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第20話 四死魔将 前半

本日1話目

 


 ダスティス王国の正面門に、5万人の兵士が集まっていた。騎士、魔術師、冒険者などと様々な職業に就いている人がいる。


 金髪が風に揺れ、背中に重量があるクレイモアを背負っても凛とした姿勢で兵士達が憧れる強さを見せ付ける。


「ーー諸君、今回は四死魔将の1人が出てきている。魔物の数は2万程度、魔人も数人は確認されていますが、負ける戦争ではありません。家族の為、友人の為、国の為にーーーー闘いなさい!!」

「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」


 攻めてきたことに驚いたが、準備は出来ている。そして、士気も高い。

 遅れてきたルードとクリスも戦闘用の装備で騎士団に加わる。

 そこには、騎兵隊の部隊があり、その隊長がルードである。副隊長の男が指示を出している所を見つけた。




「ーー遅くなって、すまない」

「いや、大丈夫だ。闘いはルードがいないと始まらないからな。ん、クリス? 奥さんも戦わせるのかよ?」

「いや、1人には出来なくてな。宮廷魔術師がいる場所に行かせる」

「1人って、娘はいたよな?」

「…………」

「なんか、訳ありだな? なら、聞かねぇよ」


 娘と聞いて、クリスの顔が暗くなったことから、何かがあったと察した。ルードはすまないと言って、自分の配置へ向かう。


「まだ聞いていないが、数は?」

「四死魔将が1人、魔人は数人、魔物は2万ってとこだ」

「ふむ、魔物は問題ないが、四死魔将と魔人はどんな奴か知らないと死者が増えるな。まず、斥候を放て」

「はっ!」


 まだ情報が少ないので、策なしに突撃することはない。この世界はとんでもない強者が1人でもいるだけで、戦局がひっくり返ることもある。前の戦争で数の不利があった戦局をルードが一騎当千をしたお陰で勝ったこともある。

 だから、向こうの数が少なくても油断は出来ない。


「ふむ、この距離ならあと3時間ってとこか。何か掴めればいいんだが……」

「まだ何も掴んでない状況で当たることになったら、まず魔物だけを片付ける。片付けたら、四死魔将と魔人を全員でやる」

「万一の時は、あのお姫様が出るだろう」


 お姫様とは、第二王女のエリーナのことだ。エリーナの実力はダスティス王国では五本指の中に入るぐらいに実力を持つ。もし、ルードがエリーナと戦えば、3対7でエリーナが勝つと思われる。

 そんな強者が後ろで控えているから、万一の場合は任せられる。





「宮廷魔術師の準備は大丈夫か?」

「はい、既に配置へ着いています!」


 2時間半ぐらい経ったので、配置の確認をしていく。

 いつものパターンで行くなら、まず宮廷魔術師がまだ距離が開いている内に遠距離魔法で潰していく。

 そして、距離がある程度になったらルードの擁する騎兵隊が突撃する。

 ハマれば、ほぼ必勝になりえるパターンであり、強い戦術である。


「宮廷魔術師、5秒後に発動せよーーーー「遅いよ」ッ!?」


 宮廷魔術師の指揮者がカウントを始める前に、大きな声が聞こえ、敵側から巨大な魔法が飛んできた。

 その魔法は土魔法の第8之魔法で、隕石の様に落ちてきた。防御の魔法が遅れた宮廷魔術師達はまともに食らってしまい、先制攻撃に失敗した。


「なっ、何処から!?」

「くくっ、見えないか?」

「っ!? そ、そこにいたのか!?」


 声が聞こえた瞬間に、その姿が上空から浮かび上がった。さっきまで姿を消していたようだ。


「いつの間に……」

「すぐ姿を現していいのかよ? 大将を狙えばお前らが勝っていたかもしれないぞ?」

「くくっ、私の『迷彩』は万能ではないでね」


 魔人が使う『迷彩』の能力は便利だが、身体から漏れ出る僅かな魔力は消えてくれない。中に魔力を察知出来る敵がいたら、魔術師タイプの魔人は勝てないと理解していた。だからこそ、上空に浮かんで魔力を感じ取れない距離を作って、魔法で不意打ちをするのが1番効果的だと考えた。

 そして、その結果は宮廷魔術師の陣形をバラバラにすることが出来た。

 ルードは近付いてくる魔物達を見て、それまでに宮廷魔術師が陣形を戻して攻撃するのは無理だと判断した。上空にいる魔人は空を飛べるペガサス隊に任せることにして、ルードは隊長として指示を出す。


「騎兵隊! 宮廷魔術師はまだ動けないから、助けはないと思え!! 突撃だぁぁぁぁぁ!!」

「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」


 魔物へ正面から衝突、自殺行為みたいなやり方だが、騎士達はそうならない自信はあった。何故なら、騎兵隊にはルード隊長がいて、『怒鬼の騎士』と呼ばれる程に強いからだ。

 重量の差がある敵であっても、強化された槍で吹き飛ばしたり、斬り裂いたりしていた。ルードは強化魔法 レベル10であり、『身体強化Ⅴ』と『武器強化Ⅴ』で自分より10倍の重さがある敵でも吹き飛ばす程の力を得られている。

 更に頑張っているのは、騎兵隊だけではなくーーーー


 ルードが突き進む道の更に前方へ魔法が撃ち込まれた。ルードはその魔法を撃ったのが誰なのかわかり、ニヤッと笑みを浮かべる。


「クリスか……、助かる!!」


 風魔法の第8之魔法『嵐王竜巻』。いくつかの竜巻が展開されて、魔物を斬り裂いていた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ルードは止まらない。そのまま、1番後ろにいる四死魔将の所まで行きそうな勢いだったがーーーー


「むっ!?」

「行かせるかよッ! お前は俺が相手をしてやろう!!」


 突然に横から攻撃されて、馬の首が落ちた。バランスを崩したルードだったが、咄嗟に地面へ降りて、受け身を取りながら立ち上がった。1人の魔人と向き合っていたが、魔人には隙が見当たらなかった。


「やるな」

「ガハハハッ!! この俺に槍で挑む? やってみやがれッ!」


 ルードを止めた魔人も槍を使うようで、似たようなスキルの構成。実力はおそらく、互角だが長期戦になれば、魔人の方に有利が傾くのだろう。

 なら、ルードが取れる手はーー




「短期戦で終わらせる!!」

「やってみやがれっ!」




 槍と槍が穂先を合わせて、相手に致命傷を与えようと鋭い槍裁きを見せる。2人とも、高い実力を持っていて、周りの人が見れば、舞演を舞い踊っているように見えただろう。


 ルードが突撃を止められたことで、騎兵隊は先程より突撃力が落ちてしまった。まだ半分ぐらいしか行けてないので、あと半分の距離をルード無しで蹴散らして、四死魔将がいる場所まで行かなければならない。






「我を行かせてください。そして、四死魔将の首を取って参りましょう」

「許可する。行け」

「はっ!」


 エリーナの部下になる近衛騎士の1人が戦場へ身を落とす。エリーナの近衛騎士は3人いて、それぞれが騎士団の隊長に劣らない実力を持っている。1人だけは他のと比べると格別な実力を持っているが、その人がエリーナから離れることはあり得ない。


「戦局は膠着するわね。トレスが動きを変える鍵になればいいが……敵も考えたことは同じだったようね」


 向こうもトレスを出したように、強力な者を出してきた。


「戦争はいつも、思った通りに動かないわね……」








「うはははっ!! 軽い、軽い!!」

「っ!」


 人間と魔族の差が出てしまったのか、ルードは力負けしていた。ルードは強化魔法を使っているが、槍使いの魔人も使っているから、その差が縮まらない。

 このままなら、ルードは負けてしまうだろう。だが、ルードにはーーーー


「む!?」


 急にルードの動きが変わり、魔人の方が押されるようになっていた。その原因とは、後ろから走ってくる者にあった。


「私のルードをやらせないわよ!! 『武器強化Ⅲ』!」


 クリスが宮廷魔術師の陣形に混ざらずに、ルードの元まで馬を走らせていた。先に『身体強化』の重ね掛けでルードは強化されたのだ。重ね掛けは1回までと『身体強化Ⅲ』、『武器強化Ⅲ』以上のレベルではないと出来ない制約があるが、ルードとクリスはその制約をクリアしていた。まだ1つのデメリットがあるが、今は関係ない。


「はぁぁぁっ!!」

「うははっ、やるじゃねぇか!!」


 少し上回られたことに驚愕したが、楽しそうな笑みを浮かべていた。槍を弾き、ルードから距離を取った。


「面白ぇよ、お前らは! 名を乗れ、俺はエギルだ!!」

「名乗りか、戦争中は初めてになるな。ルード。妻はクリスだ」

「くはははっ! 夫婦だったのかよ、夫婦パワーで俺を倒そうと? 俺は負けねえよ!!」


 そう言って、本気になったのか先程と違うスピードだった。ルードは逃げずに真正面から受けた。

 槍と槍がぶつかり合うごとに、衝撃が周りへ散らされて、魔物がそれに巻き込まれていた。


 戦争はまだ始まったばかりだ。人間は様々な理由で守る為に戦い、魔物と魔人は蹂躙する為に戦う。

 女神が微笑むのはどちらなのかは、まだわからないのだったーーーー











まだ続きます。

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