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ルピナス  作者: amakawa saiji
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乙ケ林勇実Ⅰ

自分を色で例えると濃い青色だと思う。青色に求める印象というものは一体何なのかと考えてみると、冷静、クール、さっぱりした性格、孤独なんだと思った。しかし俺が青色に見出した印象は脇役であった。昔から青色は二番手になることが多い。

 

 日曜朝からやっている戦隊ものは必ずと言っていいほど赤色が主役であり青色は脇役であることもしかり。


 晴れた日に空を見上げれば、太陽を際立たせるための青空であることもしかり。


 青い鳥は幸せを運んでくるといわれているが、赤い鳥という児童文学雑誌は子供たちに大きな道しるべを残したりしたこともしかり。

 

 『青』は主役を際立たせるための色だと俺は思っている。

 そしてそんな色が自分を表す色としてはしっくりとくるのだ。

 

 もしも結婚することがあったなら俺は社会に出て働くよりも家で洗濯物を干し、掃除をして、乾いた衣類などにアイロンをかけて、妻が帰ってくる前に夕飯の材料を買いに行き、夕飯の準備をして妻の帰りを待つ。そんな生活が送りたい。

 高校の頃仲のいいやつにこの話をすると大笑いされた。それ以来このことは周りには言わないようにしていた。


 昔から両親の仕事の関係上一人っ子の俺は父方の祖父母の家で面倒を見られることが多かった。

 祖父は小学校が休みの日には山登りによく連れて行ってくれた。山登り以外だと花札や麻雀、将棋やトランプゲームなどの賭け事を教えてくれた。しかし体を動かすことよりも、頭を使う賭け事よりも、祖母が教えてくれる裁縫や編み物や料理のほうが面白かった。この頃に作る喜びというものを初めて感じた。家で一度だけ母の代わりに夕飯を用意したことがあった。母は「上手にできたね」とほめてくれた。父は「そんな女々しいことは女がすることで男がすることではない」と言って俺が作った料理には一切手を付けなかった。

 父には食べてもらえなかったが、母にほめられて気分がよくなってしまった俺は、祖父母の家に行く度に祖母から家事のノウハウを学んでいった。


 小学三年生の頃に母に手伝ってもらって父の誕生日にクッキーを焼いて渡したことがあった。その時はすんなり受け取ってくれたので、ようやく食べてもらえるのかと嬉しく思っていたのだが、次の日ごみ箱には俺が作ったクッキーが捨ててあった。頭にきて父に文句を言いにいった。

 「なんで捨ててあるんだよ! そんなに息子が作ったものは口に入れたくないのかよ」

 「ゴミをごみ箱に捨てるのの何が悪いんだ? それに前にも言ったはずだ、あんなものは女がやることであって男がすることではない。そんなことをする暇があるなら何かスポーツでも始めなさい」

 父は至極当たり前だと、息子が手作りしたものをごみ箱に捨てることが正しいことであるかのように言った。

 それ以来、あふれるほどあったやる気がどこかへ行ってしまい、父の言いなりになるつもりもなかったがサッカー部に入部した。好きだった玩具が壊れてしまい急激に飽きてしまった子供のようにあの日以降、料理も裁縫も編み物もしなくなってしまった。それと同時に祖父母の家に行く回数も減ってしまった。

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