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支援魔法で冒険者!  作者: 二三八
冒険、その一
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初めての魔物

 僕の名前はキラと言います。つい先程冒険者登録を済ました新米冒険者です。


 今僕はギルドの端の方のベンチに座って落ち込んでいた。

 理由は、そう。僕の適性魔法のせいだった。


 "支援魔法"

 それは味方の能力を上げることができる魔法。


 言葉だけ聞いたら中々使い勝手のいい魔法だよ。けど、それは他の魔法適性があったらの場合の話。

 僕にはその他の魔法適性が存在しなかった。

 攻撃魔法も防御魔法も回復魔法も、何もかも使えない。


「はぁ……もう嫌だ」


 僕の思い描いてたのは、もっとこう派手な魔法をぶっ放して敵を蹂躙するみたいなのを考えてたのに。


「なのに、なのに! なんで支援魔法だけなんだよ! 理不尽だよ!」


 僕は我慢ならない現実に地団駄を踏む。

 とは言え、愚痴ばっかり言っても仕方がない。父さんを超えないと僕は、夢を叶えられないんだから。

 ちなみに父さんの使ってた魔法は火属性の攻撃魔法……無理じゃんか。

 越えるとか無理じゃん。元の才能が違うよ……。


 と、僕はしばらく理想と現実の違いを嘆いた。


「うん、あんまり考えないようにしよう」


 空を見上げて僕は思考を停止される。

 現実から目をそらし、別に魔法が使えなくても剣術の才能があるかもしれない、と考えた。


「そうだよ、何も魔法だけが冒険者じゃない。僕にだって何か才能があるはずだ!」


 そう考えるといてもたってもいられず僕は魔物を狩ることにした。


 行動だけは早い僕は早速魔物を倒すために街の外まで走る。

 街を出たら、そこに広がるのは草原。地平線が見えるほどの草原だ。

 右の方には森が見える。


 確か、森には少し強い敵がいるから駆け出し冒険者じゃ厳しんだっけ。どっかの本で読んだような気がする。

 冒険者になった時のために勉強したからね。ちゃんと生かさないと。


 そんなことを考えながら、ふらふらと広大な草原を歩いていた。

 少し周りを見渡したら他の冒険者もいるみたいだ。

 あ、あそこで剣を振り回してる。魔物がいるのかな?


 その光景を遠目から見ていたら、後ろの方からゴボッと言った音が聞こえる。

 振り返るとそこには、青いゼリー状の物体が地面の中から出てきた。

 ま、魔物だ!!

 確か、この魔物は"スライム"。この世で最も弱いとされる魔物。

 これが僕の冒険者人生初の獲物! この時を待ってたんだ!


 興奮しならがスライムを凝視する。いつの間にか。僕は笑っていた。

 これで僕も晴れて冒険者の一員になれるんだ。


「よし、いくぞ!」


 僕は冒険者登録の際に貰った剣を構える。

 しかし、もちろんのこと剣の扱い方なんて知りもしない。想像の中じゃ圧倒的な手捌きだけどね。


「と、とりあえず斬れば、いいかな」


 慣れない手つきで剣を握りしめ、スライムに斬りかかった。

 振り下ろした剣はいとも簡単にスライムを真っ二つに斬り裂く。そして、スライムはそのまま動かなくり、残った青いゼリーは地面へと溶けていった。


「……弱っ!? スライム弱っ!?」


 いやいや、いくら最弱魔物でもこれは弱すぎるんじゃないんですかね!?


 と、スライムを小馬鹿にしていたら、背中に何かが当たった。地味に痛い。

 振り返るとそこにはまたもスライムがいた。プルプルと体が振動している。こいつか。


 僕はさっきと同じようにスライムを斬った。そのスライムも地面に吸収される。

 この調子ならいくらでも倒せる気がする。


 そんなことを考えていると、狙ったかのように僕の周りにスライムがわらわらと出てくる。

 まさか心の声を読み取ったんじゃないのか?

『僕たちは弱くない!』的な感情が読み取れるような気がする。でも実際は弱い。なんか気の毒な魔物だな。


 僕はさっきと同じようにスライムを斬り裂いた。

 さしかし、今は複数体の(スライム)がいる。


 僕が他のスライムも斬ろうと不器用に体勢を立て直そうとした時、一匹のスライムが攻撃してきた。


「くっ!?」


 その攻撃をギリギリで躱すことに成功。

 しかし、また他のスライムが攻撃を仕掛けてきた。

 今度は躱すことができずスライムの体当たりを受けてしまう。


 うっ、痛い。地味に痛いんだよなこの体当たりって。取り敢えず迎撃!

 鈍い痛みを我慢しながら、僕は剣を横に振り、体当たりをしてきたスライムを斬る。

 だが、まだまだ沢山のスライムに囲まれている。


「これだよ、これ……これが冒険者だよね!」


 僕はこの状況に興奮した。

 敵はスライムだけど、こうやって魔物に囲まれた中で倒していく。これこそまさに僕が求めてきたもの! 僕はこれから、父さんを超える冒険者になるんだ!


 そうして、僕はしばらくの間、延々とスライムを狩り続けた。出てきては斬り、時には体当たりを喰らって痛い思いをした。

 そして、


「……これで最後かな?」


 僕は周囲を見渡すとスライムがいなくなっていた。一先ず全部倒せたようだ。


「ふぅ、スライムも意外にやるんだな」


 意外に疲れたし、体当たりされたところも地味に痛む。

 いくら弱くても数が集まれば脅威になる。このことはしっかり覚えておこう。


 と、スライムから教訓を得た時、脳内で音がなった。

「ん? なんだ今の? もしかして、レベルアップ!?」


 突然の出来事に、僕はギルドカードを確認する。すると、さっきまで1と表示されてた項目が2に変わっている。

 間違いない、レベルアップしたんだ!


 レベルアップとは、魔物を倒すと手に入る経験値が一定の量に達した時に起こる現象のことを言う。

 レベルは低いほうが上がりやすく、高くなると上がりにくくなる。尚、レベルの上限は100とされている。


「これがレベルアップかぁ。んー、なんとも言えない感覚だね!」


 実際に自分が強くなっているのかは分からない。でも、なんだか心が躍るようだった。

 僕はその気持ちが抑えきれず、何度もギルドカードを見た。

 ちなみに僕の持ってるギルドカードというのは、冒険者に登録すると貰えるものだ。ギルドカードには、レベルの他に、自身の使える魔法とスキルの欄がある。

 スキルとは、その人が持つ固有の能力のことだ。でも、最初から発現しているわけではなく、何かの拍子で発言する。


「スキル、僕のスキルはどんなんだろう? 楽しみだなぁ」


 僕はスキルの欄を指でなぞる。

 きっと凄いスキルなんだろうな。だって魔法が支援魔法だもん。スキルも何とも言えなかったら割りに合わないからね。


 そんな期待を胸に、僕はまたスライム狩りを続けるのであった。

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