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支援魔法で冒険者!  作者: 二三八
冒険、その一
4/80

店主の話

 注意しながらだったから、魔物と出会うことなくコートリアスに戻ってくることができた。


 家に帰ろうかな? いや、先に傷の手当てをした方がいいかな?

 現在の所持金は銅貨十枚。一個ぐらいなら回復薬は買える。

 明日も戦いたいし、貯金とか言ってる場合じゃない。

 もっと魔物が強くなったらお金の出入りも激しくなるだろうしケチ言ってたら駄目だよね。


 痛む足を使い、道具屋に向かう。

 その間、少し周りの視線が気になったりした。まあ服溶けてるし、怪我してるからかな?


 そんな視線を気にしながら歩いていると、僕はとあることに気がついた。


「道具屋って……どこにあるんだっけ?」


 呆然と、僕は道端で立ち止まる。

 よくよく考えてみたらそうだ。僕はこの街のことをよく知らない。

 たまたま父さんの家が近くにあったからこの街に来ているのであって、僕自身がこの街を歩き回るのはつい最近になってからだ。

 仕方ない、町を見て周ることも兼ねて歩きますか。足痛いけど。


 それから数十分後、僕の視界にとある看板が入ってきた。

 その看板は木でできており、「何でも屋」と彫られていた。


 外見はいかにも入りづらい雰囲気を漂わしている。

 何でも屋って言うくらいだからもしかしたら回復薬あるかもしれない。てか、足が痛いからもうどこだっていいや。


 僕はそう思い、すぐにその店の中に入った。


「ご、ごめんくださーい」


 扉を開けるときにチャリンと音が鳴る。

 店内をちょろっと見回すと、回復薬に武器、防具、アクセサリーなどなど、いろんな種類の商品を取り扱っていた


 本当に何でも屋なんだ。僕がそう思っていると、奥の方から誰かが来る音がする。


「いらっしゃい」


 がっつりとした身体と、少しいかつい顔をした男性がやって来た。


「あ、こんにちは」

「あいよ、こんにちは。こんな店に入るなんて坊主物好きか? ……って、怪我してるじゃねえか!」


 目をかっと開いて心配してくれる店主。顔の割に優しい。あれだね、人は外見で判断しちゃダメってやつだ。


「おい大丈夫なのか?」

「痛みますけど、まぁなんとか。なので回復薬を売ってくれませんか?」

「ならこれをやる」


 そう言って、店主は棚にあった回復薬を無造作に取って僕に渡してくれた。

 僕はその回復薬の値段を見ると、銅貨三十枚と書かれていた。

 やば、足りない……。


「あのすいません。僕お金をあまり持ってなくて……」

「そんなもん気にすんじゃねえよ」

「いや、流石に貰うというのは……」

「なら銅貨五枚で売ってやる。だからさっさと使うんだ」

「あ、ありがとうございます」


 なんだかこの店主優しいけど、すごくいい加減な人だな。


 僕はありがたく渡された回復薬を傷口にかけて、残りを飲んだ。

 すると、傷口はみるみるうちになくなっていき、完全に元どおりになった。触っても痛くも痒くもない。


「どうやら治ったみたいだな、坊主」

「そうみたいです。本当にありがとうございます……あの、いいんですか? 銅貨五枚で」

「いいってことよ。怪我人から金巻き上げるようなことはしねえよ」

「本当にありがとうございます!」


 僕は頭を下げる。

 それから銅貨五枚を店主に渡した。


「確かに受け取った」


 そう言って店主は貰った銅貨を握りしめる。


「ところで、坊主はどうしてあんな怪我してたんだ?」

「マッシュームの出した変な液体にやられました」

「ほー、あいつと戦ってきたんだな? だからあんな怪我のしたかしてたんだな?」


 その通りだと頷く。

 しかし、この店主はマッシュームのことについて知ってるんだ。

 昔、冒険者をやってたのかな? 身体つきがそれを代弁してるように見えるし。


「しっかし、坊主まだ新米冒険者だろ。ちょっと早くないか?」

「な、なんで僕が新米だって分かるんですか!?」

「そりゃお前、見りゃ分かる」


 見れば分かるのか……そんなに貧弱な体してるかな

僕。


「あの、ちなみにマッシュームと戦う時に必要なレベルってどのくらいですか?」


 若干自分の体が貧弱なのかを確認しながら、僕は店主に疑問を口にする。

 レベルは自分の強さを物語る。

 ただ、レベルが上がれば筋力やら戦闘力やらが上昇するわけではない。そのレベルになるために必要な身体能力や経験を積むことでレベルが上がる。

 だから、レベルの上がり幅は個人差はある。


「そうだな。倒そうと思えばレベル1でも勝てなくはねえが、まあ、レベル3ってとこだろ?」


 今の僕のレベルだ。てことは僕はちょうどいいレベルで行けてたんだ。まあそれでも怪我を負ったからなんとも言えないな。

 でも、初見であれを躱せる人も少ないか。


「店主さんは色々詳しいですね。昔冒険者をやってたんですか?」

「まあな」

「本当ですか!? 凄いなぁ」

「もう昔のことだ。だから、そんな期待の目を向けんじゃねぇよ」


 そんな目をしてたかな?

 僕は無意識のうちにやっていたことを知り、少し恥ずかしくなった。


 それからほんの少しだけ店主と雑談をした。

 そして、話題が魔法の話に切り替わった瞬間、僕のテンションが落ちる。


「ま 魔法は冒険者の花だよな。俺は魔法が使いたいがために冒険者になったようなもんだったからな。で、坊主はどんな魔法が使えるんだ? 教えてくれよ」


 興味津々な様子で店主はグイグイと聞き出そうとしてくる。

 もし僕の使える魔法がかっこいい魔法だったから自信満々に言えるだろう。

 でも、僕は自分の魔法に魅力を感じない。


「おいおいどした? 黙り込んで。もったいぶるなよ」


 期待の籠った店主の声のせいで余計に言いづらくなる。とは言え、言わなければこの話題が終わることはない。

 あぁ、もう! どうにでもなれ!


「……えん魔法です」

「ん?」

「支援魔法です!!」


 勢いに任せて僕は自分の魔法を叫ぶ。

 とうとう言ってしまった。支援魔法という冴えない魔法のことを言ってしまった。


「他には何か使えるのか?」

「使えません」


 悲しいな。冒険者の花である魔法が支援魔法一種類しか使えないなんて。

 ああ神様。何故僕に意地悪するのですか?


 僕がそうやって落ち込んでいる。しかし、


「支援魔法か。なかなか珍しい魔法を使えるんだな……すげぇじゃねえか!」

「え?」


 店主は違ったようだ。僕とは真逆でテンションが上がっている。僕の予想してたリアクションと違う。

『支援魔法ね…………まあいいんじゃねえの……』的なのを予想してたんだけど、店主はそんなこと言わずに、寧ろ褒めてくれる。


「支援魔法はなかなか使える奴はいないんだ。その魔法があるってことは、坊主は才能があるかもしれねえな」

「でも支援するだけの魔法ですよ。派手な攻撃とか全くできないんですよ」

「何言ってんだ。坊主が味方を支援するから戦いが楽になるんだ。支援魔法は戦闘中にかなり頼りになる魔法だ。派手な攻撃ぶっ放して魔力切れを起こしてる奴らよりよっぽど有能だ」


 店主は支援魔法をべた褒めしてくれる。

 そ、そんなに凄い魔法なのかなぁ?


「その顔、納得いかないって顔だな」

「いえ……正直に言って、よく分からないんです。僕はカッコいい魔法に憧れてたんで」


 店主と目を合わせないように視線を下げ、僕は小さく自分の思いを打ち明ける。

 憧れたのは父さんの姿だ。でも、支援魔法ではその姿に近づくことすらできない。それが、とっても悔しい。


「まぁ、坊主の言うことも分かる。でもな、支援魔法には他の魔法には絶対にできないことができるんだぜ」

「できないこと、ですか?」

「あぁ。勝利へ導くっていう最高にかっこいいことがな」


 店主は僕の頭に手を乗せる。ゴツゴツとした手は力強さとと共に、優しさも孕んでいた。


「確かに、強力な攻撃魔法を撃てたらかっこいいだろう。でもな、それと同じくらい支援魔法はかっこいいぜ。なんせ、坊主の魔法一つで仲間を勝利に導くことができるんだからな。それは他の魔法じゃ絶対にできない。坊主にしかできない魔法なんだ」


 店主は熱く語りかけてくれる。その言葉の節々には魅力が詰まっていた。


「仲間を助けて、勝利に導く」

「そうだ、それが支援魔法だ。どうだ? 他の魔法に負けず劣らずかっこいいことができるだろ?」

 

 ニカッと笑う店主は僕の頭をわしゃわしゃと撫でまわす。

 僕は店主の話を聞いているうちに、胸の中にあった支援魔法に対する"かっこ悪い"と言う印象が薄れていった。

 支援魔法はその魔法一つでで勝利を掴むことができる魔法。そんな魔法を僕は使えるんだ。


「ありがとうございます! 凄い魔法なんですね支援魔法って。僕全然知らなくて」

「そもそも数が少ないからな。でも、知ってくれて嬉しいぜ」


 店主は僕の頭から手を離し声をあげて笑う。


「ま、支援魔法は味方がいないとできないからな。坊主は仲間がまだいないなら、さっさと作ったほうがいい」

「頑張ります! 店主さん!」

「その意気だ! それと、店主さんじゃねえ、クロウだ。坊主の名前は?」

「僕はキラです、クロウさん。この度はありがとうございました! また来ると思います」

「おうおう、どんどん来い。こっちは大事な客が増えるんだ、大歓迎だぜ!」


 クロウさんは親指を立てて僕に向ける。

 この時、僕は恐らくこの店は行きつけの店になるだろうなと心の隅で思った。


 それから、別れの挨拶をして店を出た。

 これからすることは決まっている。

 支援魔法が最も輝く時は味方がいる時のみ。

 だから――


「仲間を探さないと!」


四話目にしてようやく人との会話が出てきた……。

それでもまだ題名の魔法は使わない。

何故だ!?

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