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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
95/125

93.分担

内面も成長中

頭領治館に備え付けられた客室の一室に二人の人物がいた。

一人は黒髪藍目で服まで黒に染め上げた見た目は二十代の男、片やもう一人は薄い紫髪に赤い目をした童顔の妖精だ。


「レオ様、どうしてあんな脅すような行動したんですか?」

「いや、だって・・・」


レイがいう脅しとはレオがパー頭領に対して行った刻印のことである。

考えなしあのようなことをしてないだろうとレイ自身も思ってはいるが今まで突発的な行動を見せることもあった手前、レオを全面指示しているわけでもないのだ。


「あのままじゃ結局話は終わらなかっただろし・・・

それに、時にはあぁいう脅しも交渉では必要だろ?」

「それについては否定はしませんけど、【武力】や【技能】は示すだけで凶器を突きつけているのと変わらないんです。

それもよりにもよって【この世界】では失われた技術となれば尚更ですよ?」


そこまで考えてますか、とレオに詰め寄るレイにレオは目が泳ぐ。


「うっ・・・」

「また思いつきでやったんですか?」


レイのレオへの疑いの目が深まる。


「た、確かに思いつきでやった部分もあるが悪い方にはなってないはずだ。何せ一人で【武】も【技】も証明したわけだからな」

「だといいですけど・・・」


言い訳を繰り返すレオにレイは深々と溜め息を吐くのだった。


レオたちが大討論室から出たのはレオがやらかしてすぐである。

これから先は頭領だけで明日からの方針を決めると言い出したからだ。

そんな訳でレオたちは受付の案内のもと客室に移動している。

エリカとクレイはレオの隣の部屋にて待機していた。


「感じの悪い奴らだ」

「あはは・・・」


クレイが吐き捨てるように言うとエリカは愛想笑いを浮かべる。

普段のクレイならば、レオたちの前であれば決して個人的な感情を前に出さず主であるレオのために行動し続けるクレイであるが、エリカと共に修行や魔物狩りをこなす間に自然とエリカの前では個の意志が出始めていた。


「感じの悪い奴らだ!」

「クレイさん落ち着いてください」


憤る、まではいかないにしろ小さな殺意は見え隠れしていた。

今のクレイの前にドワーフが現れたならば言葉よりも先に手が出そうだと感じる程だ。


「・・・すまない」


エリカの声に今の自分の状態を理解したクレイは頭を落とし謝罪する。


「ふふっ」


エリカから微笑みと小さな笑い声が漏れる。


「な、何か可笑しかったのか?」

「あ、違います。ただ・・・」


クレイが幾分か照れながらも真剣に真意を聞いてきたことにエリカは誤解がないように言葉を選ぶ。


「その【姿】にずいぶんなれてきたんだなぁ、と思って」


クレイは荷台を引く以外の時は常に人型になっている。

そしてそれが仲間の間では当たり前になっており、そこに今まで異常に個の意志が出始めたクレイを見てエリカは【人間みたい】ではなく【人間】であると思い始めていたのだ。

もちろん、このように感じているのはレオたちも同様である。


「基本はこれか、馬だからな。

それに主や姉御、奥方との訓練をするのにこの姿の方が都合が良いし」

「くすっ」

「また笑ったな?」

「ご、ごめんなさい。今の口調がレオさんに似ていたから」


おそらく現状、エリカにしか見ることできないクレイの姿を少しからかいながら談笑を楽しむ。

レオたちが客室に案内されてから約4,50分したのちバダから連絡が入り、レオたちは再び大討論室に集まっていた。


「時間がかかったが大まかに明日からの日程が決まったのじゃ」


レオたち用の椅子が新たに用意されており、そこに座るやいなやバダが話を始めた。


「まず、頭領全員の見解として国を捨てる準備をしたほうがよいと言うことになった。

そのため既に何人かの頭領は既に自身の火口に戻り準備を始めておる」


バダの言葉通り、二番・六番・九番口の頭領が退室していた。


「そしてお主たちに頼む依頼は前のまま、①火山の異変調査、②総長の捜索じゃ」

「いいのか、それだけで?」

「うむ、依頼自体に変更はないが二つ条件を加えることになった。まず一つ目は、期間じゃ。

3日、これがワシらが望む期間じゃ」

「望む期間? どういう意味だ?」


バダは一度下を向き溜め息のような息を吐くとレオに顔を向ける。


「3日という期限はドワーフ全員分の緊急避難用巨船を準備するのに必要な時間じゃ。これが先に述べた国を捨てる準備というわけじゃ」

「つまりその間に俺たちに依頼をこなせ、と」

「じゃが無理をしてくれとは言わぬのじゃ。可能な限りの調査をしてくれればよい。

そして遅くとも4日目には国を出る」


バダはここまで言い切ると魂でも抜け出しているかのように脱力していた。

レオたちからすればなかなかいい加減な内容に聞こえるが、バダの姿を見るにバダ本人が決めたことではないことは理解できていた。


「それで、もう一つの条件は?」


レオの問いかけに未だに放心状態だったバダが抜けかけた魂を吸い上げ再起動する。


「そ、そうじゃった・・・

もう一つは、火山内部の案内が出来ぬことじゃ。

本来ならばワシ自ら共に捜索に加わるつもりであったのたが・・・」


バダは話ながら回りをチラリと見渡すが他のドワーフは口こそ開かないがダメだと態度で示していた。


「なるほどね。んじゃ案内はいいや」

「大丈夫なのか?」

「予めいくらか必要なことは聞いてるからな。

それに・・・」


レオはトロッコで聞いた音を思い出す。


「気になる場所もあるからな」

「わかった。お主がそういうならば後は頼むのじゃ」


バダは誠意を込めて頭を下げる。


「ワシらは明日から本格的に動き出す。

もし必要な物があれば用意させるのじゃ」

「なら必要なものとして―――」


レオはバダにメモのようなものを渡す。


「・・・う、承ったのじゃ」


レオのメモを見てバダが一瞬硬直するがすぐに了承する。


「もう話は終わりでいいのか?」

「う、うむ。終わりなのじゃ」


バダから退室の許可をもらうとレオは体の凝りを解すように伸びをする。


「さて明日からが本番だからさっさと休むか」

「そうですね」

「その前に夕食にしましょうよ?」

「ならば今日は私一人でやらせてください。

修行の成果お見せします」


わいわい騒ぎながら大討論室を後にするレオたちに通りバダは「変わらぬなぁ」と呟くのであった。



やっと長々とした話が終わったよ!

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