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支配される街

 呼応したガバメントが発生させた音波はドローンの身体である彼女と半径2キロ圏内にいた『妖獣』の身体に影響を与えた。

 ドローンはあらゆる精密な中枢機関にエラーが発生し始め視界がブラックアウトする。

 そのまま、身体は徐々に動かなくなった。『妖獣』は突如として聞こえてきた周波数の音により、鼓膜が破られて頭が破裂していった。

 隔離区では突如として起った『妖獣』の爆発がどういうことなのかと戸惑いが及んだ。

 その音波の発生源がまさか2キロ先の隔離区と富裕区を隔てている境界線の入り口で起っているなどとはわからない。

 ユウは重なり合っていたガバメントを離し空へ銃口を向け引き金を引くと火と水の弾丸が放たれて空に撃ちあがる。

 それらはまるで花火のごとく爆散して地上へ向け飛び散った。

 飛び散った弾丸の破片は音波によりダメージを受けた『妖獣』とドローンのもとへ到達する。

 目の前にクズ折れて動かなくなったドローンに火の弾丸の破片が着弾すると死体を燃え上がらせて炭化していった。

 他の地点では水の弾丸が『妖獣』を溶解させて跡形もなく消えさせていく。

 それはまるで死体を除去する弾丸の虫であった。

 ユウの目の前に跡形もなく消え去ったドローンのなれの果てを見て目じりに涙を浮かべた。


「先生、あなたをこうした奴の首を絶対に打ち取ります」


 黙祷をささげるように目をつぶるユウの通信端末が鳴り響いた。

 通信端末を起動すると通信許可と言うポップアップ表示が出たかと思うと即座に大画面で空間にレナの映像の表示が出てきた。


「レナ」

「ユウ、よかった! やっと通信もつながった! 今すぐそこから逃げて」


 その時、上空から複数のヘリがこちらに向かって近づいてきてるのがわかった。

 さらに隔離区側から機械の駆動音も聞こえてきて嫌な空気を敏感に感じ取る。


「自衛隊が『黒衣者』を捕縛する任務を始めた。今回の騒動の容疑者指定された!」

「なにっ!」


 黒衣者とはユウのこと。

 ユウはすぐに元来た道へ引き返し移動を始める。

 裏道に身を隠し、黒衣者である姿を解き、『成城ロイヤルガーディアンスクール』の一人の学生姿になり替わると大通りへ出た。

 そのまま駅の方に向かい歩いた。


「おい、君! 外出は禁止だぞ! ココは危険だすぐに避難区域に行きなさい!」


 中央通りの広場で自衛隊員と遭遇する。

 無線では「『黒衣者』の反応を認知。すぐ全隊員は反応地点に向かえ」と聞こえてくる。

 ユウはそっと足を後ろへ下がらせて彼から逃げるように走って行った。

 自衛隊員が何かを叫んでいたがユウはかまわず家へ急ぎ向かった。


 ******


 ユウが自宅について早々にレナから告げられたのは衝撃的な内容だった。

 数分ほど前に、自衛隊は上の命令によりこの『黒衣者』を要注意人物として捕獲すること。

 さらに、隔離区全域に『妖獣』を密集させるということだった。そのあと、隔離区は完全に閉鎖させ富裕区との境界を無くしてしまうということであった。


「なんで、そんなことになってるんだよ!」

「木藤の仕業。どうしたかわからない。外部政府のトップに言うこと聞かせて自衛隊も使役しはじめた。もう、実質この街が木藤栄治の思い通りにある」

「ぐっ」


 悔恨が混じってユウの表情は歪む。

 今までも木藤と言う男が政治的支配を握っていたがそれでも政府や警察と言う法律を守る立場の者がまだ民間人の自由を守っていた。

 悪徳な財閥、政財界の監視者である久遠時名花という人物もそれに大きな貢献と影響を与えていたのも大きい。だからこそ、彼の完全な独裁支配権ではなかった。

 だが、現状は法を守る立場の人間はことごとく消され、木藤を邪魔する派閥は今やおらず、街は彼の独裁支配権になっていて実験場のようなものである。

 そもそも、『妖獣』と言う存在が彼が生み出していたこと。さらに、ドローンは『妖獣』を生み出すために素対を探すためのパトロールと言う警備ロボと言う偽りの仮面をかぶった拉致する機械だ。

 なぜ、『妖獣』を大量に生産していたのかさえ分からない。


「レナ、そういえば茜さんはまだ眠ってるのか?」

「うん」

「そうか」


 ユウは自室の方に向かい歩いて扉を開いて中をのぞく。

 額に包帯を巻き、頬にガーゼを張った姿で寝込んでいる彼女の姿は痛々しい。

 ユウはあともう一人いないことがわかった。


「そういやぁ、崎守さんも見当たらないがどこだ?」

「……銃器の改造、ユウに任せたと書置きを残して外へ行ったよ」

「なにっ!? どうしてそれを先に言わなかった!」

「だって、ユウの身の安全の方が私には大事だもん」


 レナの思いやる気持ちもわかったが完全に街が木藤の支配権にあるとすれば警察の捜査官であり、あの現場の状況と真相知ってる彼女が外に単独でいることは危険だった。


「武器なんか渡すんじゃなかった」

「でも、彼女の身の安全を守らせたい気持ちで渡した」

「そうだが、結局それで彼女は暴走した」

「したけど、彼女の居場所は特定出来てる。それに街で単独ってわけでもない」

「どういうことだ?」


 レナがノートパソコンの画面を見せた。

 画面にはマップが表示されそれぞれ赤と青、緑の3種の点滅がある。

 赤は『妖獣』、青は『ドローン』、緑『人』という区切りのようだった。

 彼女がキーボードを操作すると点滅マーカーの横に英文字表記が出てきた。

 緑の一つに『SAKIMORI』と書かれているのを見つけた。しかし、その周囲は安全ではない。複数のドローンが徘徊しているではないか。


「おい、単独ではないって単独で動いてるじゃないか! それに、危ない! ドローンが――」

「大丈夫、このドローンはハッキング済み。AIのシステムをジャミングし私の支配権に移した。それにこのドローンは人と混じりあった特殊ドローンではない」

「なに?」

「私も個人的に戦ってた。現状、20基ほどのドローンは私の支配権にある」

「じゃあ、俺もあの時助けろよ!」

「それは無理。さすがに自衛隊の数は尋常じゃない。それにハックしたことがばれかねない」


 レナの言い分は正しく、最も合理的な考え方。あの場ではたしかにドローンでユウを助けるよりも、ユウヘ自衛隊が来ることを知らせてあげて逃げるように言う方が最適だ。

 ユウはその考えがわかるとレナへ謝罪をししぶしぶと腰を下ろした。

 テーブルにあった一枚のメモ用紙を手につかむ。


「これが残したメモか」

「そう。そこに、配達場所が書かれてる。このマンションの出入り口にトラックが止まってたはず。それに銃器が積み込まれてるという話」

「そういえば、ここに来る途中で確かにみた」


 ユウは記憶を掘り起こしてマンションの出入り口に確かに一台のトラックがあったことを思い出す。


「ただ、どうする? あのトラックから銃器をここにまで持ち運んでくるのはさすがに苦労する」

「そこで、私の出番。私が支配してるドローンを何機か移動させる」

「おいおい、大丈夫なのか? ばれたりしないのか」

「大丈夫。偽造のGPSマーカーを送ってる。私が支配してるドローンは現在がすべて隔離区で活動中という認識になってる」

「そうか。なら、ドローンに任せるか。でも、その前にまずはトラックを駐車場に移動させるか」



 *******


 マンション前の通りにあるトラックのドアはロックされておらず運転席には簡単に乗りこめた。

 鍵も刺さったままでありすんなりとエンジンをかけ地下駐車場に移動させる。

 駐車を完了し、降りるとばったりと最悪なことにマンションの管理人と遭遇した。


「ん? おい、おまえさん今運転していなかったか?」

「え? 運転? 何言ってんすか。運転なんてできませんよ。学生っすよオレ」

「そうだよなぁ、あはは」


 管理人の険しい目がしばらく感じたが管理人は駐車場からいなくなった。

 そのタイミングで素早く荷台から箱詰めになった銃火器をおろしていく。

 さすがに総重量は半端じゃない。

 黒衣者として鍛え上げても腰に来る。

 駐車場に複数の機械の音が聞こえてきた。

 駐車場の出入り口側を見てみると3基のドローンが入ってきた。

 ドローンであるにしても、このドローンはある意味でロボットに近い素対だ。

 ドローンの上に銃火器の箱を載せて持ち運んでもらう。

 通信端末を使い、運べたかどうかを地道にチェックしながら数時間の経過を経てどうにか、無事配達が完了する。


「よし、あとは銃器を改造だ」

「それはいいけど、ユウ、雪菜と連絡取れた」

「っ!」


 ユウはレナのそばに慌てて駆け寄ってレナが手渡したインカムを受け取る。


『もしもし』

「崎守さん! 大丈夫か!」

『うるさいわね。平気よ。そっちこそ生きてた様で安心したわ』

「ああ、生きてるさ。まだ死ぬわけにもいかないからな。それで、今そっちはどこにいるんだ?」

『隔離区。今隔離区は凄いことになってるは。あちこちで『妖獣』が人を食って、ドローンが死体を回収してる。自衛隊はまるで機械のようにドローンの援護や『妖獣』の捕食されたりしてる』

「は?」


 後半の部分は何かの聞き間違いかと思った。

 捕食されたりしている。

 つまり、自ら食べられに言ってるということを言っていた。

 考えられないことに冷や汗が流れ出して生唾を飲み込んだ。


「何かの冗談か?」

『冗談? はは、どれだけこの事態が冗談であった方がいいか。地獄絵図よ。隔離区は元々ひどいとは思ってたわ。だけど、もっとひどい。周りは死体だらけ。それに、木藤の存在も見つけたわ』

「なに!?」

『木藤は隔離区の奥地にある場所で何かをしてるみたい。私はこれからその木藤を追跡しようと思う』

「おい! 単独で行動はよせ! 一度戻って来い!」

『え、やば! ごめんなさい! またあとで!』

「おい、崎守! 崎守さん!」


 それ以降通信はつながらなかった。

 画面上では彼女のマーカーが隔離区内の地図で動いてるのが視認できる。

 だが――


「え」


 そのマーカーが突然と消えた。

 ユウが焦ってレナに言うとレナは急いで操作を行い始めた。

 しかし、結果は追跡不能となった。


「うそだろ」


 まさに最悪の知らせであった。

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