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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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87.霧の来客

新たな出会い

ニュクは笑い終えると【インチョンチア】と名付けられた純白の鎧に近づく。すると、鎧の芯木ごと自身の手で持ち上げ運んでくる。


「見た目と違って凄い力だな・・・」

「まだまだ若い奴等には負けんもんね」


「さて」とニュクが一呼吸入れる。


「試練を出すとは言ったが実際に出すのはワシではないもん」


そういうとニュクはインチョンチアをポンッと叩く。


「出すのはこやつ自身だもん」


ニュクが急に言い出したことにエリカは首をかしげ、レオは透かさず『視認分析』を発動させインチョンチアの情報を読み取る。


「(どういうことでしょうか・・・

まさか思った以上に重たいとか? なら正直相性は悪いんでむしろ・・・いら━)」


エリカは意図を理解しようと必死に頭を回転させている。


「そんな深く考えなくてもいいもん。

お主は聞いたことはないかもん、強い武具には意思が宿る。

特に魔物の、上位種に設定されているものの一部を使うことでそれは発生しやすい、と」


エリカは記憶の片隅に昔そんな話を聞いたような、程度の記憶を掘り起こす。


「まぁその多くが呪いに近い形で現れるもん。

多くが殺人衝動などの狂気。だがこやつは違うもん。

こやつは━━━」


話ながら鎧を見つめていた目が再びエリカをまっすぐ射ぬく。

さすがに二回目となれば慣れたのか今度は身じろぐことはなかった。

それを満足そうに見つめ直し話を続ける。


「こやつは拒絶するんだもん。今までの何人かはこやつを気に入り試着をしたが全て着終わると皆が悲鳴もないまま気絶しおったもん。

まぁ幸いにも後遺症と呼べるものはなかったが皆が口々に、頭の中から声が響きいつの間にか意識がなくなっていた、と話していたもん」

「つまり、それを克服出来れば良いと・・・」


エリカは言葉の終わりに少しばかり唾を飲む。

例え、過去の挑戦者が後遺症を患っていなくとも【呪い】と聞かされると多少の躊躇は出てきてしまう。

だが何故だろうか、エリカには不安こそあれ恐怖はなかった。

単純にレオやレイがいるからどうにでもなると考えたのだろうか、「いや」っとその考えをエリカ自身が否定する。


「(最初から思っていました、悪いイメージなんて湧かない。

むしろどこまでも清く深い、高貴さにも似た美しさを感じる)」


エリカ自身なぜそう感じるのか理解できないがでもそうとしか感じることが出来ない。故に別の意識が生まれていた。

自身は釣り合うのだろうかと、強く意識してしまった。

だからこそニュクから【駄目】と言われた時に納得してしまったのだ、まだ自分の手には余るものなのだと決めつけて。


「エリカ、さん!」


迷いを見せるエリカに飛びかかり声をかけたのはレイだ。


「そんなに悩まなくていいんですよ。

今そんなに悩んでも、きっと答えなんて出ないんですから」


レイの優しい微笑みにエリカは少し迷いを払う。


「大丈夫でしょうか・・・?」

「それが何に対しての【大丈夫】なのかは分かりませんが、やってみればいいと思いますよ?」

「そうそう、ダメだったらその時はその時だ」


最後はレオまで背中を押す。クレイも声こそ出さなかったが小さく頷いていた。


「やらせてください」


力強くとまではいかないがしっかりとした意思を声に乗せる。

その声を聞きニュクとバダはすぐさま準備に取り掛かった。


「エリカ殿、窮屈ではないかの?」


インチョンチアの装備完了まで残すとこあとは腕のみとなったタイミングでバダがエリカに問いかける。


「大丈夫です」

「何かあればすぐに防具を外すのじゃ、よいな?」

「ワシらの方でも最大限のバックアップはするもん」

「はい、よろしくお願いします」


エリカは腕装備を1つずつ確認しながら慎重に着けていく。

最後の留め具を留める前にレオたちに目を向ける。

一瞬のアイコンタクトだけではあったが、いってきますと、いってらっしゃいとお互いに交わした。

そして最後の留め具まで終わるとエリカは見知らぬ場所にいた。


「ここは・・・?」


とても深く濃い霧の中、回りは真っ白な霧で全く先は見えない。霧でボヤけているがうっすらと緑や茶色が見える。


「山の中? でもそれにしては・・・」


空気は薄くないし、四方を霧が覆っているのに不思議と恐怖や不安はない。まるでインチョンチアを見たときと同じ感覚だ、とエリカが感じている時、正面から巨大な何かを感じた。

咄嗟に反応したエリカは腰へと手を伸ばす。だが手を伸ばしてからインチョンチアの装着のために剣を外していたことを思い出す。


「あれ?」


少し間抜けな声を出すエリカ。その理由はないはずの剣が腰に差してあったからだ。よくよく見れば自身の装備自体がインチョンチアから無骨な鎧に戻っていた。

不思議には感じだが今は目の前に迫る何かに意識を向ける。


「ん・・・」


ドシドシと音が近づく。音からかなりの大きさがあると理解できる。迫り来る影の大きさから見れば最低でも3、4mはあると見るべきだろう。

そんな何者かが近づくにつれてエリカの剣を握る手が力が入る。

少しずつ輪郭が見え始めた。蛇が立ったように縦長でその途中からは巨大な翼が生えている。後方にはハッキリとは映らないが別の細長い何かが見え、おそらく尻尾だろうと予想できる。

四足歩行で一歩一歩を堂々と歩く姿には威厳と高貴さを感じられた。


「グゥルルルルルル」


ただ喉を鳴らしただけだがその存在感は下手な魔物の威嚇よりも強く意識してしまう。

不確定ながら距離が数mまで近付いたときエリカは一閃、剣を振る。


「はっ!」


霧を払うように振られた剣。本気で振るった訳ではない剣筋は霧を払うことには至らない。

だがそれで意図を理解したモノがいた。

ブンッ!と巨大な翼をはためかすとエリカとの間に埋め尽くされていた霧を抵抗許さず消し去る。


「キレイ・・・」


突風から耐えたエリカの目の前に居たのは全長10m以上、全身をキレイに伸ばせば20m近くありそうほど龍だった。

全身にクリスタルのような結晶体を身に付け、鱗の一つ一つが汚れ1つない純白の光を放つ。

そんな結晶龍にエリカは見とれてしまったのだった。


この世界(エリカ側)において最強種の一角が竜種

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