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支援魔法で冒険者!  作者: 二三八
冒険、その四
49/80

番外編 名剣『心』

番外編です。本編ではありません。

 ダンジョン攻略から二週間が経った。

 僕は包帯が取れて、治癒師に完治したと言われた。しかし、後遺症があるかもしれないと言われた。


 ジスグレイとの死闘の後、僕は奇跡的に生き残り、一週間後には完治したと言われた。

 体は動けるようになったけど直ぐには冒険者として活動を始めなかった。


 僕は退院した後、習慣になりつつあったラギアスとの模擬戦をしていた。

 この模擬戦は簡単に言えばリハビリだ。リハビリにしたら激しい気がするけどそれは気にしない。

 直ぐに冒険者を始めなかった理由は、そのリハビリをするためと言うのもあったけど冒険者としてリハビリも兼ねていた。


 実際、一週間も剣を持たなかったら体が忘れてしまう。現に、退院してすぐの模擬戦は体が重く、上手く動けなかった。その様子を見たラギアスはそこからゆっくりしてくれた。

 なかなか酷いものだったよ。直ぐに息は切れるし、足は重たい。いつもなら流せる攻撃を上手く流せなかった。正直ここまで酷くなっているとは思わなかった。

 だけど、それも日を重ねるごとに体は動くようになってきた。


 それに、悪いことだけじゃなかった。

 相手の剣がいつもより良く見えたのだ。ジスグレイの死闘を得て経験を得たのか、それとも時間が経って戦いの経験が蓄積されたのか、久しぶりに身体が動かせるから気分が上がっていたのか。僕には分からないけどとにかくあの戦闘を得て成長はしたんだろう。


「そう言や、剣はどうすんだ? 折れちまったんだろ」


 ラギアスが汗を拭きながら僕にそう言う。

 僕の剣はジスグレイに折られてしまった。見事に真っ二つに。


「あー、今日見に行こうと思ってたところだよ。体動かせるようになったし、いい感じに感覚も戻ってきたし」

「まぁ、言っておきながらあれなんだが急ぐ必要はないと思うぞ。もう少し後からでもリオネも分かってくれるだろうし」


 冒険者家業を中断して早二週間。

 正直なところここまで来るのにかなり詰め詰めでやって来た自覚はある。そのおかげで僕等は通常より早くレベルも上がって来た。

 その代償として、僕等には長期の休暇がなかったわけだけど。

 だから、一度この辺りで休んでおいた方だ良いのだろう。


「でもいずれ必要になってくるんだし。早めに準備しておいて損はないでしょ?」

「それもそうだな。今日買いに行くってんなら俺も一緒に行って見てやろうか?」

「いや、今回はいいや。自分の剣は自分で選びたいから」

「その気持ちは何となく分かるな。で、どこの店に行くんだ?」

「とりあえずクロウさんの店に顔を出そうとは思ってる。その後は分かんない」


 困った時は"何でも屋"、ってね。最近そう言う風に考えてる。だってあそこ本当に色んなものが売ってるんだもん。便利だから仕方ないよね。


「つっても専門店じゃねえからな。ま、この街にも武器屋はあるしいいの見つけろよ」

「自信ないけどね」


 ラギアスと別れて、僕は何でも屋に向かった。

 何度も言ってるからあそこの地形は完璧だ。そしていつも通り人がいない。なんか安心する。経営的にはかなり安心できない状況だろうけど。


 僕は何でも屋の扉を開けて中に入る。


「いらっしゃい。おお! キラ坊か!」

「こんにちは」


 そして、いつも通りクロウさんは元気に迎えてくれてそれに挨拶で返す。


「久しぶりだな」

「久しぶりって、あれからまだ二週間しかたってませんよ」

「冒険者と一般人の感覚を一緒にするもんじゃない」


 と言っても僕もここ最近は冒険者としては活動してない。むしろ一般人だった。

 そう、包帯を全身に巻かれて一週間みっちり治療してもらって、その後に剣を使った模擬戦式のリハビリをしていただけだ。ね、僕は冒険者をしていない一般人でしょ。あれ? 一般人ってなんだっけ?


「ともあれダンジョンに行ってきたんだろ? いろいろ聞かせてくれよ」

「いいですよ」


 そこから僕の行ったダンジョンで起こった出来事を話した。

 クロウさんは聞き上手と言うのだろうか。「おおっ!」とか「それでどうなったんだ?」とか表情豊かに相槌を打ってくれる。


 僕はそれで気分がよくなってだんだん楽しくなってきた。


「そこで僕は言ったんです。『ここから先に行けると思うなよ』ってね!」


 楽しくなって、気が付いたら僕は話を盛っていた。それはもう盛大に盛っていた。

 ちなみに今話していたところはハイゴブリンの時のことで、分かれて戦う時に言った言葉になっていた。


 それからも話は続き、話をどのぐらい盛っていたかと言うと。


『はっ! 効かないね! 攻撃ってのはこうするんだよ!』

『命に代えてでも道を開く! 最後を飾るのは君に譲ろう』

『残像だ……!』


 ぐらいには盛っていた。多分これはほんの一部で、こんなものではなかった。


 もう、止まらない。止めれない。

 僕は気づいた時には遅かった。


 しかし、ここで慌てふためいたらバレてしまう。落ち着け、大丈夫だ。

 顔は赤くなっているか? きっと大丈夫だ。そこまで熱くない。もし熱くなっていたとしたら熱弁が原因だ。

 顔には出ていないか? それも心配ない。笑ってるだけだ。


 必死に落ち着かせようとしていた僕の心の中は悶え苦しんでいた。悶死まで後僅かだ。


「なるほどな」


 クロウさんが口を開いた。そして真剣な顔をして僕に言った。


「で、どれが本当なんだ?」


 その瞬間、悶死した。




「ここから先は通さねぇ。かっこいいなキラ坊!」

「もう言わないでください」


 僕が地面をのたうち回った後、本当のことを話した。

 その後、クロウさんはニヤニヤした笑いで僕をおちょくってきた。恥ずかしさでどうにかなりそうだった。


「色々大変だったみたいだが、こうして五体満足で帰ってこれて俺は嬉しいぜ」


 クロウさんは嬉しそうだった。

 僕はそれを聞いて落ち着きを取り戻して本来の目的を思い出した。


「それで今日なんですけど。実は剣を探していまして。いい剣はないでしょうか?」

「剣? ああ、折れたんだってな。にしてもなんで普通の武器屋に行かないんだ? ここより専門店のほうがいいだろ」

「まぁそうなんですけど。顔を出しておきたいなと思いまして」


 要は、僕は無事だったという報告がしたかったのだ。剣はそれをするための口実だ。


「そうか。いい奴が見つかるといいんだけどな」

「見させていただきます」

「おうよ!」


 僕は剣が並べられているところを見た。

 色々な剣があるが、正直僕は剣の目利きが全くできない。

 切れ味がどうとか、剣身の細さがどうとか、長さがどうとか。僕にはいまいちそれらを理解できない。

 故に、僕は何となく見ているだけになった。


 やっぱり分からない。どれが良くて、どれが悪いのか全く見当がつかない。

 できるならいいのを買いたいけど、判断材料が値段以外にないのが辛い。それに、値段が高くても僕に合わなければ意味がないし。うーん。悩む以前の問題かだねこれは。


 僕がそうやって見ていると、少し上の方に置かれていた剣に目が行った。

 鞘の中に入っている以上、他と柄以外で見た目は変わらない。それでも僕はそれに釘付けになった。


「何だ、それが気になるのか?」


 クロウさんは僕が見ていた剣を取った。そして、少しその剣をみて何か納得したような表情を浮かべた。


「なんだかその剣が気になって」

「なるほどな。キラ坊は案外いい目を持ってるかもな」


 なぜか褒められた。ただ気になる剣を見ていただけなのに。

 しかし、そのなぜ褒められたんかクロウさんの次の言葉で分かった。


「これは名刀。いや、刀じゃないから名剣か。これは名のある鍛冶師が打った一本。名剣『心』」

「しん?」

「心と書いて『しん』と読ませるらしい。確かその鍛冶師の腕が認められるようになった頃にそれまでで一番信念をもって、心から打った。だから『心』」


 クロウさんはひとしきり説明をすると僕にその『心』を持たせてくれた。

 剣の長さは以前使っていたものと比べてそう大差はないが、重さは断然こっちのほうが軽かった。

 剣は自身の重みで斬りやすくしているのだと聞いたことがあるけど、大丈夫だろうか。


 柄を引き、少し剣身を覗く。

 そこにはまるで鏡のような剣身があった。そして、何より美しかった。

 素人の目にもわかる。この剣が一級品だと。そのぐらい凄かった。


「なんでこんなものがこの店に置いてあるんですか?」


 言い方が少し失礼だったかもしれないが純粋な疑問だった。

 この剣はもっと上の店で売り出すものだ。いや、売り物にするのも打った人に失礼かもしれない。


「以前、譲り受けたんだ。顔も名前も覚えちゃいねぇがお前と同じ冒険者に」


 この剣を手放したのか。信じられない。


「まぁその剣が気に入ったんなら買うか? おっと、流石にそれを値下げしろって言うのは受け入れられねぇからな」

「そんな失礼なことしませんよ。で、いくらですか」

「金貨二百枚だ」

「二百枚!?」


 とてつもない金額を聞いた。てか初めてだそんな大金を耳にしたの。

 でもそのぐらいの価値はあるね。


「えーと、値下げは?」

「ん?」

「いえ! 何でもありません! しかし、私はそのような大金を一度に払うことはできません!」


 いけない。少し煩悩が働いてしまった。言い出した僕が早々に破ってどうするんだ。

 とは言っても僕はそんな大金持っていない。最近、ジスグレイとか大量発生とか色々と収入が入って来たけど金貨二百枚には届かない。


 しかし、ここで何かしら手を打っておかないとこんないい剣は直ぐに誰かの手に渡ってしまう。

 ここでこそ考えるんだ。何かいい方法がないか! 何としてもこの名剣『心』を手に入れるんだ。


「おいキラ坊。そんなに欲しいんなら」

「くれるんですか!?」

「そ、そこまでは言ってないぞ?」


 しまった。また煩悩が。鎮まれ!


「別に一気に払えなかったら……」



 ***



 翌日、冒険者ギルドにて。


「と言うことで、僕はこの名剣『心』を分割払いで買うことにしました」


 リオネとラギアスに金貨二百枚の剣を1年間の分割払いで買うことを宣言した。


 そしたらリオネが呆れていた。衝動買いをしてしまったからだ。

 ラギアスは剣を持って騒いでいた。


 うん。今日も平和だ。



本編開始はまだ時間がかかりそうです。

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