己を賭けて
家に着いた僕ら秋月兄妹は、夜にする作業。夕食、睡眠、入浴を済ませ夜の学校探検への準備を進めた。
因みに晩御飯は、葵の発言通り僕がつくった。唐揚げやサラダ更にはお好み焼きを食べたいと言うワガママに付き合う事になりその労力のせいか、学校探検を開始する前だというのに疲労が既に蓄積している。
「おにい、ご飯美味しかったよ!」と語尾に音符でもつきそうな上機嫌な言葉に僕の疲労はわずかばかりに誤魔化されたが、ここはやはり葵にご飯を作っていただきたかった。
その心中を察してか、葵は自分の準備を終えるとそそくさと僕の鞄を引っ張り出して僕の荷物もまとめてくれていた。
「おにい、特に持っていくものとかないよね?」と葵は僕の鞄に手を突っ込みながら聞いてくる。その問いに僕は「そうだね」と答えた。
特に持っていくものがある訳ではないし、こう言う探検は懐中電灯一本と夢の広がる怪談噺があれば無限に広がるものだ。
その事について知らぬ我が妹ではない。だから葵が用意してくれる荷物は常に必要最小限である。
これまで僕は様々な怪談噺を聴きそれがどの様に変容し語られたのかを看破してきた。ただ怪異と仲良く友達になりたいなんて思ってる葵とは違い……だ。
僕の妹、怪談を怪談として楽しみ、それを現実のものとしてとらえるためにオカルト話を好む。
その様は不器用ながらも純粋なものだ。
決して葵に友達がいないからとか、そんな理由で出来上がった考えではない。葵は否定を繰り返すおにいの考えは、物の怪たちが可哀想だと言う理由だけでその考えを常にする様になったのだ。
一言で終わらせるならば発端は僕である。
僕と違い社交性に富んでいる葵は僕の様にいじめられなかったと言うのは兄として純粋に嬉しいことだった。
常に僕の後ろをついていきその言動は常に不思議なものをまとっている葵は下手をすれば僕よりもいじめの標的になり得たのだが、持ち前の社交性と明るい性格が彼女を守ったのだ。




