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最終戦争③

長らくお待たせしました。

完結です。

 ユウは姉の意志を引き継ぎ、涙ぐんだ眼をこすりながら放射能ミサイルを撃ち放った。

 管理システムは破壊されていく。

 爆炎に包み込まれる基地の中をユウはゆっくりと歩き続けていく。

 すると、どこからか電話の着信音のような音が聞こえた。

 ユウは腕をみた。そこに点滅するボタンのようなものが存在していた。

 何気なく押してみる。すると、目の前に映像がホログラム投影されて出てきた。

 映像に映るのはユウの幼馴染のレナの顔だ。


「レナ?」

「ユウ、やっとつながった。心配した」

「ごめん……それにしても、この電話は一体どうやって……」

「私のデバイスに奇妙な通信があった。開いてみたらユウとの通信先が。この通信元のコード名ユウのお姉さんの名前だった。もしかしてだけど……」


 聡明なレナは何かに気付いたように遠回しに問い詰めてくるがすぐに「いいえ、なんでもない」と話を打ち切った。


「それより、急いで地上に出て。地上までの出口のルートは確保した」

「そうか。それより、地上はどうなってる? ドローンや『妖獣』は?」

「全部機能停止した。おおよそ、管理システムが破壊されたからだと思う」

「そうか。よかった」


 元をたどればすべてが管理システムを根幹として起動していたものだった。

 妖獣に至っても内部にAIチップを混入されている生き物だから、管理システムが破壊されればそのAIチップが稼働を停止し妖獣を動かす素材でもあるものが停止すればそれは動くことを停止する。

 すなわち、死亡する。


「いやはや、よくもやってくれたねぇ黒衣者、黒木勇くん」

「ッ!」


 衝撃が体を襲う。

 ユウは横殴りに受けた攻撃。

 壁に体がめり込み、さらに追い打ちを仕掛けるように何者かの奇襲によって圧をかけられる。

 目の前に異形の怪物がいた。

 その存在を見てユウは息をのんだ。

 姿形は真黒く染めっていてもその容姿や体系まではそのまま。

 その異形の怪物、否、女性は久遠寺名花さんだった。


「名花さんっ……木藤おまえぇええええ!」


 あまりにも変わり果てた姿の彼女にユウは激昂した。

 人をおもちゃのように改造する木藤のおぞましいやり方は外道としか言いようがない。


「くくっ、あははは! どうだい? 君の慕う人が落ちた感想は? いやぁーつくづく黒木に関係する人っていうのはいじりがいのある人材ばかりだ。さぁ、久遠寺議員彼を食い殺すといい」


 久遠寺名花に容赦なく指示を送る。

 木藤はその間にどこかへ行こうとしている。


「行かせるかぁああ!」


 抑え込まれている力を振り切ってユウは機械の右腕から電磁パルスを放出した。

 衝撃を受けた久遠寺名花が昏倒し、身動きが取れる状態へ入り、果敢に突撃する。

 だけれど――


「親父、コイツは俺の人形が食い止めるよ」


 そこへ割り込んだのは木藤の息子とその人形と評された彼女。


「星宮さん! てめぇら人をおもちゃのようにしやがってクズどもがぁあ!」

「吠えてろ、下等なガキ! この世は我が手中にあるのだ。貴様はここで朽ち果てろ!」


 ユウは見た。

 木藤の手に管理システムと同じような機材がつけられているコントローラのような機会が握られているのを。

 しかし、ユウは行く手を阻まれているのでその機械を奪ったり破壊することは困難だ。


「うぅ……」

「んなっ!?」


 背後でもう一人、久遠寺名花が目を覚まして襲い掛かる一歩手前だ。


「ここまでか……」


 そう思ったその時だ。

 天井が粉砕し、何かが降ってきた。


「ユウ、生きてるわよね!」

「その声……崎守さんかっ!」


 ユウの目の前に登場したのは羽の生えた妖獣に乗った崎守雪菜だった。

 その妖獣はユウも見覚えがあった。

 自分を救ってくれた謎の妖獣ではないか。


「それって……」

「私の妹よ。それより、何がどうなっているのか説明してちょうだい」

「それは……」


 答えようとしたところへ二人組の女が飛び掛かってくる。

 一人は久遠寺名花、もう一人は星宮香苗だ。


「この二人って……木藤の研究にされたってわけ! なんて奴ら!」

「くくっ、またまた邪魔者が入ってきたわけかい。お父様の最終計画がもうすぐなんだ。若干事故はあったけれどねぇ君たちさえいなくなれば計画はうまくいくんだから消えてくれよ!」


 木藤の息子が手にした銃を向けて撃ってきた。

 さらに、久遠寺名花と星宮香苗の奇襲が重なって、攻撃を回避できずにユウは右腕を久遠寺名花の鉤爪により裂傷し、雪菜も右肩を銃弾によって裂傷する。

 星宮香苗の攻撃だけは妖獣がどうにか羽を使って食い止めた。


「黒木勇!」


 突然に崎守雪菜が声を張り上げユウを名指しで呼びつける。

 そして、真剣の表情で告げた。


「あなたは先へ行きなさい」

「え」

「ここは私と妹で食い止める」

「な、何言ってんだ! 相手は3人だぞ!」

「大丈夫よ、これでも実践経験はあるほうよ」

「だけど――」


 ユウがためらっていると吹き抜けの天井から足音が聞こえてくる。


「なら、お姉さんも加勢しようじゃないか」


 吹き抜けの天井から一人のメイド服を着た女性が降り立った。


「あ、アカネさんっ!?」

「いやぁー、弟。どうも、心配をかけたようですまなかった」

「け、けがは大丈夫なんですかっ!」

「大したケガじゃない。それよりも、自分の不始末をつけに来たんだ」


 そういって茜は目の前の久遠寺名花のほうを注視する。

 自分の不始末とは彼女を拉致されてしまったことなんだろう。


「弟、事情はレナから大雑把に聞いている。先に行くといい。件の犯人とやらをぶちのめしてくるといい」

「で、でも」

「ここはお姉ちゃんたちに任せるんだ。なぁに心配はいらないにゃん」


 いつものおちゃらけたような返事をする。

 その会話を邪魔するように久遠寺名花が飛び掛かってきた。

 その攻撃をアカネは懐に忍び込ませていたトンファーで食い止める。


「さぁ、行け!」


 ユウは目をつぶってそのばを任せて木藤栄治を追いかけた。



 *******


 レナによる情報伝達によって木藤栄治の居場所が割り出せた。

 それは基地局の管理コンソールの地下だった。

 そんな場所が存在したのかと自分の観察眼のなさにあきれてしまう。

 あの時しっかりとすべてを破壊しきれていなかったのだ。

 瓦礫の山をどかされたあとがあり、たしかに地下へ続く階段があった。

 ユウはその階段を下りていくとそこにモニター画面を見ながら手元で何かの操作パネルを操る木藤栄治の姿があった。


「木藤栄治! そこまでだ!」

「…………息子は死んだのかな?」

「いいや、まだ生きている。だが、時期あんたと同じく殺される」

「くくっ、この私が殺されるか。アハハハ、おもしろい冗談だ」

「冗談だと思うかっ!」


 機械の腕から放射する光線。

 木藤栄治はその場から動かず、その身に光線を受けた。


「んなっ!?」


 木藤栄治の中に光線は吸い込まれていき、まるで養分にでもしているかのような状態に見える。


「うむ、なかなかにうまい。しかし、黒木の娘も存外つかえなかったか。まぁ、あの女が裏切るのは想定済みだったからこそこうして別の管理コンソールを作っておいたわけだがな」

「別の管理コンソールだって……」

「そうだ、これが世界改革をおこすために必要な重要機関。君の姉にはあくまで古き世代の機能を動かすための管理コンソールを任せていたにすぎない。しかし、この私の一部をうえつけた管理コンソールは私と同種族を作るためのシステムを有しているのだよ」

「っ! もとより地上のは捨て身で作っていたっていうのか」

「まぁ、そうともいうな」


 怒りがこみ上げた。

 ユウは咆哮して、もう一度光線を放つ。

 しかし、今度は打つだけではない。

 撃った直後、攻め込んだ。

 右手の腕を形を変えて剣へ。

 近接戦闘に変更し、背後に回り込んで切り刻む。


「それは予想済みだよ」


 斬りこんだ腕は木藤栄治によって食い止められる。

 ミシミシと嫌な音を立て、腕は破壊された。


「ぐっ!」

「馬鹿だねぇ。ここの機材はすべて私が調達し作ったものだ。そして、それを用いて作った君の腕や足は構造さえ私は理解できる。なにせ、私の子供同然なのだよ」

「どういう意味だよ……」

「だからだねぇ、その機械の部品は私から生み出されたものだといっているんだ」


 そういって木藤栄治は指を動かした。

 すると、ユウの足は勝手に持ち上がって天井まで跳ね上がった。

 天井へ突貫した。

 ユウの意識は一瞬で持っていかれて頭部は流血し脳震盪を引き起こす。


「君は最初から勝てる見込みなど万に一つとてないのだよ」


 何度も縦横無尽に体を振り回されて地面に叩きつけられまくる。

 木藤栄治という存在は科学の機械文明と魔法の超文明によって合成し作られた生物。

 彼が機械などを生み出せることもありえる。そうして、この妖獣や装置などが彼の生み出したもので作られたものだとすれば彼の自由意思で操作など可能なのだ。

 町が彼の管理下にあるように。

 そして、姉が受け渡してくれたこの機械の手足でさえ、利用されるとはユウは勝機を失い始めた。

 絶望――。

 意識が失われ、未来に生きる価値を見出せなくなった時、脳に響く声。

『そこであきらめてどうするのですか、ユウ』

 お姉ちゃん?

『ユウ、私はなんのためにあなたにすべてを託したのですか?』

 だって、勝ち目なんかないんだよ。

『勝ち目ならあります。手足がなくたって私が独自で開発したものをあなたには託しています。それは黒木の人間だけしか扱えないもの』

 え。

『それにシステムにかんしてはより強い相方があなたにはいますでしょう』


 その時どこからか発砲音が響く。

 つづけて、木藤栄治の呻く声。

 木藤栄治が負傷している?


「ちっ! どこから湧いたポンコツドローンがぁああ!」


 ドローンがどこからか現れて反逆するように木藤栄治を射殺しようとした。

 殺しまではいかずとも負傷を負わせることはできた。

 結果として彼を怒らせドローンは破壊された。


「ちっ、いてぇじゃねぇか。くそがぁ!」


 まるで性格が変わって荒々しい口調へとなっている。

 三度コンソール捜査を始める木藤。


『ユウ』

「れ……な……」

『全部、お姉さんから聞いている。私は今手元にすべてのプログラムを破壊するワクチンを持っている。それを使えば今『妖獣』になっている人もドローンさえも機能を失い元に戻せる可能性もある。おおよそ、あの管理コンソールの中には人の死体が培養液の中に眠っている』


 目を凝らしてみれば大きなモニターの後ろに何か見える。

 たしかに、一つの部屋が見えた。


「どうやって……つかうんだ」

『それはユウにやってもらう。ユウの足の中にワクチンを仕込んだ。それを撃って』

「だけど、俺の体は奴の支配下に……」

『大丈夫、私が操作権を乗っ取った』

「ッ……ははっ……やっぱレナすげぇや」

『だったら、結婚して』

「……いきてたらな」

『え』

「コイツを撃てばいいのか?」

『え、あ、うん……それと、ユウの中にはまだ力があるって……私にはそれが何かわからない』

「力か……」


 ユウにだってそれに検討などない。

 でも、大好きだった姉がいうならばそれを信じよう。

 そして、大好きな幼馴染だって協力してくれるんだ。


「レナ、最後まで協力してくれ。俺だけじゃあ無理だ。だから、頼む」

『わかってる』


 足のランプボタンが赤から緑へ切り替わると煙を噴出し始める。

 すると、どくりとユウの中で何かが湧き足立つ。


「あぐぅ……あぁああああ!」


 身体から膨大な力があふれあがってくる。

 何かはわからぬ血潮がたぎり、渇望がみなぎる。

 ユウは機械の右腕の根元を握るとそれを引きちぎった。

 そして、機械の部分を根こそぎはぎとると、内部で機械と細胞が融合するような感覚が廻った。

 新たな右腕が生み出される。


「これは……まさか、そういうことなのですね。あははは! 黒木の研究の最高傑作がこのような間近にいたとは!」


 木藤栄治はユウをみて喜悦に満ちたりている。

 ユウは足から伝達されるモータ音を耳に聞きながら、踏ん張って発射する。

 木藤栄治はまたしても受け止める気でいる。


「今度のは受け止められねぇよ!」


 ユウは右腕を繰り出した。

 木藤栄治は食い止めようとしたが逆にその腕がひしゃげて血と肉をまき散らす。


「あぎゃかあああああああ!」


 痛みを伴っているというのに彼は満面の笑みを浮かべていた。


「ああ、いい! 最高の力だ! そうか、そういうことなのか! 私だけではなかった! ああ、最高だ! これが同胞との戦いか!」

「俺はてめぇとは違う!」


 腹へもう一発、顔面、足と木藤栄治のあらゆる体のパーツを殴打していく。

 ボロボロになった木藤栄治の哀れな姿を見下ろしユウを拳の先を突き付けた。


「おまえの負けだ」

「くくっ、ええ、そうですねぇ。でも、私は最高の気分だ。同胞がいた。私の同胞が。ただ、この世界にたった一人だけだった私。だから、私は求めてあらたな世界を作ろうとした。だが、もうその必要もなくなった。あなたという同胞がいれば私は悔いはない」

「同胞か。それはちげぇよ。俺はあんたとは違う。あんたは人をおもちゃのように扱い、殺りく兵器と化させあげく自分と同じ怪物を生み出そうとした。だけど――」


 俺は自らの新たな右腕を見せつけた。


「俺はこの右腕であんたの世界を壊し人々を救う。『妖獣』を人間へ戻してドローンも全部停止させる。それに俺はあんたの同胞じゃない。これは再生化によって生み出された右腕」

「再生化……だと……」

「そうさ。機械と魔法の要素付与して生み出された右腕だ。魔法の右手。あんたのような怪物の右手なんかじゃない」

「魔法の右手だと? 馬鹿な! 私と同じ同胞だ! おぞましく醜い姿をさらせばいい! 変えてみろ!」


 木藤栄治は自らの手袋を取り外して見せた。

 そこには水膨れでただれた両手。

 おぞましくも醜い、人間の手ではない怪物の手だ。


「あんたとは違うよ、これは本当にただの機械と細胞再生によって生み出された人間の右手だ」


 装置へ歩み寄った。

 そうして、足に力を籠める。


「すべてを解放しよう!」

「待て……やめてくれ……何をする気だ!」

「すべてを元に戻す。そうして、平穏な世界を」

「やめろぉおおおお!」


 ユウの足が装置を粉砕した。



 ********


 それから数か月後、世界に平穏が戻った。

 木藤栄治の逮捕、木藤栄治の息子の死亡によって。

 町にはワクチンがばらまかれて妖獣にされたものは人へ戻ってドローンは昨日を停止した。

 ちなみに『妖獣』にされた人の素の体は案の定、本来の管理システムの部屋に存在していたわけだけれども。

 現在はあちこちで未だに復興作業が行われている。

 その復興作業は町の警察も加わり、崎守雪菜を筆頭にしたグループが援助している。

 さらには星宮財閥と久遠寺財閥も協同し、町の治安は徐々に復興しつつあった。

 そして、黒木優は――


「なぁ、レナ本当にやるのか?」

「街が新しく変わっても治安はまだまだ安全とは言えないでしょ? 町が外部の政府と連携を密にとるようになってからは外部の人が入ってきて日夜騒ぎだらけ。これは私の夫が止めるべき」

「ったく、俺の奥さんは人使いが荒いな」


 あれから、黒木優と愛瑠レナは婚姻した。

 いろいろと紆余曲折あったがレナの思いを受けてユウが一つの決心をした。

 もちろん、中には反論の声などあったがその反論も押し切って婚姻へこじつけたといえる。


「さぁて、じゃあいくかな」

「ちょっと待って」

「なんだ?」


 ビルの屋上で黒衣者としての格好をする二人の視線の先に星宮財閥の車が見えた。


「ユウさまー、未来の妻が迎えに来ましたわー」

「香苗お嬢様っ!?」


 彼女がこちらへ来ようとしている。

 さらに、彼女だけではなく崎守雪菜や崎守皐月、そして、久遠寺名花、見島茜と勢ぞろいだ。


「ユウ、みんな呼んだの?」

「呼んでない呼んでない!」

「じゃあ、なんで黒衣者再始動の出立に集まってるの?」

「出陣式するなんて言ってないぞ!」

「チッ、ユウ飛ぶよ」

「え、飛ぶって――うぁあああああ!」


 ビルの屋上をレナはワイヤーアンカーを使ってターザンよろしくで飛び移る。

 ユウを抱えて。

 それを後方で集団が何かを叫びながら言っている。


「なぁ、レナほうっておくのか?」

「だって、ユウは私のモノ」

「アハハ……」

「ねぇ、ユウ」

「なんだ」

「今、幸せ」

「ああ、そうだな。幸せだ」


長い期間の休載を失礼しました。

この度におきまして完結です。

速足で完結させてしまい申し訳ありませんでしたが、この作品はこれにて完結です。

私の作品はほかにも掲載中ですのでよろしくお願いします。

不定期となりますがゆっくりと終わらせていきたいと思っています。

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