第22話 四死魔将 後半
本日1話目
「ぐがぁぁぁぉぉぉーー!! や、やりやがったな!?」
「ほぅ、見えない剣を避けるとはな。流石、四死魔将の1人だと言うべきか」
エリーナは一撃で頭を真っ二つに斬り捨てるつもりだったが、ギザエルは魔力の揺らぎを感じたのか、咄嗟に左へ動いていた。
致命傷なのは間違いないが、まだ死んでないから戦争は終わらない。
「ふぅっ、やはり消耗は酷いですね」
「戻りますか?」
「いえ、まだ大丈夫です」
「き、貴様! お前の力は禁書から手に入れたな!? 天罰魔法は聞いたことがないぞ!!」
天罰魔法、ギザエルの言う通りに禁書の力であり、それが王族の者が読んでいる。普通なら禁書を持っていただけでも、国外追放になり、読んで力を得たら処刑という厳しい刑を与えられる。
なのに、第二王女はそれを使っていて、処刑されてない。
「私は禁書の力は使う人によって、善にも悪にもなるわ。私は正しいから、処刑されない。当たり前のことでしょう?」
「かっ、禁書を読める奴は心が歪んでいると聞いたことがあるぜ。貴様は歪んでいないと言えるか?」
「貴方と話すのはつまらないわね。わかりきっていることを聞くもの」
エリーナは話を止め、再び『絶断』で頭を落とそうとしたが、ギザエルの言葉に止まってしまう。
「くくっ、俺の兵隊がこれだけだと思ったか?」
「…………」
「別行動している魔物がいる。それが何処にいるか気にならないか?」
「戯言をーー」
「あはははっ! 戯言だと思うか!? ここの反対側だ。そこには5万の魔物を準備したぞ!!」
「ッ!」
ギザエルが嘘をついてないのを感じ取ったのか、エリーナは背中に冷や汗をかいていた。このままでは、街に被害が出てしまう。ここにいる兵を半分に分けて、行かせないと駄目だと指示を出そうとしたがーーーー戦争に参加していなかった別の魔人が慌てて叫んでいるのが聞こえた。
「ギザエル様ッ!! だ、駄目です! みんな、やられています!!」
「…………は?」
全滅の報告にギザエルは信じられないような表情で報告に来た魔人に詰め寄っていた。
「だ、誰がやった!?」
「わ、わかりません……、私が向かった時は既にやられていました! 殆どが雷と氷にやられた様な跡が残っていました!!」
雷と氷? とルードは1人の娘のことを思い浮かべていた。クリスも驚いたようにルードの方を見ていた。
(どういうことだ? 魔王とは無関係だった……?)
ルードは魔王の部下が攻めてきたタイミングと重なったことにリリィは魔王と繋がっている可能性を捨てきれなかった。だが、その報告で反対側に配置していた魔物が全滅していることとリリィが去っていった方向と同じだ。
故に、魔物達をやったのがリリィで魔王とは無関係だった可能性が高い。
「リリィがやってくれたのよ!! 雷魔法を使っていたんだよね?」
「あぁ……、氷を吐く魔物も召喚していたな。だが、何が目的だったのかわからないな……」
何故、殺そうとしていたルード達を助けるような真似をするのか? 街全体に害を与えようとしたいわけじゃないか?
考えてもわからないままだった。
クリスの大きな声が大きかったため、エリーナとギザエルにも聞こえていた。
「リリィ?」
「貴様! 誰がやったのか知っているのか!? 俺の策を台無しにしやがってぇぇぇぇぇ!!」
ギザエルは激昂していて、ルードとクリスに魔法を放とうとしていて、隙だらけだった。
それを見逃すエリーナではなく…………
コロッ
ギザエルの頭が落ちた。エリーナは既に振り切った体勢で、誰がやったのかはわかりきっていた。
「大将をやりましたわ。後は、魔人と魔物を殲滅してやりなさい」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉーー!!」」」
ルードもまだ魔人と戦っているのを思い出し、敵を見据えそうとしたが、姿を消していて、見つからなかった。
「くっ! 逃げられたか!?」
「そっちもか?」
「え? あ、君は……」
「申し遅れた。我は近衛騎士のブルーノだ。先程まで魔人と戦っていましたが、四死魔将が死んでから姿を消しました。おそらく、死んだら転移する予定だったのでは」
「成る程。転移か、魔導具を持っていたかもしれないな……、今は魔物を片付けよう」
「承知した」
魔人は逃げられたが、魔物はまだ沢山残っている。強い魔物はギザエルが乗っていたのだけで、他は騎士が一対一で勝てるような相手しかいなかった。
恐らく、ここは囮で反対側が本命だったので、魔物の質は低かったようだ。
ルードは、反対側の魔物を倒した人が自分の娘だと信じられない思いだった。だが、リリィが去った方向、雷と氷の跡が残っていた証拠から、やはりリリィがやったとしか思えなかった。
「いや、今は魔物だ」
考えるのは後にして、残った魔物を倒していく。
今回の戦争は、人間側の勝利だった。皆が勝利に酔って祝う中、ルードとクリスは王城へ来るようにと、言い伝えがあった。これからリリィのことを話し合おうと思っていたが、王女様からの誘いでは断れないので、2人は休む間もなく、王城に向かった。
王の間まで使用人に案内されて、中に入るとエリーナだけがいた。他の者がいないことに気になったが、今に聞くことではない。
まず、跪いてからだ。
「良く来た。ここは3人だけで話したいから、ここから外れよ」
「了解致しました」
案内してくれた使用人は退場して、3人だけになった。
「まず、激励を送ろう。2人のお陰で被害が少なくて済んだ。良くやった」
「ありがたき幸せ!」
「は、はい! ありがとうございます!」
激励を貰い、御礼を申し上げた。わざわざ読んだのは、これの為ではないのは理解している。
「話は変わるが、5万の魔物を倒した存在……貴女はリリィと言いましたね? その人は誰でしょうか?」
「それは……」
「言いにくいことですか? 念の為に、使用人や近衛騎士達に席を外して貰っているので、言葉が漏れることはありません。なので、遠慮はしなくていいです」
「そうですか。それではーー」
「私達の娘です! 可愛い娘で賢いんですよ!!」
どう説明すれば、納得してくれるのか考えていたら、クリスが結果だけ言ってしまった。
「娘? 2人はまだ若く見えるのですが……?」
エリーナは娘がいても、8~10歳ではないのかと予想しているが、5万もいる魔物を倒せる訳がないと思っている。もしかして、見た目より妙齢で娘も成人しているのかと言う意味で聞いていた。
ルードは最初から説明しないとわからないので、クリスの娘自慢を黙らせて、説明し始めた。
「そういう事があったのですね……」
「はい。私はリリィのことがよくわからないのです」
「リリィが私達を殺すと言ったなんて、信じない! 聞き間違いに決まっている!!」
「クリス……」
リリィとルードが話していた時はクリスは下にいたから、何も知らない。ただ、魔物に攫われて操られていると考えていた。
「リリィね、珍しい魔法を持っているわね。知能を持った魔物を召喚し、雷魔法もレベル5は上げてある……」
「召喚魔法は聞いたことがありますが、アレは質が違っていた」
「……なら、召喚魔法は私みたいに禁書から力を得たかもね」
「なっ!?」
エリーナの推測にギョッとするルード。禁書で力を得ていたなら、リリィは帰ってきても処刑になってしまう。クリスもその考えに思いついたのか、顔を青ざめていた。
「顔色が悪いわよ。すぐ処刑するとは言ってないわよ」
「そうなんですか……?」
「リリィはまだ10歳でしょ? 10歳にしては、禁書を読める程の知識を持っているとは思えないから、私と同じ選ばれた人間なのでしょう」
「選ばれた人間……?」
「えぇ、私は天罰魔法があるのを知っていますね? その魔法は禁書から力を得ました」
エリーナが手に入れたのは、12歳。リリィの歳とあまり変わらない時に、天罰魔法が書かれた禁書を読めた。
「あ、あの、禁書は大陸共通語ではない文字で書かれていたと記憶していますが……?」
「ええ、それが普通です。でも、私は何故か、天罰魔法の禁書だけは大陸共通語で読めたわ」
「えっ!?」
「周りは他の言語に見えると言うのによ?」
確かに、エリーナが言っていることは普通ではない。自分のことを選ばれたと言っても仕方がないだろう。
「リリィも私と同じように選ばれた人間なのかもしれない。だから、すぐ処刑せずに保護しておきたいのよ」
「保護ですか?」
「えぇ、貴方達は何故か恨まれているか知りませんが……、見つけても一緒に暮らすのはオススメ出来ませんわ」
「私は恨まれているのだろうか……?」
「ルード、私は信じてないからね? リリィがそんな事を言うのを」
「クリス……すまない」
「すぐに答えを出せとは言わないわ。保護したら、悪いようにはしないわ」
返事を保留し、2人は沈んだ気分で半壊したままの屋敷へ帰るのだった。
まだ続きます。




