第15話 魔召魔法
本日3話目
「武器強化を!」
「はいよ!」
今は硬い魔物であるアルマジロみたいな敵と戦っていた。ウルガが相手をしているが、剣が通らないので強化魔法の第2之魔法である『武器強化』でウルガの剣を強化させた。
「はぁっ!」
背中に剣先が突き刺さり、アルマジロは痛みで鳴き叫ぶ。リリィも見ているだけではなく、雷弾をウルガの剣へ放つ。ウルガは既に剣を離して、距離を取っているから巻き込まれることはない。
剣先が中まで刺さっているので、さっきまで余り効いていなかった雷が内部まで届く。
「グゴォォォォォ!?」
内部を焼き、生きる為の臓器も電撃によって活動を停止させる。
アルマジロの魔物は死に、リリィは勝った。だけど、この程度では両親に勝てないだろうし、まだ会ってない主人公にも劣る。
ゲームでの主人公は平民だったが、莫大な魔力を持って生まれた存在であり、才能も高かったのを覚えている。ロールプレイングのジャンルとなっているこの世界では、主人公は更に活躍するだろう。
乙女ゲームでは莫大な魔力があっても、戦いが無かった為、莫大な魔力が活躍する場面が少なかった。だが、この世界は違う。
どういう風に世界が進んでいくのかはわからないが、リリィの行動によって乙女ゲームとは違うシナリオが進むのは間違いない。
シナリオが変わった後、主人公と攻略対象がどう動くか読めないが、1人ずつ消していくのが最善。もし、団結されても、大丈夫のように力を蓄える必要がある。
「助かったよ。刃が通らないとはな」
「強化魔法と雷魔法はレベル2になったのはいいけど、まだまだだよね……」
「…………どんな敵を想像しているかわからないが、お嬢ちゃんは普通より早く育っている」
「いえ、その程度ではまだまだなのよ。それに、両親に勝てるビジョンがまだ浮かばないもの…………うぅん、ごめん。私は戦闘の経験が浅い素人なのに気後れをしているね……」
「……構わないさ。弱音があれば、俺が全部聞いてやるよ」
「こらー、2人だけじゃないよ! 私もいるからねッ!」
「ウルガとイーナ……、ありがとうね」
久しぶりに素の笑顔を浮かべたような気がした。誕生会やお茶会でも本当の仲間や友達ではない人が混ざっているだけで、作った笑顔で対応してしまう。
それは小森杏だった頃のクセだと思う。直そうと思っても、本当の仲間や友達ではない人と一緒だと、無自覚に笑顔の仮面を被ってしまう。
リリィ、ウルガ、イーナだけのグループだったら、素で話せて楽しいと思える。
もし、破滅の未来が無かったらリリアーナ・オリエントになっても、絶望せずに楽しく過ごせたかもしれないーーーー
だけど、私は決めたの。破滅を押し付ける敵は殺す。そして、私は絶対に生き残る!!
「……ん、よし。魔召魔法を使うから、離れて」
「召喚した悪魔の魔物を倒して、従えさせるんだったな?」
「お嬢様は強くなりましたから、大丈夫です! 怪我には気を付けて下さいね!!」
「はい。第1之魔法『小悪魔召喚』!!」
雷魔法も使い慣れたし、強化魔法もあるから1人で戦える。だから、戦いの術をもっと増やすためにリスクを取ってでも、戦いに身を沈めるつもりだ。
地面に魔法陣が現れて、その中心から悪魔の魔物が姿を見せる。
「あれは、デビルティック。身体は小さいが、手は長いから距離に気を付けろ」
『呼んだのはお前か?』
「うん、私だよ」
『まだガキじゃないか』
自分を呼び出した者がまだ子供だとわかり、呆れていた。今までは大人や老人に呼び出されたことがあるが、子供は初めてだった。
『我を倒さなければ、従わない。そんな子供が我を倒せるわけがーーーーアバババッ!?』
「隙だらけじゃない」
リリィは従わせる為に呼び出したのに、ガキとか子供と口を動かすだけで隙だらけだったので、『雷弾』をぶつけていた。
『ガ、ガキが! まだ話している時に攻撃をするんじゃないッ!!』
「貴方って、馬鹿なの? 私は貴方を従わせる為に呼んだのよ。なのに、隙だらけで話ばかりするんだから、貴方が悪い『雷弾』」
『ちょっ、『火壁』!』
また魔法を放ったが、火の壁によって防がれてしまった。
「待てよ、デビルティックが魔法を使うのは聞いたことがないぞ!?」
『我のことをただのデビルティックと同義にして貰いたくはないな。お前が呼び出したのは、ただのデビルティックではなくーーーーネームモンスターの『オルク』だ!』
「ネームモンスターだって!?」
イーナはネームモンスターのことを知っているようだ。リリィとウルガは知らないようで、ハテナを浮かべていた。
「知っているのか?」
「ネームモンスターは知能を持っているモンスターのことで、どれも必ず名前を持っているのが特徴なの! 今のリリィじゃ、勝てないよ!!」
知能を持っているということは、魔法を使う頭を持っているということ。だから、ただのデビルティックが使えるはずはなかった、魔法を使えた理由がわかった。
『無駄だ。我は召喚した相手を殺さないと帰れないんでね。我を呼んだことを後悔するがいい!! 『大火弾』!!』
半径1メートルもある巨大な火弾がリリィへ向かおうとしていた。まだ体力が低いリリィでは耐えられないと思い、イーナが『水蛇』で相殺しようとした。だが、当たる前に『水蛇』が消えてしまった。
イーナの『水蛇』が消えたのは、魔召魔法の効果である。召喚した者と召喚された魔物の邪魔は出来ない為、魔法を消失させてしまった。
助かるには、自分で守るしかないが、雷魔法はまだレベル2で火魔法のレベル5を防げない。
このまま、リリィが消し炭にされてしまうかと思われたがーーーー
「『魔反支配』」
『は?』
リリィに向かっていた筈の、『大火弾』が向きを変え、オルクの方へ向かっていた。
『何がーーーーギャァァァァァ!!』
「ーーあ、反逆魔法があったんだ!!」
「魔法を返した……?」
リリィには伝説級の反逆魔法がある。魔術師殺しである『魔反支配』で相手の魔法を支配して、向きを変えたのだ。
『が、ぎ、ギサマァァァァァァ!!』
「まだ生きている!?」
「アレだけの火力で生きているなんて……、やはりネームモンスターは危険だわ」
まだ生きているといえ、ダメージは大きい。このまま、リリィがトドメをさせる強い魔法があれば、良かったが……、そんな魔法はない。
「聞いておくけど、オルクが死んだら従えないんじゃないの?」
『ギサマ、我は悪魔だから死なない! 倒されたら、魔界へ帰せられるだけだァァァァァァ』
「成る程。遠慮はいらないのは助かるな。そして、いい敵意だね……」
リリィにはトドメをさせるような強い魔法は覚えていない。だがーー
「『人心反転』」
『ガァッ!?』
感情を反転させる魔法。人の心だけではなく、オルクみたいに知能や感情を持つモンスターであっても、効果がある。沢山の敵意を持っているオルクが感情を反転させられたらーーーー
『お嬢様、愛しております』
こうなる。敵意から好意に反転されて、敵から味方になった。
「質問があるけど、いいかな?」
『なんでも、聞いてください』
「もし、倒した後にまた召喚してもちゃんと言うことを聞いてくれるの?」
『はい、召喚された魔物が従いたくなくても、強制的に従われますので、安心して下さい』
「成る程……、確かにこの召喚魔法も禁書に指定されるのもわかるな。質問は終わりだからーーーー私の為に、自分の弱点を貫いて死んで?」
『わかりました』
死んでと命令を出した時、後ろで見ていた2人はビクッと恐怖に脚を一歩下がっていた。
『どの悪魔は胸の中心にある核が弱点でありーー』
弱点を説明しながら、自分の胸を手で貫いていた。
『ごふ、こ、このように、核を破壊すれば…………』
反逆魔法『人心反転』は死ぬことで、魔法は解ける。だが、オルクはただの悪魔よりも生命力が高かったため、核が破壊されて死ぬ筈だったが、数秒だけは魔法を掛けられる前のオルクに戻っていた。
『な、何が……自分で……どう、いうーーーー』
オルクは死んだ。死んだが、魔界へ帰されたことで死んだ結果は無くなっている。
リリィは魔力がまだ残っているのを確認してから、再びオルクを召喚した。
『ここはーーま、まさか、我が負けた?』
「あぁ、私が勝った」
『こんな子供に負けた……? 最後、何故自分で胸を貫いていた?』
『人心反転』に掛かっている間は、記憶が無くなっているようだ。
強制的に従えるなら、教えても大丈夫だろうし、どうやって倒したのか教えてあげていた。
『反則級の魔法だろ……』
「伝説級だから、反則級と言われても仕方がないね」
『戦う程に敵意を溜めることになる。そして、最後にその敵意を好意に反転させられーー死ねと命じるだけでいい。やっぱり反則級だよ!?』
「はいはい、勝ったのは私だからね?」
『くぅぅっ……、わかった。負けたには、ちゃんと従うぞ!』
オルクはリリィの支配下に落ちた。ネームモンスターで火魔法が得意な悪魔の魔物。戦いになれば、いい活躍してくれるだろう。
「まさか、ネームモンスターに勝つとは思いませんでした」
「ただ相性が良かっただけだよ。魔法を使わずに接近されたら、終わりだったよ。すぐ終わらせれば、敵意を溜める時間もないし」
「そこは、要特訓だな」
思ってなかった魔物が出たが、結果的には強い魔物を従えたのだから良かったと思う。
今度からはもっと強くなってから、挑もうと思う。レベルが上がってもすぐ挑戦しないように気をつけなければ。
もう空は陽がそろそろ落ちそうなので、ダスティス王国へ戻って屋敷へ帰っていくのだったーーーー
今日はここまでです。
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