第12話 本屋
本日8話目
7歳になって、ようやく外出の許可が出た。必ずイーナとウルガを連れて行く条件だが、問題は全くなかった。
今まではルードが用意した護衛を連れていかなければならなかったが、イーナとウルガが強くなってルードに認められたから護衛代わりを務めていいと許可が出たのだ。馬車の中は御者を除けば、リリィ、イーナ、ウルガの3人だけである。
「アレから、2年か。長かったな……」
「ようやくですね!」
「街に着いたら、俺達から離れるなよ?」
「わかっているわよ。目的地はわかっているわね?」
「あぁ、ダスティス王国にあるだけの本屋を周るんだろ? 見つかるかね」
そう、これから様々な本屋に行って禁書探しを始めるつもりだ。今はまだ反逆魔法だけで、他に禁書は見つかっていない。もしかしたら、家にもう一冊の禁書があるかもと期待したが、見つからなかった。アレの一つだけだったようだ。
「生活魔法の小水で反逆魔法のレベルを2まで上げられたけど、なかなか3にならないよねぇ」
「おそらく、もっと強い魔法でやらないと駄目かと思いますが……、庭だと御主人様や奥様の眼に付きますからね」
生活魔法の小水なら、自分の部屋で出来たが、火魔法や水魔法ぐらいになると、部屋では出来ない。せめて、庭ぐらいの広さが必要になるが、両親に見られないようにしたいので、出来なかった。
「レベル2の魔法は特殊でいつでも使えないんだよなぁ……」
「確か、『人心反転』でしたか」
「1人の感情を反転させる魔法だったか……エグい魔法なんだよな。上手く使えば、敵を味方に出来るからな」
そう、この魔法は味方に使って試すことが出来ない。相手が死ぬまで解除されず、1人までと言う制限がある。つまり、魔法を掛けた相手が死なないと次の人に使えない。
味方に使ってしまえば、死ぬまで敵に回ってしまうと最悪な結果になってしまう。
「相手の感情を変えれる魔法は確かに、禁忌の魔法と言えるな……」
「えぇ、それだけ強いなら、別の禁書も期待出来そうね」
「見つかればな」
強いのはわかったが、問題は見つけられるかだ。
1軒目の本屋に着いた。装飾が綺麗で貴族が良く使う本屋である。
「キチンと整理してあるから、可能性は低そうだけど……調べないにはいかないよね」
「ちょっと、店主に古代語で書かれた本はあるか聞いてみますね」
禁書は古代語で書かれているとわかっているので、古代語で書かれている本はあるか聞くだけでいい。
イーナが聞いてくれたが……
「あん? そんなのねぇよ。ここにある物は全部大陸共通語で書かれている本だけだ」
無いようだ。仕方がないので別の本屋に向かったが……
「古代語で書かれた本? ないねぇ」
「む、読めない本だと? そんなの売れない本を置くわけねぇだろ!」
「ごめんねぇ、置いてないのよ」
次々と本屋を周って行くが、何処も大陸共通語で書かれた本しか置いてなかった。
「そうだよな、読めない本を売るわけないか」
「やはり、難しいですね。あ、次ね本屋に着きました」
「これは……ボロいな。客がいねぇぞ」
人気がない道を通り、一軒屋の前に止まった。ここも本屋みたいだが、ボロボロの一軒家で個人営業をしているようだ。
「あればいいけど……。失礼します」
「あらま、お客様? 珍しいですね」
「あまり、お客さんが来ないんですか?」
「えぇ、此処は人気がない道にあるので、なかなか寄ってくれる客がいないんですよ」
本屋に入ると、古そうな本が積まれており、奥にはヨボヨボなお婆さんが一人で座っていた。
「すいませんが、古代語で書かれた本はありますか?」
「ごめんなさいね。私はこの本達の全てを把握してないので、わからないのです……」
「えっと、何処から入荷しているのですか?」
「殆どは他の国から来た商人からですねぇ」
可能性が出てきた。人気の印刷社から取り寄せをせず、他の国から来た商人から買っているなら、古代語の本も混ざっているかもしれない。
「ちょっと、調べても構いませんか?」
「好きなのように見てくださいね。今度、店仕舞いにしようと考えているので、半額で売りますよ」
「店仕舞いをしてしまうんですか。ありがとうございます」
店仕舞いをするなら、再び来るのは無理だから今日だけでこれだけの本から見つけ出さなければならない。
「もし、読めない本があったら、私に見せなさい」
「はい」
「わかった」
古代語を読めるのはリリィだけなので、読めない本があったら見せるようにと指示を出しておく。
大陸共通語の本は無視して、カタカナで書かれたタイトルを探していく。
「む? これ、読めないな」
「見つけたの!?」
「あぁ、これだ」
ウルガがそう言って、見せてくれると目を見開くリリィ。
この本はアルファベットで書かれているじゃない!? 英語じゃなくて、アルファベットで連ねられているし……。えっと、植物の図鑑かぁ。
「違うわ。これは植物の図鑑と書いてあるわ」
「これも読めるのか……。古代語に見えないから別の言語のようなんだが?」
「まぁね。たまたま読める言語だっただけよ。いいから、すぐ次を探して」
「はいはい」
時間は有限なので、さっさと話をた終わらせて、次を急かせる。
「お嬢様! 古代語です!」
「お、あったの!?」
次はイーナが見つけ、読めなくても古代語らしきの形だとわかったようだ。早速、受け取ってタイトルを見てみるがーー
「は? 初めての料理って……」
「禁書ではなかったのですか?」
「古代語なのは間違いないけど、中身が料理に関することで、禁書とは言えないわね……」
「残念です」
「でも、古代語の本があっただけでも収穫わよ。禁書がある可能性が高まったわ」
古代語の本を見つけたのだ。これなら、可能性はあるだろうと思っていたが…………
「これは!?」
「釣りの仕方!」
「見つけました!」
「陶器の図鑑!」
「どうだ!?」
「クレープの作り方! 食べたくなるわね!?」
「これは?」
「官能小説! って、この世界も官能小説があるんだ!?」
「この本は?」
「惜しい! 魔力の使い方だわ! これは前に大陸共通語のを読んだのと同じ内容だわ」
「これはどうなの?」
「美容に関する本ね。一応、これも買って置きましょうね」
………………
…………
……
「見つからないですね」
「疲れたので、少し休憩しましょう。まだ半分しか調べてないので、可能性が無くなったわけでもないわ」
「あー、キツイな」
椅子がある所に座り、休憩をしようとしたら、椅子の上に一冊の本があることに気付いた。
「あら、これは……『悪魔の召喚陣』? あぁ、いわゆる黒魔術の本ね。薄いから休憩中に読むのに丁度良いわね」
アルファベットで連ねられている本を読む。古代語ではないのは知っているが、暇潰しに丁度良いと読み始めたがーーーー
「キャァッ!?」
最後のページまで読み終わると、急に文字が光の粒になってリリィへ吸収されていった。
その様子を見ていたイーナとウルガが驚きの眼で見ていた。
「そ、それはあの時と同じ!?」
「な、何が起こった!? 身体は大丈夫なのか!?」
「え、えぇ……。身体は大丈夫よ。まさか、これが禁書だと思わなかったわ……」
古代語ではない本が禁書だった。つまり、最初からの条件が間違っていたことになる。
「まさか、禁書は古代語だけではない……?」
「それは初めて聞きました。もしかして、王族も知らないこと?」
「あははっ、知らずに読んで力を手に入れるとか、運が良すぎだろ」
「偶然だったけど、確かにステータスに表示されているから間違いないわね」
ステータス
名称:リリアーナ・オリエント
年齢:7歳
HP:7/7→18/18
MP:82/82→141/141
スキル
伝説級:反逆魔法 レベル2(反魔支配、人心反転)、魔召魔法(小悪魔召喚)
凡庸級:鑑定、生活魔法 レベル2(浄化、小火)
ちゃんと、伝説級の所に表示されている。しかし、魔召魔法はすぐに使えるような物ではないようだ。
「どうやら、悪魔系の魔物を召喚出来る魔法みたいだけど、使うには1度は倒して従えさせる必要があるみたい。私1人で」
「あー、属性魔法を持ってないお嬢様だけでは無理ですね」
「属性魔法ね、学園に通わないと覚えられないんだったよね。王族は学園に通う前から覚えられるみたいだけど」
「一部の貴族は1種類の属性魔法ぐらいは持っているけど、オリエント家にはないね」
普通なら、手に入ることは出来ない物だが、裏ルートなどで手に入れる貴族もいる。
「ねぇ、裏ルートで取り寄せるのは無理?」
「無理ですね。オリエント家はそれ程に金を持っていませんからね」
「コレクションの部屋があるのに?」
「そのコレクションのせいで、金が無いんですよ……」
父親は散財をするような人ではないが、珍しい物を見つけるとすぐ買ってしまう。領地に使うお金には手を出さないが、そのコレクションのせいで属性魔法の書を買うお金はない。イーナから聞くには、裏ルートで取り寄せになると、最低でも金貨100枚は必要になると。そんな金を払うぐらいなら、学園で覚えた方がマシだ。
買えないのはわかったので、他の方法を取る。
「はぁっ……、ウルガ。何処からか盗んで来れる?」
「無理だ。正確な場所がわからないには、忍び込んでも探す時間が必要になる。そんな時間が取れるわけがない」
「そうよねぇ……」
「学園は厳重に保管されるし、警備員が多いから不可能ね」
盗むのも無理。もう手段はないな……と落ち込んでいたが、一つだけ方法があるのを思い付いた。
「王族……。第二王子に面会を申し込めないかしら? そっちが友達だと思ってくれているなら、見せてくれる可能性があるかも」
「成る程……。誕生会のパーティに来ていたな」
「では、御主人様に聞いてみます。表では友達の所に遊びに行くで構いませんよね?」
「えぇ、お願いするわ」
会えるかわからないが、方法はもうこれしかないので、成功するのを祈るしか出来ないのだったーーーー
今日はここまでです。
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