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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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84.兆し

せーんろは続くーよ、どーこまーでもー♪

勢いよく傾斜を滑るトロッコはそのまま加速し続けていた。

ガタンガタンと不吉な音を立てながら進むトロッコは所々でガクンと跳ねる。


「これって大丈夫なんだろうなぁ」

「もしもの時は主の身は私が!」


レオが少しばかりの不安を口にするとクレイがすぐさま、お任せあれと頭を下げる。


「あぁ頼りにしとくな」

「はい、何人たりとも主様を傷つけさせません」


レオからの「頼りにしとく」の言葉に、更なる忠誠を心に決めたクレイは右膝をつき座り、騎士が目上に挨拶する時のように右腕をピンと伸ばし床に手を付けながら頭を下げた。

美しき主従愛、何という忠誠心。

たが残念なことにここは未だに坂を下りその速度を加速し続けながらも今にも脱線しそうなほど不安定なトロッコの中である。それさえ違えば、様になっていたのに。


「おっと!」


そんなやりとりをしていると、ひときわ大きくトロッコが揺れる。「脱線したのでは」と思えるほどの揺れではあったがその後はガタンガタンとリズムを刻みながら何事もなく進む。


「大丈夫ですか、主様」


揺れが収まるや否やクレイはレオの近くに駆け寄る。レオは転倒こそしては居ないが体勢を狂わされ壁にもたれていた。


「大丈夫大丈夫」

「どうなら坂が終わり、今は普通に進みだしたようです」


外の景色は薄暗い洞窟から変わりはしないが斜めに見えていた動きが水平に流れているのを確認しつつクレイが伝える。


「どうやらそうみたいだな」

「かなり深くまで来たようですね」


レオもクレイ同様に外を見る。


「まぁ海の底の更に底まで掘らないとトロッコで島の行き来なんて無理だろうしな」


しばらく水平のままトロッコが進むとまた坂を下り出す。

この繰り返しを数回行うこと30分余り、狭い洞窟の壁だけの景色が少し変化した。

大きな空洞に出たのだ。横幅100mを越え天井も20mほどの大空洞。しかもトロッコはその中央に架けられた橋のような道を渡っている。


「底が見えないな・・・」


レオがどうにかトロッコから見える範囲で大空洞の底を見つめるが暗いのも合わさり高さが想像できない。

トロッコのガタンガタンの音が響き渡ることからかなりの深さがあるのは間違いなさそうである。

そんな中、レオの耳に何かの音が聞こえてきた。


「ん? なんだ・・・?」


耳を澄ませながら音を聞き取ろうとするがトロッコの音に掻き消されハッキリとしたものは一切聞こえてこない。


「どうかされましたか、主様?」


レオが両手を耳に当てて音を拾おうとする姿勢にクレイは疑問を浮かべていた。


「いや、なんかおかしな音が聞こえた気がしてな」

「可笑しな音、ですか?」

「あぁ、ゴォというか、ガァというかそんな感じの音がな」


レオの説明にさらに疑問を深めたクレイはレオの真似をしながら耳を済ませる。


「トロッコがうるさく何も聞こえませんが・・・」

「ん~、気のせいだったのか?」


「でもなぁ~、聞いたこと有るような気がするんだよなぁ~」と少しばかり悩んでいたレオだが終いには「まぁいいか」と諦める。

そうこうしているうちに大空洞も抜ける。その先は今度は上り坂になっていた。


「このままでは上れないと思うのですが、まさか我々に引けと?」

「さ、さすがにないだろぅ」


ないない、と手を左右に振りながもレオはトロッコ駅での事を思い出していた。

「全員ひょろそうだな」というトロッコリーダーの言葉を戦力にならないと自分達は勝手に解釈したが、本当はトロッコを押せないという意味だったのではと、独りで瞑想していた。


「上りに入ります」


クレイの宣言したと同時にガゴンッ!とトロッコが大きく揺れる。

さぁどうなると二人が身構えているとキュルキュルと先ほどまでと違う音が響き出すとゆっくりとトロッコが坂を登りだした。

かなりゆっくりな速度ではあるが一切止まることなく同じ速度で登りだしたトロッコを不思議に感じ二人とも窓に近づくとトロッコの足元に注目する。


「これは・・・」

「あぁなるほどね」


二人が見たのはトロッコの足にガッチリと組み合わされた歯車のようなものであった。

トロッコの滑車部分はタイヤのようになっているのだがその両端にはホイール代わりに十字の金属部品が付いており、それが線路に用意された歯車と噛み合うことで坂を登っていたのだ。


「こいつを考えた奴、面白いこと考えるな」

「確かに、まさかこんなやり方で坂を上らせるとは・・・」


下りの半分以下の速度ではあるが一度も危険が起きることなくトロッコが登りきると、そこには出発時同様に駅のような空間がありドワーフが数名待っていた。


「「オーライオーライ、よし!」」


ほぼ速度を失っているトロッコを二人掛りで止めると、他のドワーフが扉を開けた。


「お疲れさん、約二時間ぐらいだったが無事か?」


二人して二時間も乗っていたことに驚きながらも、真っ先に安否を聞いてくることに苦笑いを浮かべてしまう。


「両方とも怪我はない」

「そうか、そいつぁよか。ならとりあえず出てくれ」


ドワーフに急かされるように二人がトロッコから降りるとすぐにドワーフの大声が響く。


「おら!次が来るぞ。トロッコ片付けろ!」

「「おう!!」」


トロッコを止めたドワーフ二人がそのままトロッコを押しながら奥へと消えていく。

すると、時間を置かずレイたちを乗せたトロッコが姿を表した。

その後はレオたちとおんなじやり取りをしているのを見ると「やっぱり危険なんだな」と再確認するレオたちだった。

安全な移動なんかない!(断言

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