追跡
警備ドローンを見て駆けだし、ドローンが入って消えていった場所へユウが向かった。その先は隔離区内でも誰も立ち入りたがらない禁忌の領域の場所だ。
なぜ、そのようなことを言われてるのかと言えばそこは『妖獣』の住処とも言われてる場所だからである。
元々は『研究所』があったその場所は今は爆発事故が起った要因で大型のクレーターゾーンができている。
見た目は周囲に抉られたような形跡のある研究所の痕跡がそこにあるだけだからこそ薄暗い洞穴のようにみえてもいて特に日が落ち始めた今の頃合いではとてもではないが視界がいいとは言える状況ではないし入ろうと勇気すらわかない。
だけれど――
「あの先に行ったなら行くっきゃねェよな」
崖で足を止めていたがさらに奥へ進むべく穴底へ足を滑らせて下りていく。
抉られた痕跡のある研究所跡地に入っていく。
鼻孔にくすぐる嫌な腐敗するにおいと薬品などの匂い。
半壊した研究所の中に入ると奥から『妖獣』の呻く声が聞こえたり機械の騒音が絶え間なく聞こえてくる。
さらには人の声まで聞こえて騒々しい。
「何をしてるんだ?」
奥からマズルフラッシュが見えた。
マズルフラッシュは銃が放つ光である。それが見えたということはつまり誰かが銃を扱っている。
「おい、そこに誰かいるのか!」
ユウは叫んだ。
奥からかえってきたのは絶叫だった。
慌てて入り進んで息を呑んだ。
『妖獣』と戦う隔離区の住人たちの姿。
手にしているのは見たこともないような銃。銃から放たれるのは銃弾ではなくレーザー光線のような高性能。
「なんだよこれ」
『妖獣』に放ったはずの銃は一回こっきりしか使えないのか何度も引き金を引いて発射しない銃に戸惑い焦燥する彼ら。『妖獣』は一発のレーザーでは無傷だった。まるで、攻撃したのかとでも言いたげに獲物となろう彼らを見ていた。
『妖獣』は体中の長い銀色の体毛が特徴的でまるでアルマジロのようなフォルムをしている。
光線は体毛ですべて吸収してるのか、光線と同じ色をして毛が発光してこの薄暗い地下の研究所跡地を仄かに照らしていた。
「なんだよ、この銃! あいつらこれで倒せば金くれるとか言ってたが使えねぇじゃないか!」
「これじゃあ報酬の割にあわねぇぞ! 俺たち死ぬぞ!」
「どうすんだよ! これじゃあ捕まえることもできねぇ!
光線銃を手にした男集団は全部で3人。他にもいたようだがその男たちは無残な死体になっていた。
「おい! 援軍じゃないか!」
「や、やった!」
廃墟のところの開いた天井。
そこから見える夕焼け空から複数のドローンが降りてくる。
それらは彼らにとって光の兆しに見えた。しかし、ユウには絶望の表れに映る。
「おい! お前ら逃げろぉおお!」
「ん? なんだお前何処からは――」
次の瞬間、ドローンは銃火器をハッチから出して乱射する。
ユウは咄嗟に柱の陰に身を隠す。
人の悲鳴と銃の速射音が耳をつんざいた。
柱の陰から音が止んだ時に顔をのぞかせてみてみると倒れた人の山が築かれていた。『妖獣』も目くらましでもくらったようにふらついている。しかし、傷は軽度である。『妖獣』には普通の銃火器は食らわない。
(会話から察するに男たちは『cybarz社』に雇われた隔離区市民だったのか)
男たちが手にしていたのは星宮の星のロゴマークが入った銃だった。
(くそっ! 裏で星宮が手を引いてるのが確定的じゃないか)
彼らのようなものを雇い『妖獣』を回収する手伝いをさせようとでもしていたのか。
結果としては両方を回収するつもりで始末したのだろうドローンの行動。複数のドローンが死体を回収し始める。
金もなく仕事もない彼らにとっては良い稼ぎとなる仕事だったはずがこんな形はあまりにも哀れだった。
なによりも、隔離区住民は基本的には仕事がないのも仕方がないのだ。
元々、この地域に住んでいるやつらは住む場所を失い、政府に抗議をしたところに反逆罪で犯罪者扱いに認定された人。中には普通に犯罪を犯した無法者。
つまり、前科者なために仕事などが与えられないのだ。
今の世の中では前科者の扱いは厳しい。世の中には支援して仕事を与えてくれる者もいるが結局は悪人ばかりだ。
隔離区の住民は死んでも簡単に戸籍抹消ができる時代では悪人の捨て駒にされる。
ユウの就いた職業ボディーガードマンも無料待遇を犯すのも結局死ぬ人間であるから。
だからこそ、かなりの偏差値倍率での入学試験を与えていたりして近い将来では死ぬのだから問題はなくあるという理念がある。
「世の中腐ってやがるよな」
今目の前の奴らもそんな捨て駒だった。
同情心がわいて悲嘆に顔を暗くさせた。
死体となった今の彼らを救うべきかと悩むがそれ以前にユウは気になった。
それ以前にドローンの目的は明白。『妖獣』だ。
しかし、『cybarz社』は『妖獣』を捕まえてどのような実験に使用するのか。
思案していた時に『妖獣』が身震いを起こす。
「やばっ!」
瞬間に『妖獣』からとんでもない電流が放射させられドローンを次々と破壊していく。
溜めこんでいたレーザーを放出したんだとわかった。
生き残ったドローンはわずかな死体を回収しその場から撤退していく。
ユウは柱の陰でレーザーの放出も防ぎドローンの逃げていくところもしっかりと見えていた。
「危なかった。ドローンもあきらめたのかさすがに」
ふと、足音が聞こえた。
ユウは足音の先へ振り返るとユウを呼び掛けてユウに気づかせた。
「レナに……崎守さんか」
「いったい今の光は何? ユウは平気?」
「うっ、この匂いは?」
雪菜がそっとユウの柱の陰の先を伺って喉をひきつらせた。
例の怪物と無数の焼け焦げた死体にドローンの残骸があったのを見たからだ。
「タイミングわるく来たな。お二人さん」
ユウは呆れながらホルスタ―から拳銃を引き抜いた。
スナイパーライフルではなく改造拳銃。
『ベレッタ92FS INOX――K』を握り構えて柱から飛びだしざまに『妖獣』に向けて銃弾を発射する。
3発の弾丸が『妖獣』を直撃して爆発する。しかし、『妖獣』は叫びをあげて血みどろになった体を震えあがらせて咆哮する。
「やっぱもう一段階威力が高めじゃないと仕留めるのは無理か!」
今までの経験則からして前方の『妖獣』はこれまでの『妖獣』と比較にならない防御を誇っていた。
ユウお手製の特殊銃と特殊弾丸では仕留めきることはできなかったがダメージはそれなりにあったが、逆にそれは『妖獣』を怒らせた。『妖獣』は咆哮して身体を丸めてこちらに向け旋回して来た。
ユウは慌てて傍の死体が握った銃を拾い上げてホルスターへしまいこんで背後へ逃亡する。
レナと雪菜もそれに続いて逃亡。
「外へ!」
急いで夕焼け空の照らす出口に向け走った
研究所地下施設から脱出するや、ユウはある物を懐から取り出した。
「なにそれ?」
「いいから離れてろ!」
それを研究所地下施設に向け放り投げる。
慌てて研究所から距離を離して走っていく。しばらくして爆発が起きて爆煙を巻き起こして研究跡地が『妖獣』ごと瓦礫の山に埋もれて行った。
「しゅ、手榴弾なんてどこで手に入れたのよ!」
「ココでだよ。それよりも、なんでついてきたんだ?」
「それはあなたが心配で……」
「心配? アハハハ」
「な、何がおかしいのよ!」
「ボディーガードマン見習いで『黒衣者』だって知ってるんだろうに心配ねぇ……」
「うぐっ」
彼女の顔が羞恥に赤く染まっていく。
「心配してくれてありがとうな」
おもわず肩に手をやって感謝をした。
「きやすく触らないでちょうだい! まったく!」
その時の二人をレナはキツイ瞳で見てるが二人は気付かず和やかーにしていた。
そんな二人に腹を立てレナはユウに抱きつく。
「ユウ、実はあることがわかった。近くに『cybarz社』主催のパーティーがあるみたい。そこでなにかありそう。紫藤正宗に星宮源内、『cybarz社』の社長も出席する。他にも関係者は全員だよ」
「うぉ、早いな。それで? つか、暑苦しいから離れろ」
「離れないでいいなら教えてあげる」
「……はぁー。わかった離れなくていいよ」
レナはほくそ笑むと、まるで雪菜に対抗心のある瞳を向けてからさっそく『ニューワーカー』の操作によって空間に投影して映し出された開催地に日付を見せた。
「開催地は『cybarz社』の社長が持ってる某区別荘。なんでも、歓迎パーティーっていうことらしい。でも、裏がありそう」
「歓迎パーティー? 誰の?」
「たぶんこれ……」
そう言ってレナは映像を切り替えた。
それは今やってる放送番組だ。緊急速報が入ったようだ。
「緊急速報です。先ほど『cybarz社』社長、木藤栄治社長が大手資産保管会社で知られる『株式会社フィジアーク』をグループ会社に加えることを発表しました。『cybarz社』はこれまで――」
そのあとに報じられる内容は今まで『cybarz社』が信託会社に頼らずに資産の運営は個人で行っていた経緯をアナウンサーは語っている。
それが突如として信託会社を傘下に入れたことは資産に何か問題が生じたのではないかと言うアナウンサー。
『cybarz社』は現代を支える重役企業で政府ともコネが多くある。さらに多くの子会社をもつ知らない人はいない企業。
その会社が今まで個人で財産管理していたところを突如資産運営を行う信託会社のグループへの勧誘をしたとなれば何かの問題を疑う。
「おおよそ、歓迎はこのフィジアーク。フィジアークもいろいろ黒い噂はあるからなにかある」
『株式会社フィジアーク』。大物企業家から多くの財産運営を任されている。
しかも、その財産には死体や集会所で買い取った隔離区の住人を保管したりしているとか。
さらには違法な薬物や違法な金。
そんな裏がある会社とのグループを結んだというのは何かを感じさせる。
「そうか……」
ユウは画面から目を反らして空気を吸うように周囲を見渡して一呼吸をする。
「一度家に帰ろう。それから、明日、敵情視察を行うぞ。まずは星宮家に個人的に訪問してみる。ちょっと、中で気になる武器を使ってた連中がいたからな。そのあとはレナとその会社を視察しようか」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 敵情視察って本気? そんなことしたら私たち警察が捕まえるわよ。それに研究所の情報は?」
「なら、警察の監視が緩むように内部から操作してくれよ。それと、研究所の情報は歓迎会って場所だろう」
「なっ!」
あまりにも勝手な言い草に雪菜も絶句する。
「いいかげんよ! 私も同行するわよ!」
「それはやめた方がいい。もし、警察官といればそれこそ目を引くしなにより敵情視察にならない恐れさえ出てくる。相手さんの社長は君のことを知ってる」
「そ、それはたしかに空撃ちで顔を合わせた経緯はあるけど……」
「なら、決まりだ。崎守さんは崎守さんのやるべき仕事、捜査官としての仕事を全うするべきだろう」
そのような言葉を受けて雪菜はしぶしぶ了承した。
それぞれそのあとは帰路につき別れ帰宅して行った。




