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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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88.テストと勉強

時には座学も必要

見とれたままのエリカに対し結晶龍はただただ佇んでいた。

しばらくしてようやく我に返ったエリカは下を向きながらあせあせしつつ取り繕うと、龍は微笑むような顔と共にゴロゴロと喉を鳴らした。


「あっとえっと・・・」

「不思議な人ですね」


エリカの頭上から女性の声が降ってきた。

声であるがピアノの音色のようなキレイで澄んだものである。

聞こえてきた声にエリカはハッと顔をあげる。

そこに居るのは間違いなく見とれていた龍だけであった。


「ふふっ、そういうときだけは皆、同じ顔をするのですね」


突然の事への驚きと何と返事をする方が良いのかと、エリカが困っているうちに話は続く。


「やはり・・・ またしても【声】は届きませんか」


何処か悲しげで諦めが含んだような言葉が響く。


「リィウォンよ、もう・・・」


エリカへの興味を無くしたかのように龍は遠くを見つめ始める。


「えっと、何のことか分かりませんが元気だしてください。

良ければ手伝いますから」

「んん?」


まるで先程とは逆、声を掛けられた龍はエリカに顔をサッと向ける。さらに自分の【声】が届いていた事への喜びと驚きで体全体をクネクネさせながらあたふたしていた。


「お、落ち着いてください」

「ハッ! そ、そうね・・・」


エリカにドウドウと手振りで静めにかかると合わせるように落ち着きを取り戻していった。


「気を取り直して。貴方は私の【声】が届いているのね?」

「届いている、というのが言葉として聞こえているという意味であれば確かにその通りです」

「では、1つ簡単なテストをやらせてちょうだい」


エリカはテストと聞いて少し顔を強張らせる。

体を動かす方が得意なエリカにとって知恵比べのようなテストは苦手であったからだ。

そんなエリカを他所に結晶龍は自身の長い尾をエリカの前まで持ってくる。


「今から私が上下左右を口にします。

それから一拍置き、言った通りの箇所から尾を使って攻撃をしますから、避けるなり受けるなりの何かしらの【防御姿勢】を見せて」

「つまり攻撃がヒットしないように立ち回れば良いと・・・」


声が聞こえていなければいきなり攻撃がされたも同然である。

咄嗟の行動とは防御にしろ回避にしろ隙が出来やすい。

そこに二度三度の突発的な行動が重なれば攻撃をモロに受けてしまうだろう。

だが正直に言えばこの会話が成立した時点で龍自身はエリカが自分の声を正しく聞いていることを理解できている。

そうでなければそもそもエリカの口から「攻撃ヒットしないようにが立ち回る」なんて言葉は出てこないのだから。


「始めるわ。まずは、上」


始めの合図でエリカは戦闘体制に入る。

一拍の余裕と攻撃位置がわかるのだからそこまで身構える必要は無さそうだと始まる前、エリカ自身は考えていた。

だが、いざテストが始まった時その考えを切り捨てる。

何故なら、結晶龍から受けるプレッシャーが何でも有り状態でのレオとの組手に似ていたからだ。つまり━━


「(一瞬でも気を抜けば・・・死にそうですね)」


一拍の後、最初の攻撃が開始される。地面にペッタリと垂れていた尾は、まばたき1つしている間にエリカの遥か頭上にまで上がるとそのまま勢い任せに振り下ろされた。


「んっ!」


一瞬、ほんの一瞬の迷いだった。

エリカは当初攻撃を受ける、というよりは迎え撃つつもりであったが迫り来る尾の迫力に圧され寸での所で回避を選んだ。

そしてそれが正しかったことを目で確認する。


「あのまま居たらミンチになっていましたね・・・」


地面には軽くクレーターが出来上がっている。

そしてこれだけの威力を叩き出しながら傷1つないままのキレイな尾がゆっくりと持ち上がると元の位置へと戻っていった。


「結晶化による皮膚強化、ですか」

「まさか知っているとは・・・ 驚いたわ」


【皮膚強化】とは読んで字のごとく、自身の皮膚を何らの形で強化することで防御力をあげる技である。

主に鉱山などに生息する魔物が持つことが多い能力で、中には自らが食べた鉱石に近い性質に自在に皮膚を変化させる魔物もいたりする。

その中の一つが結晶化である。

他と結晶化の違いは、物質の生成を行えることである。

ただの皮膚強化ではあくまでも性質を「似せる」ことしか出来ない。だが結晶化は自身の体から同じ性質の結晶を生み出すことができるためその効力は皮膚強化の上位互換と言えなくもない。


「(確か、そんな話をレオさんがしていましたね・・・)」


だが皮膚強化なんて高等な能力を持つものなど殆どいないし、いたとしても鉱山であれば最奥を縄張りにしていることが多いためお目にかかることはまずないのである。


「次、いくわ。 左、上」


再び尾が振られ始めるとエリカはスッパリと頭の中から余計なものを捨て去り目の前に専念する。


「右、左、下左、上上右、上右下上…」


最初は一拍ずつ丁寧なやり取りが進むにつれペースが上がっていく。今となっては尾はひっきりなしにエリカに襲いかかり、それを回避しつつ時にはいなしたり弾いたりしながらどうにか対応し続けていた。


「はぁ、はぁ…」


エリカの対応が鈍くなり限界が近付いたタイミングで龍は尾を止める。


「合格!!」


疲れきったエリカを他所に満面の笑顔が見えそうなほど明るい声がエリカの耳に飛び込んできたのだった。

守りたいこの笑顔(笑顔?

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