『妖獣』の奇襲
街の管理システムを牛耳り、運営し作り続けてる会社の社長、木藤栄治は息子、木藤正義を連れて裏庭にテレポートした。
テレポートできたのは地下に作った手レポート装置のおかげだ。
栄治は息子、正義が担いだ女を見て、息子の好みにはあきれ果てていた。
このような高飛車なお嬢様のどこがいいのか。
息子は研究所でこの女を改造する気満々でいた。栄治の血を引いた息子正義も生粋のマッドサイエンティス。
人体を改造することに興奮する性癖の持ち主だった。特に息子、正義は容姿はいいのでこれまで言いよってきたたくさん女たちを毒牙にかけてきた。それも残忍な方法で。
正義は生きた人間が嫌いだ。
だからこそ、その気に行った者を自分好みの機械人形へと作り変える。
そして、また彼女もその毒牙にかけるつもりなのだろう。
父を失ったばかりの女、星宮家の令嬢は意識が混濁しており、虚ろな表情が目立つ。今は鬱状態だ。
それが幸いして連れ出すことには手間取らなかった。
「止まれ、息子」
「ん? 父さんなんだよ。僕帰って早くこの人形を改造したいんだけど」
「それなら、まずは父さんの研究成果を見て言ってからでも遅くはないだろう。ここにはこの町の全警察機関が来るように手配済みなんだ。これがどういう意味かわかるか?」
「んー? どういうこと?」
「本日をもって大掛かりな世界奴隷化計画の進行を進めることができる。その為には警察機関は必要ないからな」
そう言うと、木藤栄治はこの屋敷と言う名の『第1研究施設』のある収容の解除ボタンを押した。
「父さん、それって『妖獣』を閉じ込めていたボタン? 危ないんじゃないの? 『妖獣』が外に出てきちゃうじゃん」
「それでいいんだ。そもそも、計画が次期最終段階に入る。今日はそのための主催パーティーだったんだ。この元黒木の屋敷の研究所でやることはなくなった。廃棄処分する。証拠隠滅とともに今ままで協力してくれた財閥者の駆逐も行うからいいんだ。運がいいことに『黒衣者』も釣れた。おかげで苦労せず済みそうだ。あとはこの駆逐作業が終わったら死体をAIロボットに回収させ、街に『妖獣』が一気に出回る。私どもは研究本部で外の街の光景を眺め得ていればいいさ。新世界を作る幕劇をな」
そう言う間もなくして木藤栄治親子らがいる裏庭の足場にある隠しハッチが開閉され、駆動音が聞こえると中から『妖獣』の収容する檻が出てきた。その檻は煙を噴出させ『妖獣』の収容した格子は吹き飛んだ。
『妖獣』は解放された喜びを表すかのような撃ち震え歓喜の咆哮を上げた。
『妖獣』が木藤親子を見てくるが木藤はもしもの時のために『妖獣』の体内にマイクロチップ型爆弾を仕込んでいた。指先一つでいつでも起爆させることができた。『妖獣』が牙をむいて迫ったが爆弾を起動させる。『妖獣』の血と肉が木藤親子と星宮早苗に容赦なく振りかかる。
木藤栄治は元々死体を背負ってるために血により汚れていたのは変わらずである。
「ちょっと、父さん!」
「あはは、すまない。主人に逆らわない化け物はいらない。さて、これを使い」
ニューワーカーを操作するとフローティングウィンドウが虚空に投影されて浮かびあがる。
そこには表の庭の映像が映った。
地面から次から次へと隠し扉が現れて『妖獣』が出てくる。『妖獣』たちは警察を襲い警察は銃一つで立ち向かう。
「行こうか」
「え? 父さんが見て行けって言ったんじゃん」
「それなら、もう見ただろう。それに、ココで見続けなくてもいい」
「あいからわず勝手だな、父さんは」
木藤親子はそれぞれ星宮親子をひきつれ裏庭の森林地帯へ入り、その姿を夜闇に溶け込ませて消えていった。
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数時間前にちょうど、崎守雪菜は黒木勇を見送ったばかりだった。
そうした時に会場内から叫び声が聞こえた。
雪菜たち警察は総動員で屋敷に入ろうとするもガードマンが通さない。
それにより、警察斗ガ-ドマンのお試合が始まっていた。
現場ではその状況に対して加担せず後方で待機を命じられてる雪菜はむくれっつらであった。
「あんま、怖い顔してっと将来しわが早い時期から出てくっぞ」
「余計なお世話ですよ巡査部長」
崎守雪菜に声をかけたのは50歳をすぎた革ジャンを着こんだこわもて面の白髪頭の男、藤崎元であった。雪菜の上司であり巡査部長である彼。
今回もこの警戒監視をする任務の責任者として任され現場の指揮を執っていた。
だが、指揮を執るということのほどでもない今回の仕事に彼は心底疲れきったような表情を浮かべていた。
「先方からの依頼で今回のこの任務をしてるが俺もどうも気にいらねぇ。さっきから、中に入れてくれやしないのがいい結果だ」
「ですね。だからこそ、むかつくんです」
「わかるけどよぉ。あの木藤とかいうお偉い社長様は何を隠してるんだろうかね。屋敷の中に入れないとか明らかにそうじゃねぇか。あの中で何をしてんだかねぇ」
「……」
「おまえさ、あの社長のこと調べてんだろ?」
「ええ。いろいろあやしいことが多いんで」
「まぁ、わかるけど、無駄なあがきだ。やめておけ」
「っ! なんでですか!」
「知ってんだろ。あの社長はこの街を牛耳てるも同然だ。俺らが扱ってるこのニューワーカーにしろ車の搭載されてるカーナビにしろ、ココを監視するシステムにしても、それにこの拳銃などにしてもそうだ。全部、あの会社が管理してるもんだ、銃器だって現代では電子機器を用いて電波塔の役割を担うシステム母体とつながって始めて使える。自動で照準を合わせるAIシステムが入ってるわけだしな。さらにいやぁ、電子機のメーカーとか交通整備システムとかああいうのにも奴らはかかわっちまってる。街の支配者も同然な存在に近くなってる。奴らが不穏な行動を起こしてもこっちは手出しできねぇんだ」
巡査部長の言うようにこの世界の何物にでも電子機器が加えられている。
だからこそ、世の中が電子化世界の時代なんて言われていた。
銃器も扱えてるのも彼らが開発してくれたからであり、警察がこうして武力を持てるのもそのおかげあってだ。
「ん? なにか、騒がしいな」
騒々しい屋敷の方を巡査部長は見た。
すると、屋敷の扉が開かれて中にいた人がこぞって出てきた。
全員が慌ただしい様相をしていた。巡査部長は客人に掴みかかる。
巡査部長が慌て、その元へ駆けこんだ。
「どうしたんですか? 中で何が?」
「警察はなにをしているんです! 中に銃を持った男がいるんですのよ!」
それを聞いた巡査部長が中に入ろうとしたがそれを阻むのは屋敷のガードを任されてる例の『木藤栄治』直属のボディーガードマンだ。
「おい、拳銃を所持した男がいるというなら警察の領分だ。通させてもらう」
「ダメデス。ココカラサキハキョカナクタチイリヲキンジマス。ケイサツカンケイシャモトオスナトシャチョウカラノメイレイデス」
まるで、機械質な声でしゃべるガードマンに雪菜は不審な目を向けた。
わずかに、瞳に光彩とは別の光を見た。
それは機械がはなつ鋼鉄の光。
彼らが機械だと気付いた時に背後から駆動音が聞こえた。
「おいおい、次はなんだ?」
巡査部長も不安な表情で見つめた。すると、屋敷全体の芝生が隠しハッチの存在をあらわにして、扉が開くと中から『妖獣』が出てきた。『妖獣』は鉄格子の牢屋に入っていて出ることはない。
ほっとしたのもつかのも煙が立ち込めた。
警察官全員が一斉に拳銃を引き抜く。煙の中から遠吠えが聞こえた次の時、警察の一人が『妖獣』に飛びかかられた。ライオンのような姿をした鋼の四足歩行の獣に噛まれながら絶叫を上げながら拳銃で必死に対抗していたが身体に傷一つさえつけられない。
「全員戦闘準備!」
巡査部長の一声で全員が『妖獣』と乱戦を始めた。
雪菜も拳銃で対抗するが『妖獣』に傷などつけられるはずもなかった。
雪菜は悔しさをにじませた。
「おい、崎守。おまえはこの現状を確実に知ってるであろう社長を探して来い。多分、中にいるはずだ!」
「巡査部長は!?」
「俺はこの現場の責任者だ。一般人に被害が及ばないように守るのが役目だ。それに、みろ」
巡査部長が傍らで沈黙したままの『木藤栄治直属のガードマン』を蹴飛ばした。
それはまるで、微動だにしない。眠ったような状態だった。
「コイツら、『妖獣』がでた途端に動かなくなりやがった。なんか、裏があるぞ。行け! 奴を探せ! ここでこの状況を食い止めないと街は悲惨な結果を迎えるぞ!」
「わ、わかりました!」
雪菜は巡査部長の命令を受けて屋敷の中へ入って行った。
パーティーが行われていたらしき観音扉式の大広間の部屋に入ると異質な光景を目にした。
「ここで本当にパーティーなんてあったの?」
そこには一人の死体が転がっていた。
『株式会社フィジアーク』の社長だ。
吐き気を堪えて散策すると、正面側に異質な出入り口扉を見つける。
「あれは?」
雪菜はその扉を見つけるや急いで走って中に入って行った。




