過去の真実 前編
隔離区と富裕区。
それの違いとは貧乏人と犯罪者の巣窟か金持ちの巣窟かの違い。
現在、この両区画が現存している街全域では多くの民が『妖獣』の襲撃にあい逃亡し続けている。
突如として、昨晩から富裕区の繁華街に押し寄せてきた『妖獣』の大群。
次から次へと『妖獣』の脅威にさらされていく市民は『誰かー! 助けてくれー!』と泣きながら助けを呼ぶ。警察の動く気配はない。市民はそのことに気づかず次から次へ繁華街の死体と化していく。
報道機関はこの事態を報道して警察が動いていないこともすぐさまにリークした。その理由がまさに衝撃的だった。
警察は『妖獣』の大群出現地点ポイントで全滅をしたということだった。
すぐさまにそれらは報道され避難した市民は絶句する。
さらに、外部から自衛隊の派遣。しかし、彼らの武器は『妖獣』に一切効果ない銃火器。今の世の中では自衛隊と言う存在はこの街には必要はなくドローンと警察が市民の安全を守っていた。
でも、現状その二つの守衛組織、機械は『妖獣』を庇っては人を拉致して暴走状態、警察は壊滅状態にあるとなっていた。衛星カメラでその事実を知って自衛隊が派遣されたのもうなづける。
彼らは銃器を手にして『妖獣』と対峙したがただの銃ではやはり歯が立たず彼らはなぎ倒され防戦一方状態に陥った。
「退避―! 全軍退避―!」
指揮官の命令で事態は全軍撤退。
マスコミはさらにこの事態を報じた。
市民の怒りと嘆きは強まった。
政府機関はなにをしているのか。
そのころに街の政府機関は手を打ってはいない。
なぜならば、街の政府機関はこの騒動の側であるのである。
それを知ってるのか知らないあのか。
市民はそれでも街の政府にしがみついている。
外部の自衛隊では当てにならないからだろう。
「何たることでしょうか。自衛隊は撤退し我々市民を見捨てています。さらに、街の政府は音信不通でありドローンは市民を拉致しています」
「おい! 『妖獣』が来るぞ!」
「え」
一人のニュースキャスターが報道をする最中にカメラマンの一人が奥の方を見て叫んだ。
ビルの合間から巨大な全長20メートルくらいの大きさの四足歩行のトカゲのような図体をした『妖獣』がすごい速さでやってきていた。
彼らは叫びながら逃げる。
「みてください! あれが『妖獣』です! 市民の皆さんは安全を――きゃっ!」
ニュースキャスターは転倒した。カメラマンは彼女を置いて逃げてしまう。
彼女は怒鳴った。
「私を置いてくな! ひっ!」
『トカゲ妖獣』が彼女を前に舌を突き出した。
「ぎゅぉおおおお!」
「え」
颯爽とキャスターの前に黒衣を纏う一人の男が現れた。
彼はトカゲの舌を切り裂いた。自らの手にした刀には血がべっとりと付いている。キャスターは彼の背中を茫然と見続けた。
彼は疾駆する。『妖獣』の身体を幾度も切り裂き止めに旋回して引き抜いた拳銃の引き金を引き『妖獣』の脳天は弾け飛んだ。
ニュースキャスターの脳裏にはネット上のある噂が想起した。
「黒衣者……っ」
キャスターはすぐにニューワーカーを操作したがカメラ機能は作動しない。さきほど、カメラマンが撮影用に使っていた器具も旧世代の器具である。
キャスターはやはり撮影はダメかとあきらめる。
「もう! ちょっと、今いいところで――あ! 待って!」
黒衣者はキャスターの傍を通り抜け去ろうとする。
キャスターは彼の肩を掴もうとする前に彼はその手を掴んだ。
「さっさと、この場から消えろ。報道してる暇がるなら避難区域に移動しろ。命が惜しければな」
「あ、あなたのことを世界に伝えさせて! 今のはなに!? どうやって『妖獣』を倒してるの!」
「俺のことを伝える前に世界に真実を報道しろ。『cyabrz社』が今の騒動を引き起こしたとな。昨日、cybarz社が開催したパーティーで『妖獣』が野に放たれた。この街の警察機関はそれで全滅した。警備に当たっていたばかりに殲滅されたんだ。さらに言えばドローンは現在何をしている? 市民を拉致してる。それが『cybarz社』の闇だ。もし、あんたが報道の力で戦いたいなら今言ったことを報道するんだな。俺は先を急ぐぞ」
「ちょっ! まっ――」
キャスターが続きの言葉を言う直前に煙が充満した。
その煙はキャスターの視界を奪った。
煙が晴れた頃に黒衣者は消えていた。
キャスターは足元に何かが転がっているのを見つけた。それは録音機材だ。
「なにこれ。ん? これ記録されてるわ」
中身を聞いてみると先ほどの会話が録音されていた。
「これがどれだけ周りが信じてくれるかは分からないけど」
ニュースキャスターで報道アナウンサーである彼女は一つの決断をする。
すぐに避難場所に向けて走った。
******
黒衣者、黒木勇はキャスターを助けた後に隔離区に向かう。
もしかすれば、また『妖獣』を使い『cybarz社』が誰かを拉致してることも考えた。
経緯から察するに『cybarz社』は身寄りのなくはぐれ者の隔離区住民を使った人体実験を繰り返しているはずであり今に乗じてもっともそれを楽に行えるのは隔離区である。
「やはり、増えてるのか?」
『うん、隔離区からどんどんと『妖獣』の反応が増えてる。あきらかにおかしい。富裕区からは反応は一切なくなったけど』
「わかった」
あれから、一晩明け明朝。
ユウは家を飛び出してから富裕区の『妖獣』を狩りを開始した。
富裕区で最後の『妖獣』は先ほど始末し終えたというわけであった。
そうする中で気付いたことが『妖獣』の動きである。
明らかに彼らは『富裕区』に向けて動いておりさらに『富裕区』にいる『妖獣』の数は明らかに少なかった。
最初はかなりいたように感じられたがレナからの衛星カメラを使った調査によって判明した『妖獣』の反応区域。それはおおよそ『隔離区』に向けて集中し始めていた。
「レナ、雪菜は銃器を集めてくれているのか?」
明朝によって、雪菜も銃器を集めに外へ出回っている。
『うん。もう少しで完全に集まるみたい。それと、ユウ』
「なんだ?」
『先ほど、マスコミがテレビ回線ラジオを使ってユウの告白を流した。実際市民の反応はまちまちだけど『cybarz社』の社長失踪、ドローンの拉致問題が大きな起因になって信じていく人も増加してる。今避難区域を防衛してる自衛隊と反乱デモ抗争が起ってるけど』
「そっちは外部の政府に任せよう。まぁ、デモが起ることは承知してやったことだ。後始末や被害が拡大ならぬようにするのは外部の政府の仕事だ。外部の政府が街の政府の悪事を暴けばいいさ」
『そうだね。でも、うまくいくかな』
「行くことを願うしかない。それよりも、『妖獣』は近くにいるか? それと木藤親子の所在はつかめたか?」
『まだ……ユウ、止まって!』
急な静止命令にユウは立ち止った。
隔離区と富裕区の仕切りのあるフェンスの手前だ。
「どうした?」
『生体反応。微弱だけどあるよ。これ、人間のもの』
「なに?」
ユウは周囲を確認した。
ここら辺は更地ばかりである。そもそも、仕切りの空間であるので建造物は特にないのも当たり前だった。
なにも見えないのに一体誰がいるというのか。
「おい、誰もいな――」
頭上からの気配に飛びのいた。
先ほどいた地点に何かが降りた。
土ぼこりが舞い、その存在は視認できない。
「なんだ?」
『ドローン反応』
「あ? さっき人間って――」
『人間の反応もある。このドローンは突然出た』
「はい!? んだよそれ!」
煙の中から現れたドローンを見てユウは息を呑んだ。
そのドローンは人型をしている。頭に位置する個所には透明ガラスの球体グラスカバーがとりついている。その中には人間の脳。さらに、胸元には人間の心臓と思われるもの。
他は腕や手足は肌色で皮膚のように見えるが肝心の頭や心臓の部分だけがむき出し状態である。
「なぁ、レナ。一つ聞くがドローンの反応と人間の反応は別じゃなく一緒という線はないか?」
『え? たしかに同じ地点に反応はあるけどそれはない。二つの反応がしっかり映ってる』
「なら、たとえばの話だ。ドローンと人間が合体した場合反応はどうなる?」
『どういう意味?』
「今目の前にさ、それらしい不気味なドローンつうか、ロボットがいるんだわ」
ユウはレナとの通信を終える。
レナにもらっていた通信機器をオフにしてスッと目を細めた。
ドローン人型のあちこちには既視感覚を感じた。
不気味なドローンは腰に取り付けた弾道ミサイルを射出する。
ユウに向けて明らかに放たれたミサイル。ユウは銃撃して撃ち落とすと爆発し爆風に吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
どうにか吹き飛んだ身体をもちなおして体勢を立て直すが眼前にいたはずのドローンは消えていた。
急に暗がり始めた視界に頭上を見上げた。
「ロボットってのは訂正。ドローンだわ」
背部から翼のようなものを生やしてそこにはプロペラがしっかりと装着されていた。
ドローンは手足のハッチを開くとそこから追尾ミサイルを射出した。
「くそがっ!」
もう一度射撃するが追尾ミサイルには防衛シールドつきである。
弾丸は弾かれ無数のミサイルがユウを襲った。
「ぐがぁああああああ!」
ドローンは倒れたユウのそばに着陸して埋もれた血みどろのユウを掴みあげた。
「セイチョウシナイコハキライトオシエマシタヨ」
「っ! そ、その声……」
その声には聞き覚えのある懐かし身を感じる。
「どうりで見覚えのある手足だったわけか。そういえば、『妖獣』にもさ懐かしい品が混じってたんだよ」
「ソレハソウデス。ワタシトオナジヨウニインノセイトミンナカレニスクワレイッショニナレマシタ。ビョウキガチダッタワタシモイキカエラセテトイウネガイヲキキトドケテクレマシタ」
「んだよ、それ、先生なんでだよ。どうしてそんなこと願ったんだよ!」
ユウの前にいたドローンは子供のころにユウがいた『数馬孤児院』の先生であった。




