第3話 アレ
本日4話目
父親は視察に出て、母親はリビングでゆっくりしている。他の使用人も仕事でリリィの目的地からは離れている。
「ここか?」
「はい。御主人様のコレクションが置いてある部屋になります」
「よし、ここにある筈だ」
アレを見つける為に、父親のコレクション置き場になっている、地下の部屋に入っていく。父親は珍しい物を集めるコレクターであり、ゲームで摘発された物が、ここにあるのは間違いない。
あの性格だ、知らずに買ってしまったんだろうね。
優しい性格をしているあのルードが、国から摘発されるような物を知って買うはずがない。つまり、騙されて買わされたか、価値を知らずに買ってしまったのどちらかだろう。
まぁ、持っているだけで公爵の地位を剥奪に、国外追放になるぐらいだから、どれだけヤバい物なんだろうな。それを知らなかったでは済まないのは仕方がないだろうな……。
中に入ると、様々な物があり、武器から皿までも置いてあった。本棚も幾つかあり、部屋は20量ぐらいはあると感じられた。
この部屋からアレを見つけるのは骨が折れるなと思っていたら、イーナが声を掛けていた。
「あのー、ここは御主人様以外は誰も来ることはないので、見張りはいらないと思います。良かったら、アレが何なのかわかれば、手伝いをしますが?」
「うーん、見張りはいらないのはいいけど、手伝うのはなぁ……」
ここまで巻き込んでも大丈夫かと、リリィはまだそこまでイーナを信用してなかった。リリィが何を探しているかバレたらイーナが何をしてしまうか予測出来なかった。
「その様子だと、御主人様に怒られるだけで済まなそうですね?」
「あぁ、そうね。こっち側に踏み込むには覚悟が必要ぐらいにね。貴女はどうする?」
「うー、ヤバそうな気配がしますね。もし、私がクビになったら、お嬢様が雇うならいつでも着いて行きますよ?」
「安い覚悟ねぇ、こっちは命を賭けているのによ?」
「命を!? どれだけ危ないことをしようとしているんですか?」
命を賭けていると言われたら、驚くのは仕方がないだろう。その驚きから手伝わないのは予測出来たので、見張りに戻れと命令しようとしたが…………
「わかりました。手伝いますので、アレが何なのか教えて下さい」
「……は?」
反対に驚いてしまうリリィだった。まさか、手伝うと言われると思ってなかったのだ。
「お嬢様が何をしようとしているかわかりませんが、とても大きなことをしようとしているのはわかります。命を賭けているぐらいなのですから、危ないことでヤバいのは間違いなさそうですが…………私も巻き込ませて下さいね」
「……なんで、そこまでする必要が……」
リリィはわからなかった。こっちを手伝う理由、危険だと察知したのに巻き込まれようとしているのか。
「私は、お嬢様が思っている程に良い子ではありませんよ。家に反抗していましたし、学園で虐めもしていた経験があります。悪いことが楽しいと思ったことが沢山ありましたし……あ、皆には秘密ね」
「あぁ……、理解したわよ」
たった今、目の前にいるイーナとゲームのイーナと重なった瞬間だった。元からイーナは悪い側だっただけのことだった。しかも、悪いことが楽しいと思っているぐらいには手遅れなんだろうなと思うリリィであった。
「覚悟があるなら、いいわ。私が探しているアレとはーーーー」
国から所持するだけで摘発される程の危険な物とはーーーー
「禁書、国から禁止にされた禁術が記されている本を探すのよ」
「ーーーーーーーーえ?」
「聞こえなかったかしら? 禁書を探しているわ」
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉ!? ちょっと待って!? そんな物がここにあるの!? って、なんであるのを知っているの!?」
「ちょっ! は、離して!?」
予想してなかった言葉に眼を大きく見開いて、リリィの肩を揺らしながら質問を繰り出していた。
「はっ!? す、すいません……」
「ふぅっ、何故、知っているのかは秘密。だけど、ここに禁書があるのは間違いないわ。確か、魔法類が書かれている禁書の筈よ」
「ま、魔法類ですか……、なんで御主人様が持っていたか知りませんが…………、確かにここから探し出すのは大変そうですね」
この世界には、魔法がある。魔法の力を育てる為の学園もあるぐらいに流通している。
だが、魔力を持っているのは殆どが王族か貴族で平民はあまりいない。
リリィは貴族なので、魔力持ちなのは間違いない。他にゲームでも魔法を使っているのを見たこともある。
まだ魔力と言うものが理解出来なくても、後からわかればいい。
とにかく、普通では破滅から逃れないから特別な力が必要だ。それが、禁止された力であってもだ。
「よし、探すぞ!」
「はぁい」
手分けして、禁書を探していく。摘発されたのは見たが、その禁書が何処にあるかは、コレクションの部屋までしか知ることが出来なかった。
ここからは、手探りで探すしかなかった。
ゲームで見た禁書は珍しい紋章が表紙に描かれていたから、時間を掛ければ、見つからないことはないだろう。
「お嬢様ー、これですか?」
「ん? 違うね。表紙に珍しい紋章があるから、それを目印にして」
「それを先に言って下さいよー」
そう言って、本棚を物色していく。本棚が沢山あるから、見つけるのは大変だなと思いつつ、探していたらーーーー
「…………ん? これは!」
「見つけましたか!?」
「い、いや……、これが父親の趣味なんだなと思って……」
「それは! まだ子供には早い物です!!」
そう言って、慌ててリリィから取り上げる。リリィが手にしたのは、父親の趣味がわかる…………エロ本だった。
「もうっ、これはこっちで処分しておきますねーーーーいえ、奥様に渡すのもありかな」
「止めてあげてよ。その趣味は母親にキツイよ……」
「趣味って、よくその意味を知っていますね? 本当に5歳ですか、お嬢様は?」
「今は、そんなことより探すわよ! 貴女の方が良く知っているでしょ?」
「まぁ……、5年間一緒にいましたからね……」
ブツブツと言いつつも、手を動かして確認していく。このペースなら、ルードが帰ってくるまでには見つけられるだろうと思った先にーーーー
「おっ、あったあった」
あっさりと見つける事が出来た。ゲームで見たのと同じ紋章が描かれており、手に取ると特殊な気配を感じた。
「これが禁書……」
「うん? 普通の本っぽいですね」
「そういえば、これがここにあるなら、父親も読んだことがあるんじゃ?」
「えっと……あー、読めませんよ。知らない文字だらけで、多分、御主人様も読めなかったと思いますよ。お嬢様が天才であったら、数十年を掛けて解読出来たかもしれませんが……」
イーナが禁書を開いて、読んでみようとしたが、読めなかった。その文字は古代語であり、どの国の言語さえもわからなかった。
だが…………
「え、カタカナ?」
「えっ?」
「読めるわ」
「ええっ!?」
リリィには読めた。というか、何故か全てがカタカナで書かれており、まるっきり日本語であった。
「お、お嬢様!? よ、読めるんですか!?」
「うん……、読めるね。ん、『反逆の書』と書かれているわね……」
この本は『反逆の書』で、反逆魔法と言う魔法の指南書に見えた。最初の注意ページで、全て解読して、最初に読めた者だけが手に入るようだ。
読み終わったら、その本に力が無くなって禁書ではなくなる…………と書いてあった。
「部屋に戻ろう。もう用は済んだから、ここにいる必要はないわね」
「はぁ」
なんで、解読もせずに読めるのか疑問だったが、今はルードが帰ってくる前に退却する。
まだ続きます!