姉の声
電動のこぎりでも起動させてるかのような機械の騒音が聞こえた。
ユウはその騒音により目を徐々に開いていく。
「あれ……」
自らは死んだと思っていたはずだったが息をして生きてることに違和感を感じた。
明らかに死んだと思う攻撃を受けたはずだった。
左足と右腕を自らの改造銃弾で粉砕されたあの痛みの感覚が思い出せる。
でも、今はその痛みがなかった。
「どうして生きてるんだ? それにここは?」
視界にはどこかの病室なのか、薬品臭く白い天井らしき壁が見えていた。
身体を起こそうとしたが動けなかった。
首だけでも動かそうと頑張った。
「っ!」
動かせた結果見たのは自らの身体にいろんな機会の管がつながれており、さらに粉砕された左足と右腕が機械化された姿だった。
「な、なんだよ……これ……」
息を呑み、恐怖に汗が流れた。
必死で助けを呼んだ。
しかし、誰も来ない。
でも、何処からか先ほどから機械の音はくまなく聞こえていた。
「うっ」
身体をどうにかして動かせないかと懸命に努力した。
すると、徐々に機械化された身体に神経がつながったかのように動かせるような状態へ発展する。
手術台らしきベットから足をおろして機械の管をはずし床を踏み、腰を持ち上げて立ち上がる。
周囲の景色を初めてそこで認識した。
そこは病室のベットなどではなくどこかの研究室のような光景だった。
ロボットアームで薬品らしきものを台座の上で作っていたり、人の死体にロボットアームが手を加えていた。さらにはAIチップを植え付けられている。ドローンの製造もあった。
「これは、なんだよ」
驚くべきは『妖獣』を製造している台もあった。
台の上にでは魔術文字が刻まれ、ロボットアームが魔術文字を刻まれた台座の上に乗った死体をいじくると光りだして『妖獣』に変貌する。しかし、瓦解して焼けくずれていく。
『妖獣』から肉片を取り除きそれを死体に移植していくおぞましい実験光景があった。
一つ一つの台座の合間を縫っておぞましい実験光景を見ていく。
中には死体の脳を取り除き、それにAIチップを入れてコンベアーに乗せてコンベアーの先へと運ばれていく光景を目の当たりにする。
「どこに行くんだ?」
その先を追いかけた。
コンベアーの先は部屋の外に続いていた。
部屋を出ると硝子窓の部屋があり、廊下でその中を覗けてしまう工場見学をしてるかのような気分だった。
コンベアーに運ばれた脳は新たな頭を開かれた人の中に入れられる。その頭を開かれた人は意識があるようだった。どうして、意識があるのかは謎だがそれはここの研究の成果なのか。
勇気はぞわっとした。
自らもあのようなおぞましい行為にさらされたのではないかと思い、吐き気が催した。
『大丈夫、あなたはなにもされていない』
ユウの身体は聞き覚えのある声がどこからか聞こえて硬直した。
『ただ治療を施しただけ。彼の目をかいくぐって治療を施すのには苦労をした』
「姉さん? 姉さんなのか!」
聞こえてきている声は亡き姉の声だった。
黒木結愛という黒木勇気の生き別れの姉の声。
彼女はcybarz社の社長の養女になって事故死したと聞かされて以降、事故死などとおかしいと思いcybarz社の陰謀論を信じて死の真相を探っていた。
その中で姉は生きているのではないかという期待もあった。
「姉さん! 何処にいるんだ!」
「ユーちゃん、それより聞きなさい。あなたは今すぐに管理室にいって世界のドローンシステムを全部停止させ、AIシステムも同時に停止させること。そうすればドローンは止まり『妖獣』も爆散する」
「なっ!?」
突然言い渡された願いに動揺する。
でも、ユウにはまず姉の存在が大事だった。
「姉ちゃんはどこだ! そんなのはあとだっていい! 姉ちゃんは生きてるのか!」
『……半分だけ……でも、私も時期に消滅する……この研究所とともに』
「な、何を言ってるんだ! 俺はずっと姉ちゃんの仇をとれるために動いていたけど姉ちゃんが生きてるなら姉ちゃんを助ける! そして、姉ちゃんを傷つけた木藤をぶっ殺す!」
『申し出はありがたいけどそれは無理。彼は最強の存在。世界のすべては彼の手に落ち『妖獣』という新人類の世界に変わる』
「『妖獣』が新人類?」
『彼が今までこの街を支配していたのは『妖獣』を量産できる世界を構築するため。この町は始まりの実験場に過ぎない。彼の計画はついに実行し始めた。大規模な魔力駆動システムを起動させて世界に『妖獣』の変貌するウィルスナノチップをばらまく』
「っ!」
それは木藤社長の陰謀だった。
彼は街を滅ぼすのではなく新人類を作るつもりでいる。
でも、なぜか。
「いったいどうしてそんなことをするんだよ!」
『同胞だから。木藤栄治は『妖獣』。それも最強最悪の。私たちの両親が誤って作ってしまった『妖獣』。人間に化けて生活できる『妖獣』。彼は自分を王とした『妖獣』だけの世界を作るつもり』
「あいつが『妖獣』だって? 馬鹿な」
『思い出せないのね、まだ。私たちが研究所で見たあのおぞましい光景を』
「え」
勇気はどこから響いてくる姉の声に言われ、過去を振り返って思い出す。
研究所で泣きわめいた幼き自分。それを支えた姉。そこにはもう一人何かおぞましい怪物がいた。
そいつは両親を――
「あ、ああ……」
そうだった。
どうして今まで思い出せなかったのだろうか。
『いい? 今は私よりも管理システムを優先していきなさいユーちゃん』
「姉ちゃん、でも!」
『お父さんとお母さんの研究を悪に染めないで』
「っ!」
その言葉はユウの言葉に強く響いた。
『今、私はこの研究所の管理システムの一部を乗っ取って話かけてる。だから、私が誘導するからそれの通りに行きなさい』
すると、ユウの目の前にある電子扉が開かれた。
それは道を示す合図だった。
「わかったよ、姉ちゃん」
ユウは機械の手足を使い駆けだした。




