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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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95.地鳴り

地下深くへ

底の見えない暗闇へ落ちていく感覚とはどういうものだろうか?

変わらぬ景色の中で下から強烈な風が吹き続けるようなものだろうか、それとも映像に合わせて動くアトラクションに乗っているような感覚だろうか。


「ぅう・・・」


最後に飛び降りたエリカであったがその速度は誰よりも加速が速く、先行していたクレイを抜きレオに追い付く速度が出ていた。

エリカ自身は気づけばレオに追い付いていたことに驚きつつ、そのレオすら越えて行こうとする現状に恐怖した。


「うわああああああああああ!」

「おいおい」


恐怖のあまりバタバタと手足を振り回し、情けない格好のままさらに下へ落ちていく。


「じ、地めnー!」


十数秒落ちた辺りで暗闇からパッと突如として現れた地面にエリカは認識をすると同時に反射的に目を閉じた。

グシャッと音が響き全身に激痛が走るかと思いきや、一向に訪れぬそれに違和感を感じながら恐る恐る目を開ける。


「あ、うぅ・・・ そーっと」


エリカの目の前に広がったのは先ほど見えた地面が最後に見た時と変わらぬ距離にある光景だった。


「先走ったら危ないぞ?」


エリカの横から発せられた声の方に振り向けば既に地面に足をつけているレオだった。


「これは、レオさんが?」


自分の状態を指しながらエリカが訪ねる。

だがレオは答えないまま上を見ながらちょんちょんと指さす。

それは上を見てみろと言っているようであった。


「上ですか?」


レオの指先をなぞるように見上げるとそこには一本の触手をエリカの背に伸ばしそれ以外の数本を壁に張り付け支える真っ黒い球体があった。


「クレイさん!」


エリカの元気な声を聞くと黒球体はエリカから触手を離す。

え、と疑問の声をあげエリカは落ちると思ったが未だに体はその場に停止し続けている。


「あれ?」

「助けたのは私ではありません。

私では間に合いませんでした」

「じゃあ誰が?」


不思議そうに再びレオを見たエリカはレオが変わらず上を指しているのに気づく。

そこでエリカは再び上を見上げ、その人物を探す。

壁から触手を外すと同行し人間の姿に戻っていくクレイの後ろからひょっこりと妖精が顔を出す。


「レイさんだったんですね」

「まさかレオ様以上に危なっかしい人がいるなんて・・・」


頭を抱え、ため息混じりに答えるレイにエリカは目に涙を軽く浮かべる。


「ち、違いますぉ~」


落下の恐怖か、レオ以上と言われたためかは分からないが軽く悲鳴を含み泣きながら強く否定する。


「エリカは強くなったのか、変わってないのか分からないな」

「誰のせいですか誰の!」


まだ涙を目尻に浮かべたままのエリカがレオに噛みつく。


「わ、うきゅっ」


元気にワイワイ言い出したエリカを見たレイは魔法を解く。

いきなり地面に吸い寄せられたエリカの体はそのまま抵抗なく落とされたのだ。


「い"だい"です・・・」


地面に倒れたまま声をあげた。


―――――――グルゥグアアアアアアアア!!!!―――――――


地響きかと思うほどの凄まじい音が反響し地面が揺れ動く。

鼓膜が破けたのではないと思えるほどの音にエリカとクレイだけでなくレオやレイでさえ耳を塞いでいる。

反響のせいで十秒以上に渡った爆音は鳴りを潜めた。


「一体なんなんですか?」

「今のは・・・」


エリカは音の正体に全く心辺りがなさそうであったが、クレイは可能性を感じ取っていた。

そしてある可能性を感じたクレイは額にいくつかの汗を浮かべる。


「主様、これはまさか・・・ ―――!」


クレイが浮かんだ仮説をレイに聞いてもらおうとレオに視線を向ける。

が、視線を向けたクレイは一瞬にしてその口を閉じた。


「「・・・」」


レオは無言のままただ音が響いてきたであろう方角を睨むように見つめていた。

その表情に遊びもおちゃらけもない。

そんなレオの顔をクレイは見たことがあった。


「(エルフの国での・・・)」


今のレオ、さらにはレイの表情は泥神とスアに対して向けられていたものに酷似していたのだ。

それはつまり、レオやレイが【敵】として認めてしまうほどの強者が現れたことの証明でもあった。


「行くか」

「行きましょう」


レオとレイは視線を洞窟のさらに奥へと向けたままで声だけのやりとりをする。

そこにクレイやエリカでは感じられない絶対的な信頼にも何かが確かにあった。


「エリカ嬢、我々も」

「んっ・・・」


レオたちの遠ざかりながらも目の前にいるかのような存在感を放つ後ろ姿を見ながらクレイもエリカも自然と声が小さくなる。

終いには声を出すことさえ禁止されているような雰囲気と緊張感が場を支配する。

威圧感にも似た何かを感じつつもエリカとクレイは二人の背を追いかける。

今後何があろうと追いかけて、追い付こうという誓いを胸に、共に進むのであった。

さらに奥へ、まだ奥へ

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