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支援魔法で冒険者!  作者: 二三八
冒険、その一
3/80

初報酬

 日が沈み始めた。もう夕方か。スライム狩りに夢中になりすぎて気づかなかった。


 もうスライムも何体倒したかも覚えてない。多分それなりの数は倒したと思う。

 その証拠にレベルも1上がって3になってる。これが順調なのかは全然わかんないけどね。


「取り敢えず今日は帰るか」


 剣をしまい一呼吸ついた後に僕は街に戻った。

 僕はコートリアスからほんの少し離れたところにある家に住んでいる。

 そこは父さんが住んでいた場所だ。僕は数回しか行ったことがなかった。

 街に近く装備を調達しやすいと言う理由で、そこに家を建てたらしい。


「と、帰る前にギルドに寄らないと」


 慌てて思い出した僕は帰りしなギルドに寄った。

 もう日も沈み夜になっているにも関わらずギルドはとても賑やかだ。多くの冒険者が酒を飲んだりして騒いでいる。


 そんな光景を見ながら僕は換金所に向かう。


「あの、この魔石を換金したいのですが」

「はい、少々お待ち下さい」


 そう言って僕の出した魔石を換金所のお姉さんは取って行く。


 魔石は魔物の核の役割を持っている。

 魔石は大きいものから小さいもの、質のいいものから悪いものと、様々な種類がある。外見は全部同じなんだけどね。

 因みに僕が持ってきた魔石は、スライムの魔石で大きさも小さく、質も低い。


 それと、魔物からは魔石以外に"素材"と呼ばれ、加工して武器や防具にできる部位を剥ぎ取ることができる。スライムからは取れない。


 魔石と素材は換金することができ、冒険者の収入源となっている。

 もちろん、収入源と言っても魔石は魔物を倒したら必ず手に入るわけではない。だから、冒険者の収入は安定しない。


 もし、三日間くらい魔物を倒し続けてても魔石が落ちなかったらどうなるんだろう? 生活できるのかな?

 流石にそんなことないか……分かんないけど。


「銅貨五枚と交換です。ご確認下さい」


 僕は差し出された銅貨を見て確かにあることを確認する。


「ありがとうございます」


 僕はそう言いながら銅貨を貰った。

 これが僕の冒険者としての初の報酬。なんだか、感慨深いものがある。

 自分で稼いだお金。うん、貯金しよう。お金大事だからね。


 そんなことを考えながら家に向かう。

 途中いい匂いが鼻をくすぐって初報酬のお金で食べ物を買った。少しの量だけどなんかとっても嬉しい。

 しかし、ここで気付いた。

 全然貯金できてないじゃん。

 い、いや、お、お金は使うためにあるんだ! 使って何が悪い!

 ……でも、少しは貯金するよう頑張ろ。


 僕がしっかりと貯金すると決めた頃、コートリアスの近くにある森の中に入った。

 ここは魔物が入って来ないようにされていると言うことを父さんから聞いた記憶がある。

 確か、"魔除けの結界"が張ってあるとか言ってたかな? 随分前のことだからあんまり覚えてないや。


 森に入ってしばらく歩くと、森の開けた場所に着いた。そこにはポツンと木でできた家が建っている。僕の、いや、父さんの家だ。


「ただいま」


 帰りの言葉を口にするが、もちろん返事はない。

 慣れたと思っていても、やっぱりたまに心にくる。

もうこの世に父さんはいない、と言う事実に。


「……そんなこと、分かってるよ。だから、父さんのできなかったことを僕が果たすんだ」


 遠くを見つめながら、僕は自分の決心を言葉にする。

 父さんはもういない。その事実を受け入れないだけ何も始まらない。立ち止まってる姿なんて、父さんには見せたくない。


「なのに、なのに! 使える魔法は支援魔法……そりゃないでしょう……」


 今日で何回目だろうか。自身の使える魔法に愚痴をついたのは。

 そろそろ認めないといけないかな? 僕の使える魔法は支援魔法だということを。


 どんな物事でも一芸に長ければ達人と言われる。

 それと同じように、僕もこの支援魔法と言う芸を極めればいいのかな?

 どうやって極めるか想像がつかないけど。


 それから、僕はどうやったら支援魔法を極められるか考えてたけど、使用したことのない魔法について考えたって何も分からない。

 分かることは一つ。使ってみることだ。

 明日は支援魔法使ってみるか……。


「あ、支援魔法って味方にかける呪文だから使えないのか……」


 悲しい事実に目を背けた僕は食事と風呂を済まして、明日のことを考えながら眠りについた。



 翌日。

 天気は晴れ。輝かしい太陽が雲と雲の間から顔を覗いている。


 現在僕は昨日と同じく魔物狩りの真っ最中だ。

 今日も今日とてスライムを狩りまくる。


「はっ!」


 今日も今日とて勢いよく剣を振る。

 昨日と今日でだいぶ剣を振ることに慣れてきた感覚がある。あれだけずっと狩ってたからね。

 おかげでスライムを倒すときに攻撃をもらわなくなった。

 単にスライムとの戦闘に慣れてきただけかもしれないけど。


 それにしても、ここはスライムしか出てこないな。

 昨日と今日でスライムしか倒してない。流石に飽きてきた。


 そう思ったとき、僕は徐に森の方へと顔を向けた。

 現在のレベルは3。昨日と変化なし。

 森の中の魔物を倒すために必要なレベルなのかどうかは分からない。


 もっとここでレベルを上げておくべきか?

 だけど、スライムだけだとレベルが上がる気がしない。

 取り敢えず行ってみたほうが早いかな?


「迷うぐらいなら行こう」


 僕は好奇心が抑えきれず、森に向かって歩き始める。

 途中出てきたスライムをいつも通り倒しながら進み、森の中に入った。


 森の中は太陽の光があまり入らずジメジメとしている。さっきの草原とは全く雰囲気が違う。


 しばらく森の中を歩いてみる。

 すると、茂みの中から何かが現れた。

 見た目はきのこ。でも茎の部分から足が日本生えており、更に目と口がある。

 これは確か"マッシューム"だったかな?

 きのこ型の魔物だ。


 マッシュームは僕を見るなり頭をこちらに向けて飛んできた。毎度お馴染みの体当たり。


「くっ!」


 しかし、スライムより速い。

 僕は体を横に向けて躱し、マッシュームに剣を振り下ろす。

 その剣はマッシュームの肉を切り裂いた。

 その時の切り口から緑色の液体が僕の足に降りかかった。

 その刹那、足に焼けるような痛みが走る。


「ぐっ!?」


 足を見てみると、服が溶けて足が焼けていた。酸性の液体か!?

 それを出したマッシュームは傷が浅かったのかまだ生きている。


「くそ!」


 再び剣を振るう。マッシュームに躱す気配はない。いける!

 マッシュームを斬るとまた酸性の液体が飛び出してきた。

 急いで避けようとしたが、全ては避けきれず液体がかかったところにまた痛みが走る。


 二回斬りつけられたマッシュームは倒れている。

 近づいてみるが動く気配はない。


「倒した、のかな?」


 動かないから倒したんだろう。そう思うと緊張が解れる。数十秒の戦闘だったけど疲れた。


 危なかったわけではないけど、厄介な攻撃を食らってしまった。でも倒せたことには変わりない。

 この魔物は今のレベルでも攻略できそうだ。

 だけどあの液体の対策を考えないと。毎回毎回食らってたら体がもたない。


「それより、魔石は?」


 僕はマッシュームの死体に剥ぎ取れるものがないか探ってみる。もちろん液体に触れないように。

 しかし、魔石すら出てこない。

 なんで出てこないんだろう? 魔石は魔物の核だからあるはずなのに。今度調べとこ。


「素材になりそうな部位は、特になさそうだね。いつつ、今日は帰るか」


 この傷だとあとあと支障が出るかもしれない。それは避けておきたい。

 しっかりと辺りを警戒しつつ僕は森を出る。

 そして、痛む足を我慢しながら足早にコートリアスに戻るのであった。

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