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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
88/125

86.一世代前

運命の出会い?

バダが案内した先は繁華街から少し離れた裏路地にある小さな一軒家だった。


「ここが目的地じゃ」

「えっと・・・ どう見ても店ではないような・・・」


エリカが不思議そうな声をあげる。

他の三人も声こそあげないな気持ちは同じだった。


「まぁ入れば分かるわい」


言葉と同時に家の扉をドンドンと叩く。すると、すぐに年配のドワーフが顔を出した。髪から髭に至るまで顔中白髪だらけ、総長などしていたとは思えないほどに弱々しい姿である。


「お久しぶりでこざいます、ニュク旧総長」


白髪ドワーフにバダは丁寧に頭を下げる。


「珍しい客人だもん。バダ、何しに来たもん?」

「武具を見に来たのですじゃ」


そう言いながら後ろに控えたレオたちへと視線を移す。それに釣られるように旧総長も目線を移す。

レオたちを捉えた視線が厳しいものへと変わる。さっきまでの弱々しい感覚は抜け、逆に蛇にでも睨まれたかのような小さな危険信号を感じるほどに強い視線であった。

そんな視線にクレイとエリカは一瞬身じろぐ。


「よい、入れ」

「ありがとうございます」


レオたちから視線を外し、また弱々しさが戻ると中へと誘導する。

バダが先行して中へ入るとレオたちがそれに続いた。


「これは・・・?」


中に入るとそこは━━━


「ただの家だな」


何の変哲もないただの家だった。

置いてあるものは一人が使用するのに必要最低限な物だけで、食器に関しては来客用か、コップだけが1、2個余分にあるぐらいだ。ただその何れもが機能だけを突き詰めた飾りッ毛のない物ばかりである。

良く言えば無駄がない、悪く言えば物悲しい家。


「何を人の家をジロジロ見てるもん。こっちだもん」


レオたちが立ち止まったのを敏感に察知したニュクは直ぐ様声をかけ、奥へと誘導する。

そこにあったのは裏口用の扉をだった。


「何処へ行くんだ?」

「工房だもん」


レオの問いにそう答えたニュクは扉を開く、その先にあったのは家自体の敷地面積の約3倍はある広々とした工房であった。


「ニュク旧総長は自身の家の裏手三軒を買い取りご自身の工房に変えられたのじゃ」

「もしかしてさっき家があんな状態だったのって・・・」


バダとエリカの会話にニュク本人が割り込む。


「工房作りと製作に金がかかったせいだもん。

まぁ基本的には家にいるのは寝るときぐらいなものだから気にしてないもん。それよりも━━」


ニュクは言葉の続きを口にしながら既に勝手に動き回りつつあるレオに目を向ける。


「コラッ! ここに来た以上この中ではワシに従ってもらうもん」


レオが飾られている武具に手を伸ばしたと同時の忠告だった。


「ここにある全て、ワシが作り上げた子達だもん。そしてこの子らの担い手はワシ自ら決める、それが嫌なら帰るもん」


見た目の弱々しさとは裏腹に、声には覇気がある。

さらに今見せた客に対する態度とは思えない発言に頑固親父の雰囲気すら感じる。

だが怒られた当の本人はそれを嫌うどころか少しばかりの好感を持っていたりした。


「無断で触ろうとして悪かった」


レオからの素直な謝罪にバダもニュクも驚いた。

バダはレオの自由奔放さを見ている故に、ニュクは長年総長などをしていた経験からこんな素直な奴とは感じられなかったからだ。


「まぁ分かればいいもん」


ニュクは工房の奥へとさらに進む。その先には倉庫と書かれた部屋があり、そこへと入っていく。

倉庫の中は通路幅だけ残し、びっしりと武具や食器などが敷き詰められていた。


「凄いですね・・・ あ!」


倉庫の中は一応大まかな種類別がされておりエリカはその中の防具に目を走らせる。するとそこに金属板の中に白が溶け込んだ鎧があったのだ。

透明の氷の中に純白な雪を閉じ込めたようにも見えるそれは防具としてよりも美術品としての方が価値があるのでは、と思えるほどである。


「なるほどだもん」

「え? うわっ!?」


エリカが美鎧に見とれていると不意に横から発せられた声に驚く。


「お主は【あれ】に引かれるのかもん?」

「え、あっ、はい。あの白い鎧は一体?」

「待ってみるもんだもん。だが・・・」

「あ、あのぅ?」


会話が成立せず一人取り残されたエリカは少しオロオロしだす。


「この世には武器や防具の性能に頼る奴が多すぎるもん」


唐突に語り出したニュクだが皆がそれに耳を傾ける。


「己が力量も理解せず武具の性能だけを求め、自身が負ければそれを武具のせいだと決めつける。

ワシが今まで見てきた者、その中でも成り上がりしか考えておらぬ愚か者の全てがそうであったもん」


この世において魔物を狩れることは自身の存在証明となる。

その中でも大物を仕留めるほどの力量があれば地域だけではなく国から声を掛けて貰えるほどに、力とは大きな意味があるのだ。


「そんな奴等にワシの子らは渡せぬ。故にお主らを試したもん」


ニュクの言う試したとは先ほどの睨みなのだろう。だがそれで何が分かるのか理解できる者は居なかった。


「お主らは合格だったから中に入れたもん。

まぁ武具を必要とするのはお主くらいに見えるが、もん?」


レオはニュクのセリフからエール王国で出会ったディースことを思い出していた。


「(この手の鍛冶師は皆目利きがいいな)」


レベルという概念があったレオの世界では全ての力量をそこである程度の数値化が出来ていたため目利きのみで相手を見抜こうとする輩は会ったことがなかったのだ。


「異質なやつらだもん・・・」


再度レオたちを見渡しながらニュクは呟いた。

その後、目を閉じ何やら思考しだす。


「嬢ちゃん、すまぬが今のお主に【あれ】は渡せないもん」


【あれ】とはもちろんエリカが一目惚れした純白の防具である。


「そう、ですか。残念ですが別のをお願いします」

「そんな簡単に諦められるのかもん?」


エリカの回答にニュクは少し驚きを見せた。


「出来るならばほしいですが、駄目だと言われて駄々をこねるつもりはありません。それに━━」


エリカはおもむろに腰につけていた巾着に手を伸ばす。


「手持ちも心苦しいですからね・・・」


エリカの手持ちはお世辞にも大金とは言えない額で、今着ている防具よりはマシな防具なら買える、程度しかない。


「ですから、もし機会があればまた次の時にします」

「ふぁはっはっはっは!!」


清々しいほどに言い切ったエリカをニュクが嬉しそうに笑い出す。そしてそれ以外の全員にも口元に笑みが浮かんでいた。


「たいそう気に入ったもん!

ならば1つ試練を出すもん。

それをクリアできれば【インチョンチア】をくれてやるもん」


ニュクがこう言い出すのが分かっていたのかバダは笑みを崩さないまま小さく頷いていたのだった。

エリカに出される試練とは!?

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