プロローグ
僕はずっとずっと冒険者になりたかった。
かっこいい冒険者になりたかった。
きっかけは、父さんが魔物と戦っているところを見てしまったことだと思う。
かっこよく剣を振って、敵を倒していく。
僕はその光景を見た瞬間から父さんのようになりたいと思っていた。
僕は父さんにそのことを話した。
でも認めてはもらえなかった。
父さん曰く『冒険者は死と隣り合わせの職業。そんな危険な職業に就かせたくない』だそうだ。
それでも、僕は必死に訴えた。
僕の心はもうあの時に奪われていた。冒険者と言う職業に。
しばらくして、父さんは遠出をした。新しく発見された洞窟を探索するらしい。
僕は行きを見送り、帰りを待った。
ずっとずっと待ってた。
でも、その日は永遠に来なかった。
父さんは死んだ。
洞窟を探索中に魔物に殺されたらしい。父さんの仲間の人からそういうことを聞かされた。
その後、その洞窟は大迷宮と称され、多くの冒険者が挑戦しては敗れを繰り返していた。
父さんの言ってたことは間違ってはなかった。
『冒険者は死と隣り合わせ』
この言葉は僕の脳内で何度も何度も繰り返し反響した。
でも、それでも、僕の心は冒険者というものに囚われていた。
父さんの忠告がいつも出てくるが、僕はそれを振り払った。
僕は冒険者になりたい!
僕の夢は父さんのようなかっこいい冒険者になることだ!
そして、決心した。
僕は父さんが果たせなかった、大迷宮の攻略をしてみせる。多分それが、今僕にできる唯一の親孝行だから。
いや、もしかしたら親不孝なのかもしれない。父さんの忠告を破ったのだから。
思い立ったが吉日と言う。
僕はそう思った次の日、早速冒険者になるため近くの"コートリアス"という街にある冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドとは、冒険者がクエストを受けたり、素材を換金したり、店を経営したりといろんなことをやってる機関のことだ。
冒険者になるためには、ここで冒険者として登録しなければならない。
だから僕は早速冒険者登録を済ました。
そして、その次にやることがある。
それは"才能の開花"と呼ばれるものだ。
ここで言う才能とは、簡単に言えば魔法。
魔法とは、体内にある魔力と呼ばれる力を使い、現象を起こすと言ったものだ。
それは攻撃に使えたり、防御に使えたり、回復したりなど、かなり種類は豊富である。
そして開花というのは、その人の魔法の適性を見つけるというものだ。
魔法には適性があり、火属性の魔法に適性があれば、その人は火属性の魔法を使うことができる。
しかし、それ以外に適性がないと他の魔法は使うことができない。
その得意属性を見つけるために行うのがこの、才能の開花と呼ばれるものだ。
ちなみにだが、これを行わないと魔法すら使えない。つまり魔法は冒険者の特権なのだ。
その特権を使ってド派手に魔物を蹴散らしていく様は僕の憧れでもあった。
そう、憧れであった……。
「では、こちらに手をかざして下さい」
俺は目の前にある水晶の様なものに手をかざす。
すると、水晶は淡く光だし、やがて消える。
これで終わったのかな?
「……はい。結果が出ました。貴方の適性魔法は……」
「適性魔法は……」
ゴクリと息を飲む。
「"支援魔法"ですね」
「……はい?」
そう、僕の憧れは、冒険者になった早々打ち砕かれた。