ゲボホッ!!ブゲボホッ!!」
と言う訳の解らない不快な音を発しながら意識を取り戻した。
「えーー!?ちょ?おま!?何してるゲボホッ!ダーーッ!!一回ポーションかけるのヤメテ!!ブゲボホッ!!いやマジでお願いしますヤメテゲボゲボぐだざい!!」
ビショビショになりながら懇願されたので慈悲深い俺はヤメテあげた。
優しいよね。
「いやー、俺の攻撃を受けた所から光の粒子が物凄い勢いで溢れ出したもんで焦りましたよ〜。思わず大量にポーション使っちゃいましたよ、はははっ。」
俺、超グッジョブ。
「イヤイヤイヤ!光が溢れてる所にだけかければ大丈夫だからね!?頭からぶっかける必要無いから!!」
「え?いやだって自分の足ぶっ刺して説明するような人だから、頭イカレテルのかと思いまして。治さなきゃって。」
我ながら正論。
間違いなく正論。
「いや、イカレテルのは君だよ?・・・ま、まあイイカ。良くないけど。」
何だか良く解らない事をまたボソボソ言っている。ポーションかけ足りないかな?
「ともあれ、最強君の力・・・と言うか【世界最強】の理想の力がとんでもない事は良く解ったよ。反射、スピード、防御、そして攻撃力、どれを取ってもチートレベルだな。」
「はぁ。」
ビッショビショのドヤ顔で言われてもアレだけど、まあ自分でも初めは確かにそんな感じの感想だったな。でも闘っているうちに身体に力が馴染んでいき、不思議な事に最終的には速さも硬さも強さも自分の中で初めからそうだったかのような当たり前の感覚になっていた。
ホークスの剣技、瞬光刃を真似したのも感覚的に出来る確信が持てたから実行に移したのだ。
理想の力を使いこなすというのは案外そういう事なのかもしれない。
「トータルの戦闘能力に関するスペックは悔しいが俺よりも遥かに上だな。俺が最強君に教えられるのは、剣の技術くらいか。後は【世界最強】と言う理想の力で何が出来るのか、どう使いこなせば良いのかを二人で色々試してみようぜ?アールさんからは一週間みっちり鍛えてやれって言われてる。時間はたっぷり有るからな。」
こうして、俺とホークスの一週間の修行の日々はスタートしたのだった。
・・・一週間後。
「秘技、瞬光殺・六連斬!!」
ズバズバズバズバズバッ!!
俺の刃から超高速で斬撃が放たれる。
ホークスはそれを両手に持った刀で緩やかにいなした。
「もう完璧に刀でも出来るようになったな。流石だぜ。」
軽く後方に飛び退いたホークスは身体を左右にステップさせると
「んじゃあこっちからも行くぜ?」
と言い放ち超高速で間合いを詰めて来た。
「秘技、瞬光殺・12連斬撃!」
ズバズバズバガガガガズバズババシュュュッ!!
刀による斬撃に加え肘鉄と蹴りを織り交ぜた瞬光殺の新たな極地、12連斬撃。
それを俺は斬撃は刀で、打撃は素手で、丁寧に受け止めた。
打撃を刀で受けると切れちゃうからね、危ないから。
「ふうぃ、まさか全部受け止められるとはなぁ。流石だぜ。」
「感想流石だぜが多くね?
ボキャブラリーが枯渇してるのかな?
また頭からポーションかけちゃう?」
「やめて差し上げてくれます?」
俺とホークスは一週間結構真面目かつ全力で修行した。
剣術の稽古はぶっちゃけ二日位で習うべき事が無くなってしまった。
ホークスが3年かけて到達した剣の高みである【剣聖】クラスの剣技も、【世界最強】の身体能力を持ってすれば吸収体得するのは容易だったみたいだ。
三日目以降は実戦形式でホークス相手に俺の理想の力の実験を繰り返し、何が出来るのかを研究した。
その都度ホークスは死にかける程光の粒子が身体から吹き出したりもしていたが、何故か大量に抱え込んでいた彼のポーションの在庫を例によって頭からビショビショになるまで浴びせる事で事なきを経た。
形式上とはいえ師匠が弟子の攻撃で何度も死にかけるのは如何なものかと思うのだが、そこには深く触れないでおこう。
余談だが修行の合間合間でライジスさんが届けてくれる差し入れの食事は最高でした。
はい、最高でしたとも。
しかし思えば今やホークスがこの異世界エスブリッジにおいて一番長く時間を共有した相手になってしまった。
初めは敬語を使っていた俺も今ではタメ口でこの28歳と会話をする程だ。
で、だ。
修行の成果だが、俺は勿論かなりのパワーアップを果たした。
しかしそれ以上に・・・
ホークスがメチャクチャパワーアップした。
俺の実験に付き合い何度も生死をさまよう事で超絶覚醒していったのだ。
結果、秘技が六連から12連になる始末つである。
もはやどっちの修行だか解らないが、まあウインウインだった事にしておこう。




