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支援魔法で冒険者!  作者: 二三八
冒険、その一
7/80

オーガとの戦い

 視線の向こうから出てきたのは、大きな体躯をした魔物だった。

 大体身長は二メートルぐらい。腕は太く、お腹が少し出てる。

 手には棍棒のような大きな木を持っている。


「……オーガ」


 僕は小さく呟く。まさか、こんなところで会うなんて。

 オーガは見た目通り力が強い。持っている重そうな木を軽く振り回すのだから。


 オーガはこちらを見て敵だと認識したのか、棍棒を構える。

 向こうはこちらを見ているだけ。攻めてこない?

 今まで戦ってきた魔物はこっちが攻撃を仕掛ける前に突撃してきたのに。


 ほんの数秒の時が経つ。

 このままでは拉致があかない。

 僕は意を決してオーガに肉薄する。


「待て、キラ」


 ラギアスの言葉が聞こえた時にはすでにオーガに接近していた。

 あんな巨体なんだ、動きは遅いはず! 今の僕なら余裕で躱せるはずだ。

 僕がオーガにある程度近づくと、オーガはその大きな棍棒を振りかざす。


 オーガは間合いに入った僕にその太い腕とともに棍棒を振り下ろした。

 けど、攻撃は単調。だったら沢山倒してきたスライムとかと同じ!


 横に飛び棍棒を躱す。

 棍棒は地面と触れた瞬間大きな音を立て地面にめり込んだ。


 一瞬の隙が生まれる。僕は力一杯に剣をオーガの横腹に振るう。

 しかし、その剣はオーガの肉を切り裂くことはなかった。


「えっ!?」


 思わず驚きの声をあげてしまう。

 剣はオーガの肉によって途中で止められた。

 どれだけ肉が硬いんだよ! おかしいでしょ!?


「クソ! 抜けない……ッ!?」


 肉が硬すぎるせいか、刺さる剣を瞬時に抜くことができなかった。

 その隙に、オーガは地面に突き刺さっていた棍棒を抜き、僕の頭に向かって攻撃してくる。


「危ねぇキラ!」


 そこへ、ラギアスが割って入ってくる。


「ラギアス!」


 ラギアスを見てみると、大剣の腹でオーガの攻撃を受け止めている。

 しかし次の瞬間、拮抗していたお互いの力が崩れ、ラギアスはオーガに吹き飛ばされる。


「大丈夫!?」

「問題ねぇ。しっかし厄介な敵に出くわしたもんだな」

「そうだね」


 僕とラギアスはオーガを睨みつける。

 オーガの推奨レベルはおよそ7レベル。僕もラギアスも僅かに足りていない。


「ただ、勝てない相手でもないんだよな。さっき分かったんだが、キラの支援魔法がかかった状態だと俺とオーガの力は五分五分になってる」

「てことは、僕の支援魔法一つで勝ち負けが決まる戦いってこと!?」

「その通りだな、頼んだぜ」


 こんなに早く支援魔法の強さを感じられる場面に遭遇するなんて。頑張らないと。


「あいつの肉質は硬い。だから、支援魔法付き俺の攻撃で倒すぞ!」

「分かった!」


 僕は魔力を貯める。

 魔法は魔力の使う量で強さが決まる。

 だけど、魔力は使いすぎると動けなくなってしまう。


 僕は動けるだけの魔力を残し、残りの魔力を魔法に込める。


「ウガル・ライズ!」


 唱えた瞬間、僕に疲労感がのしかかる。


「頼んだよ、ラギアス」

「おう、任された!」


 言葉とともに勢いよく走り出すラギアス。

 それを見たオーガは刺さっている剣を抜いてラギアスに投げつける。


 急な攻撃によりラギアスは完全に躱すことができず、肩口に傷を負ってしまう。


「ぐっ」


 それでもラギアスは速度を緩めない。

 一気にオーガの懐に入り、大剣を振り上げる。

 その大剣は肉を切り裂くが、傷が浅いのか倒れない。

 オーガは声を上げながら、棍棒をラギアスに振り下し、それをまた受け止める。


「うぐぐ!!」


 ラギアスの言った通り力は拮抗し持ち堪えている。

 しかし、さっきより辛そうだ。傷が痛むのか、はたまたオーガの攻撃がさっきより強いのか。


 どちらにせよ、このままじゃラギアスが危険だ。

 このまま見てるだけじゃ駄目だ。動かなきゃ!

 

 僕はオーガが投げつけた剣を拾い、接近する。

 相手はラギアスを押し潰すことに必死でこちらに気づいていない。


 チャンスだ。でも、僕の攻撃は通らない。どこだ、どこを攻撃すればいい。

 僅かな可能性を信じて僕はオーガのことを観察する。

 そして。


「ここだぁ!」


 僕は唯一の可能性があるすでに開かれた傷口に向けて剣先を突き立てる。

 一点集中型の攻撃だ。僕の攻撃力でもそれなりに肉に食い込むはず!


 僕の予想は的中した。僕の剣はオーガは肉に入っていく。

 悲鳴をあげるオーガはラギアスに加える力を解いた。


「最高だな、お前!」


 ラギアスは棍棒を振り払い、オーガを切り裂く。

 大量の血がその場に飛び散り、オーガは倒れる。

 もう動く気配はない。どうやら絶命したようだ。


「ハァハァ、流石に強いわ」

「だね……」


 なんとか勝った僕等は力なく地面に座る。

 そして、僕達が勝った余韻に浸る間も無く、脳内で音がなった。


「あ、レベルアップしたみたい」

「俺もだ」


 一体何レベルになったのだろうか?

 徐にギルドカードを見てみるとレベル3だったはずが、レベル5に変わっていた。

 一気に二つも上がってる!?


「ラギアスは幾つになったの?」

「俺はレベル6だ。キラはどうなった?」

「僕は二つ上がって5になったよ」

「早いな!? もうすぐ追いつかれそうなんだが」

「そんなに簡単に追いつけないと思うけど」


 そんなことを話しながら僕等はなんとか活力を取り戻し、オーガから剥ぎ取りを始める。

 オーガの肉質は硬いから素材になるので、必要な部分だけ剥ぎ取った。

 その時、魔石も取れた。どうやら強い個体だったようだ。


「魔石持ちじゃなかったらもう少し楽に倒せたのか? いや、推奨レベルより下回ってから同じようなもんなのか?」

「どうなんだろうね。けど、レベルも上がったし次からはもっと楽に倒せると思うよ」

「確かにそうだな……さてと、剥ぎ取りも終わったことだし今日は帰るとするか。もう一匹出てきたりするかも知れねえしな」

「そんなこと言わないでよ。本当に出てきたらどうするの?」

「冗談だよ、冗談。流石に出てくるわけないだろ」


 ……なんか、こういう言葉って確か"フラグ"って言うんだけっけ……。やめよ、あんまり深く考えないようにしよ。


 その後、僕達は何事もなく帰ることができた。

 よかった、フラグ回収しなくて。



 ***



「これを換金したいんですけど」

「分かりました。では少々お待ちください」


 無事にギルドに戻ってくることができたので、今日の収穫を換金する。

 換金するものは、魔石数個と、オーガの皮。どのぐらいになるかな。


「お待たせ致しました。こちらが換金した分になります」


 渡された金額は、銀貨一枚と、銅貨五十枚。

 銀貨は銅貨百枚分。ちなみに、金貨は銀貨百枚分。


「オーガの皮がかなり良いものだったので多めに払わさせていただきました」

「ありがとうございます」


 僕はお礼を言って後ろの席に座っているラギアスの所に向かう。


「どうだったよ、今回の報酬は」

「銀貨一枚と銅貨五十枚だったよ。それでどうやって分ける?」


 パーティを組んでもらってる以上報酬の分け合いは必要なものになる。


「なら俺は銅貨五十枚貰う。後はキラのもんだ」

「えっ? それだと均等にならないよ」

「いいんだよ。俺は今日パーティに入れてもらったんだからな。それに今日の勝因はキラだろ。だからそれはキラに貰う権利がある」

「いやいや、ラギアスのお陰だよ。だから僕

 は銅貨五十枚でいいよ」


 どちらにせよ僕にとっては沢山のお金が入ってくるんだ。

 それなら功績を挙げたラギアスが貰うべきだ、と主張するが拒否される。

 そんなやりとりを続けていると、


「いいから貰えよ! さっさと貰えよ!」

「なんで怒ってるんの!?」

「取り敢えずこれはお前のもんだ! 受け取れ!」


 そう言って投げやりに僕に銀貨1枚を押し付けてくる。


「本当に貰うよ」

「何度も言わせんな。そいつはお前のもんだ」

「分かったよ。ありがとう」


 なんだか不本意だけど、貰えるなら貰っておこう。

 そうしてお金の分配が終わり、僕達は別れて家に帰った。


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