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弐 ブナ林の少女

 グループに分かれての学校祭の話し合い。俺は装飾班Bだ。


「聞いたわよ? こーちゃんってば変態さんなのね。さっきハルくんが言ってたわよ」


 俺の腐れ縁幼馴染み二号、(あけぼの)美幸(みゆき)。栄斗が情報を流したらしい。


「あれは不可抗力……」


 座っていた俺は顔を上げ、美幸と一緒にいる人物に気が付いた。


「あたしは気にしてないから大丈夫だよ美幸ちゃん」


 そうだ、こいつも同じグループだった。しかも班長ではないか。


「朝日君なんかに下心なんてあるわけないじゃん」


 褒められているのだろうか。それとも貶されているのだろうか。昼休み俺が掴んでしまったスカートの主、東雲日和(ひより)はからから笑う。


 装飾班Bのメンバーは俺、栄斗、美幸の腐れ縁トリオと、美幸の親友日和の四人だった。先日くじで班決めをしたのだが、非常にできすぎな組み合わせである。誰のくじ運がいいのだろう。


「はいはーい、提案があります」


 日和が手を挙げてぶんぶん振る。机を向き合わせて話し合いをしているのだから、そんなにアピールする必要はない。しっかりしているのに少し子供っぽい所があるよな、日和は。


「放課後残るって言っても時間が限られちゃうでしょ? だから、今度の土曜日誰かの家に集合して少し進めない?」

「誰の家でやるんだよ。俺の家は駄目だぞ、土曜日は妹の友達が来るから」

「俺んちも無理。部屋汚すぎて掃除間に合わねえよぉ」

「わたしも……弟受験生だし、邪魔しちゃったら悪いもん」


 三人が駄目。となると……。


「分かった。じゃあ、あたしの家でやろう」





 かくして、土曜日、俺達三人はバスに揺られて日和の暮らすブナ林に辿り着いた。短い夏に収まりきるのかという程のセミの鳴き声がする。生い茂る木々の葉が、わさわさと音を立てている。市と呼ぶには少し田舎な星影(ほしかげ)市には、豊かな自然が残っている。それにしても、日和は毎朝二十分もバスに乗って学校に来ているのか。日和には悪いが、自分は地元民でよかった。


 バス停に日和が迎えに来ていて、四人で連れ立って歩いた。どこからかコツコツという音がしたので俺がきょろきょろしていると、日和がこの辺りにはキツツキが住んでいるのだと教えてくれた。


 やがて、青い屋根に薄黄緑の壁の家が現れた。隣には赤い屋根に黄色い壁の家があって、どちらも絵本に出て来そうなかわいらしい家だった。赤い屋根の家の庭で、丸眼鏡のおじいさんが野菜の手入れをしている。


「おじいちゃん、おはよう」


 日和に声をかけられて、おじいさんが顔を上げる。


「ああ、日和ちゃん、おはよう。おや、お友達かい」

「これから学祭の下準備なんだ」

「そうかい、頑張ってね」


 おじいさんに挨拶をしながら、俺達は東雲家に踏み込む。日和の部屋に案内されるなり、美幸が歓喜の声を上げた。窓辺へ走って行く。


「わー、インコだ! かわいい」


 窓辺には鳥籠があって、綺麗な青いインコが近くにいた。近くに……?


「東雲ちゃん、インコが籠の外に逃げちゃってるよ!」


 四人分の麦茶が載せられた盆を持った日和が戻って来た。インコが「オネーチャン! オカエリ!」と奇声を上げる。日和は、インコが外にと慌てる俺達を見ながら、


「ユキはいい子だよ。そこから離れないもん。だから大丈夫」


 そういう問題なのか?


「よし、じゃあやろうか」


 盆を机に置いて日和が言う。俺達は持参した画用紙や厚紙を袋から取り出した。





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