新たな仲間
ようやく終わった。
長かったようで、短かったダンジョン攻略。
ハードウルフに噛まれ、アーラナイルの爪にたくさん引っかかれて、ボロボロになって……あれ?
「僕って活躍とかしてなくない?」
そうだ、僕は弱った敵を倒してただけじゃん。
ラギアスは僕を助けてくれたしハードウルフも倒してた。
「そんな事ねえよ」
「でも実質戦ったのってラギアスとリオネさんだけだよね?」
僕はアーラナイルの素材を剥ぎ取りながら確認する。
アーラナイルからはその鋭い爪と、体内にある蜘蛛の糸を作っている部位が手に入る。
後、ダンジョン主は絶対魔石を持っているので、それも回収する。
「最後の魔法がなかったらきつかったって」
「うん、まあ……そうかな?」
「そうだそうだ、もっと素直に喜べ。初ダンジョン攻略なんだし、嬉しそうにしろよ」
素材を集めながらラギアスは僕を諭す。
勿論嬉しいし、喜んでる。
でも実際僕は支援魔法でしか役に立てない気がする。本当にそれでいいのかな?
……今はそれを考えるときじゃないかも。
みんな喜んでるのに僕だけテンションが下がってたらよくないしね。
「これで全部かな?」
剥ぎ取りも終わり僕等は帰る準備をする。
帰り方は来た道を辿っていくだけ。だけど、その間に敵に出くわす可能性があるから、疲れてても戦うか逃げる準備はしとかないといけない。
「リオネさんはこれからどうしますか?」
「そうだな……まずはギルドに向かおうと思っている」
「なら一緒に来ればいいんじゃねえの? 向かう場所一緒だし、人数多い方がいいだろ?」
「そうだね。リオネさん、一緒に来てくれますか?」
「こちらから頼みたいところだ」
そう言うわけで、僕等はダンジョンを出てコートリアスのギルドに向かう。
ダンジョンから出る時、ハードウルフとの戦闘が一回あったが、リオネさんの魔法のおかげで難なく討伐することができた。
攻撃魔法って偉大だ。ないのとあるのとじゃ全く違う。
そこまで危険もなくダンジョンを出ることができ、そのままギルドに行く。
「そう言えば、さっきのキラが私にかけてくれた魔法はどう言うものなんだ?」
森を歩いている途中、リオネさんは聞いてくる。
「支援魔法です」
「支援魔法か。なかなか凄い魔法だな」
「ありがとうございます。リオネさんの魔法は水魔法ですか?」
「まぁそうなんだが、少し違うものだ」
え? 見た目は普通に水魔法なんだけど。て言うか、水魔法じゃないの?
「あれは"精霊魔法"だ」
「精霊魔法ですか」
精霊魔法。
それはその名の通り"精霊"と言う存在から魔力を借りて繰り出す魔法のこと。
精霊にはそれぞれ司る属性が違くて、主に火と水と風が存在する。それ以外の精霊も数は少ないけど発見されている。
「なんで水の精霊と契約したんだ? もしかして水が好きだからか?」
「あぁ……まぁその、言ってしまうとだな。私が契約しようとした精霊全員に断られてしまったのだ」
リオネさんは少し横を向いて悲しそうな顔しため息を吐く。よっぽど断られたんだな……あんまり触れないでおこう。
「その精霊はどこにいるんですか?」
「今は私の中で眠っている。さっきのアーラナイルとの戦闘で魔力を使い過ぎで動けなくなったんだ」
リオナさんは自分の中で眠る精霊を撫でるかのように胸に手を当てる。
精霊魔法使いは精霊と一緒に戦う。
だから、精霊は自分の使う魔法と、契約者に渡す魔法を同時に使わないといけないから魔力が早く減る。
それでもある程度戦えるのから、精霊の持っている魔力量は膨大なものだ。
会話が進んできたところでギルドについた。
僕とラギアスは早速換金所に向かい、リオネさんは僕がよく座るベンチに腰をかけている。
「これを換金してください」
僕等の成果はハードウルフとアーラナイルの素材、それと取れた魔石を差し出す。
すると、渡した換金所のお姉さんがハッとするように素材を見た。
「これはアーラナイルの素材ですね。と言うことはダンジョンを攻略したのですね」
「はい! おかげさまで無事に帰って来れました!」
「おめでとうございます。では、少々お待ちください」
少し待つと僕は換金所のお姉さんから銀貨6枚を受け取る。お礼を言い、僕はラギアスに結果を報告する。
「結構貰ったな」
「いつもは銀貨1枚とかだからね。でね、リオネさんと分けようと思ってるんだけど、いいかな?」
「別にいいんじゃねえの。俺も助けて貰った身だしな。何枚上げるつもりだ?」
「三枚、かな?」
「いや、流石にそれは多過ぎだろ。三分割で二枚でいいだろ」
「うん、でも……分かったよ」
ラギアスが言うなら、そうしよっか……。
僕は渋々頷く。
僕とラギアスはリオネさんの元に向かった。
リオネさんはベンチに座っていたが、僕等が来ると立ち上がった。
「リオネさん、これ報酬の分です。本当は三枚渡したいのですが、そこにいるラギアスが三分割でいいだろって言うので」
「俺を悪役に仕立てるなよ。正論だろ?」
「そう言うわけで銀貨二枚です」
僕はラギアスを無視してリオネさんに銀貨を渡す。
だけど、僕に掌を向けて受け取るのを拒む。
「助けてもらったらのにそれを受け取ることはできない」
「え? でもこれは受け取ってください。一緒に倒したんですから、正当な報酬です。はい!」
僕は銀貨を拒むリオナさんに対し、半ば強引に銀貨2枚を握らせた。その掌に入った銀貨を見て、リオネさんは困った顔をする。
「では、これで僕等は失礼します。一緒に戦ってくれてありがとうございました」
「俺もサンキューな。あの時助けてくれなかったらマジでやばかった。それじゃあ」
僕等は一礼してその場を去る。
しかし、
「あの、少しいいか?」
リオネさんに声をかけられ、僕等は足を止めた。
「どうしました?」
「いや、なんだ。助けてもらって、追加でこんなことを言うなんておこがましいと思うのだが」
リオネさんは深呼吸して、僕等にその青い綺麗な瞳を向ける。
「私を、その、パーティに入れてもらえないだろうか?」
少しモジモジと、恥ずかし気にリオネは僕等に願い出た。
予想していなかった言葉を聞き、僕は一瞬何を言われたのか分からなかった。
だけど、直ぐに立て直して、その答えを言う。
「もちろん大歓迎ですよ! でもなんで急に?」
「恥ずかしい話、私は今までソロでやってきたのだが、アーラナイルとの戦いで限界を感じてしまったんだ」
確かに、パーティだと互いに助け合うこともできるけど、ソロだと全部一人でやらないといけないもんね。
「まぁ、それは建前だ」
「建前?」
「あぁ、本当のことを言うと実はキラ達が少し羨ましかったんだ。パーティとして、仲間として戦っているのが羨ましかったんだ」
僕とラギアスを眺めるリオネさんの目には羨望のようなものを感じられた。
……僕も一人で冒険してたらそんなこと思ってたのかな。
今はラギアスがいて、それが当たり前になってるけど、もしそうじゃなかったら僕もリオネさんと同じ気持ちになったのかもしれない。
「ラギアスはいいよね?」
僕としては大歓迎だが、ラギアスにも聞いてみる。
「なんも問題ねぇな。てかキラがいいって言ってんだし俺は従うぜ」
「え? どうして?」
僕は疑問の声を上げる。
従う必要なんてないよね。こう言うのはみんなで決めるものでしょ?
その疑問にラギアスは答える。
「んなもん、このパーティのリーダーは、お前だろ? キラ」
「……え? えぇ!? そうなの!?」
初耳なんですけど!? 僕そんなこと聞くの初めてなんですけど。
「自覚なしか。いいか、俺はお前に『パーティに入れてくれないか?』って初めに言ったよな。つまり、このパーティを作ったのはお前だろ? だったら必然的にリーダーは決まる」
「僕になる、ってこと?」
ラギアスはなんの疑いもなく頷く。
リオネさんもその通りだと言った感じて話を聞いている。
「僕なんかがリーダーでいいのかな?」
単純に心配だ。
僕は年下だ。ラギアスよりリオネさんより弱い。
それなのに、僕はリーダーで本当にいいのか?
やっぱりここはラギアスがリーダーの方がいいんじゃないの。
そう考えていると、ラギアスが言う。
「なんか悩んでるみたいだが、皆で相談して最後に決まるのがキラになるだけだ。間違ってるなら俺達が突っ込むし、賛成したらついて行く。まぁ、勝手に行動するかもしれねぇが、そん時はそん時だ。なぁに大丈夫だ、何かあったら俺達いる」
「……うん、分かったよ」
ラギアスの言葉を聞いて僕はリーダーなんて肩書きに過ぎないのかもしれないと思った。
本来はそうでないだろうけど、ラギアスの言っていることはそう言うことになる。
僕がリーダーになっても何も変わらない。皆で相談して決定するだけ。
そう思ったら別になってもいいかなって思ったりする。
「本当に僕がリーダーなんだね?」
僕は最後の確認をする。
「当たり前だ」
ラギアスはそれに即答する。
僕はそれを聞いてからリオネさんの方を向いた。リオネさんも僕を見ている。
「では改めて。キラ、私をパーティに入れてもらえないだろうか?」
こういう時どんな顔をしたらいいんだろう。
きっと、こういう時は笑顔の方がいいんだろうな。
僕は笑う。意図的にではなく、本心から笑う。
「もちろん、これからよろしくね、リオネ!」
「こちらこそだ」
たった今、僕に仲間が増えた。
これから先、大変なことがあってもこの二人となら乗り越えられる気がする。
僕等の冒険は始まったばかりだ!
投稿遅れてしまい申し訳ございません!
そして、ひとまず一区切りはつきました!
これからもよろしくお願いします!




