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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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83.トロッコ

ガタンゴトン

暗い地下へ、長い階段を進んでいく。しばらくすると薄い橙の光が見えてきた。


「見えてきました。あそこが乗り場になります」


案内の受付が指を指す。

乗り場に近づくにつれ、ガタンガタンと音が響いてくる。

歩くこと数分で着いた乗り場には五、六人のドワーフが既に準備を終わらせていた。


「バダ頭領、準備できとるでぇ」

「おぅ無理言うて悪かったのぅ」

「何言ってんだ。ウー頭領の頼みを無下にしたとありゃうちのガキにドヤされるわい、ガハハハ」

「恩に着るぞぃ」


この場の責任者だろうか、中々豪快なしゃべりもありどちらが頭領か分からないほどである。


「そっちが乗客か?」


責任者ドワーフが品定めをするかのようにレオたちを上から下までじっくり眺める。


「全員ひょろそうだな・・・ ウー頭領、こいつらで大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃ、ワシ自ら実力は見ておる」

「頭領がそういうならそうなんだろう」


いきなりじろじろと見られた上、当人たちを無視して話をするドワーフを見ながら少し気分を害するレオたちにバダが気づく。


「積もる話もあるじゃろうが、ワシらも急いどるんじゃ」

「おっとそうだったな」


責任者ドワーフがパンパンと手を叩くと、四角い箱が線路の奥から現れる。

トロッコとは名ばかりで見た目だけなら電車の一車両に近い。側面には窓と出入口が1つ、進行方向側にはフロントガラスが用意されている。もちろん、帰りように反対側にもフロントガラスがある。


「こいつがトロッコだ。定員は最大三名なんでちゃっちゃと組を作ってくれ」


レオたちへの態度の雑さがレオたちのイライラを加速させる。

そんなレオたちを意にもせず責任者ドワーフは最後のチェックをしに作業中のドワーフたちの元へと戻る。


「み、みな、申し訳ない。ドワーフには多種族に対して良くない感情を持つ者もおるのじゃ」


バダが本当にもう訳なさそうに頭を下げる姿を見てレオを含め、全員が気持ちを落ち着かせる。


「まぁいいさ。他への感情は人それぞれだしな」

「うむ、本当に申し訳ない」


まだ頭を下げたままのバダに流石に居心地の悪さを感じ始めてきたあたりで、どうにか元気を取り戻したエリカが話を変える。


「そ、それで組分けはどうしますか?」

「あぁ、それなのじゃがワシは後組にしようと思う」

「でもバダさんが先の方が良くないですか?」


レイの疑問はもっともである。


「本来ならその方が良いのじゃが・・・」


何やら口ごもるバダに皆が首をかしげる。


「言い難いのじゃがこのトロッコ、古いせいか時たまに脱線するんじゃ・・・」

「おいおい、大丈夫なのか?」

「大怪我するような事故は今のところ起きておらんから大丈夫じゃろう。トロッコ自体にも怪我防止用の装置は備えてある」


バダの話から少しばかりの安堵を持つ。


「それとバダさんが後になる関係はどこに?」


今度はエリカが質問する。


「トロッコには緊急用に手動操縦の機能があるのじゃ。

いつもは走らせ始めれば最後で乗っているだけですむのじゃが、例えば崩落などの緊急性がある場合にはある程度の操縦が出来るようになっているのじゃ」

「それで?」

「うむ、ワシならばその操縦が出来るためもし始めの組が何らかのアクシデントがあったとしてもどうにか対処できると思うての」


バダの説明にとりあえず納得したレオはさらりと組を作る。


「なら最初は俺とクレイで行くわ。後からエリカとレイがバダと一緒に来てくれ」

「何故その組み合わせに?」


レイからの質問である。ただしレイに異論があるわけではなく、ただ疑問に思ったからである。


「俺とレイならアクシデントがあっても対処は簡単だから組を分けた。あとは男性と女性って感じたな」

「ならレオ様たちが後組でも良いのでは? バダさんもいらっしゃいますし」

「まぁそうなんだが・・・」


レオはトロッコに目を移す。


「あれ、最大三名とか言ってるけどおそらくドワーフ基準だぞ?」


レオに言われてバダとレオ以外がトロッコを観察する。

四角いトロッコは外から見れば確かにそこそこ広そうに感じるのだが、そこに緊急用の操縦機まで付いているとなればそこまで余裕のあるスペースではない。


「あんな中に男三人はなかなかしんどい」

「ですが、私たちも三に━━」


エリカが異を唱えようとするが言葉の途中であることに気づく。


「あ、そうか。今はレイさんなんですね」


そう、今はキューレではなくレイである。妖精の姿であるレイであればスペースはほとんど使わないで済む。だからこそレオは組分けと順番をこのように決めたのだ。


「よし、理解できたならたったと乗り込もうぜ」


決めた通りにレオとクレイが先に乗り込み始める。

すると、作業中の奥から何やら不穏な声が響いてくる。


「なにぃ! トロッコの台数が合わねぇだと!」

「は、はいぃ。どうやら新人が報告を忘れてたようで・・・」

「ならとっと履歴見てどこのやつが戻ってねぇか調べろ!」

「はいぃ!」


責任者ドワーフが怒鳴り散らすと報告したドワーフは逃げるように走っていく。

「ったく・・・」と独りごちる責任者の元にバダが近づく。


「あぁ、トロッコは大丈夫かのぅ?」

「ウー頭領、無様な姿見せちまったな。トロッコ自体はちゃんと用意があるから心配しねぇでくれ」

「わかった。ならば早速1台出してくれ」


「あいよ」と口にするとレオとクレイが乗り込んだトロッコに近づいていく。


「今から留め具を外す。この先は一旦さらに深く潜るんでかなりの速度が出るから怪我したくなけりゃ大人しく座ってろ。

あとはトロッコが線路に沿って目的地まで一直線だ、わかったか?」


言い方は未だ乱暴だが、キチンと仕事をこなすところを見てレオは認識を改める。


「あぁ、わかった」

「ならよし。 出すぞ!!」


大きな掛け声で周りの作業員への警告と共にトロッコを発進させる。

ガタンと音をたてて進み出すトロッコはすぐに坂へと降りその姿は見えなくなった。

それを確認するかのように入れ替わりで次のトロッコが奥から現れる。


「今度はワシらの番じゃ」

「はい」


バダとエリカ、レイはすぐさま乗り込む。


「じゃあウー頭領、よいトロッコを」

「うむ、久々のトロッコじゃ。楽しむわい」


最後に簡単な挨拶だけ交わすとレオたちの時と同様に大きな掛け声と共にトロッコを発進させ、レオたちの後を追うのだった。

いきなりのジェットコースター感

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