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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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80.希望と期待

ドワーフの国の詳細が明らかに!

もう何度目になるだろうか、そんな考えが頭に浮かんだレオの視線の先には、玄関口であんぐりと口を開いたまま顔は動かさず目だけで周りを見渡すドワーフがいた。


「な、なんじゃこれは・・・ なんじゃこれは・・・」


やっと喋り出したかと思えば今度は同じ事の繰り返しである。

エリカに話があると言われ早々に作業を止めて向かったのだが、来てみればこの有り様に頭を悩ませている、という訳である。

さらにレオを呼びに行ったエリカはドワーフに対して「わかるわかる」といった感じ頷いていたのもレオの悩みを加速させていた。


「ハッ! こ、これは失礼した!」


周りを見渡す中、やっとレオたちと視線があいドワーフは意識を取り戻す。


「いやいや、構わないよ。みんな同じような反応するからな」

「そう言ってもらえると助かるわい。じゃが・・・」


今度は先ほどまでの大雑把な見方と違い細部まで観測するように見渡す。


「いつの間に魔法の技術はここまで発達したのじゃ?

この技術があればさらに新たな創作が・・・」

「あぁ~、盛り上がってるところ悪いんだけと要件を聞いても?」


このままじゃ話が一向に進まないことを予感したレオは単刀直入に話を進める。

レオの意図を理解したエリカがドワーフをソファーへと誘う。


「失礼するぞい。ワシの名はバダ・ウーじゃ。これでも五番口の頭領をしておる」

「五番口とは?」


レオの返しにバダは少し悩む。


「お主たちはワシらの国についてどこまで知っておるのじゃ?」


レオ自身は詳しく知っていないため、エリカが代わりに知識を開く。

1つ、小さな島国が密集した諸島国であること。

1つ、それぞれの島が活火山である特殊な地形であること。

1つ、「国」とは名ばかりで各ドワーフ部族の密集地であること。


「うむ、だいたい合っておる。じゃが幾つか間違いもあるの。

まず諸島と火山の件じゃが、あの場所は巨大な海底火山があるのじゃ。それこそボルバック諸島国すべてを覆う程ののぉ」

「それってつまり、すべて島国が同じ火山の一角であると?」

「そうじゃ。だから諸島すべてが活火山と言われる訳じゃ」


普通に考えればあり得ないような話であるが、ドワーフ本人がそういうなら信じる他無い。


「まぁ信じる信じないは任せるわい」

「んで、それが五番口とどんな関係が?」

「ワシらドワーフが精練するのに活火山の熱、つまり溶岩を使うのじゃ。

そのため各ドワーフの集落、というよりは鍛冶場は火山口付近に隣接し、その中から特に規模がデカイものから順に1から9の番号が振られておる」

「つまりバダさんは五番目の頭領鍛冶師ってことか」


レオが納得したと言わんばかりに頷く。


「まぁ任された鍛冶場が5番目であっただけでワシ自身がそこまで偉いわけでもないのじゃ」

「そうなんですか?」


肩をすくめながら答えるバダにエリカが反応する。


「うむ、頭領の中で唯一明確な地位にいるのは0番頭領、皆からは【総長】と呼ばれるドワーフだけなのじゃ。それ以外は腕が高い者を順に9人選出される。

その選出基準でさえ、年期や才覚とまちまちじゃ」

「では【総長】さんはどうやって選ばれるんですか?」

「【総長】に成れるものは儀式をクリアできた者だけじゃ」

「儀式?」


何やら不穏な単語にレオがつい、そのワードを口にする。


「そう警戒する必要はないわい。別に血生臭いものではない。

代々【族長】に受け継がれてきたハンマーを扱えるかどうか、それが儀式の内容じゃ。別にたいしたものではない」


たいしたものではない、訳がないとレオは思う。

たかだか1つのハンマーを扱うだけならば多くのドワーフが扱えない訳がないからだ。


「おっと、脱線しすぎたの。 本題の依頼じゃが・・・」


レオは浮かんだ疑問を記憶の隅へと追いやり、今は話に集中するように努める。


「最近、ボルバック諸島全域の溶岩が急にその活動を停止したのじゃ。ワシらでいくらか調査はしたが原因は掴めなんだ・・・

そんな中、調査の最中、火山の深部の方から何やら不気味な音が響いてきたと連絡するものが数名いた。

深部には魔物が住み着いていると昔から言われておったため、誰もが深部への調査は断念しておったのじゃが・・・」


次第に口は重くなり、言葉の節々にどこか後悔するような雰囲気を感じさせる。


「我らが総長が単身で深部に乗り込んだのじゃ。[3日帰らなければ新たな総長を決めよ]と書き置きを残しての・・・」

「つまり、総長の捜索と火山の異変調査をしてをしてほしいって訳だな?」

「総長が戻らず早一週間は経過しておる。もう見つかると思っているものも少ない。じゃが、それでも希望を捨てたくはない、じゃからこうして依頼をしに海を渡ったのじゃ」


レオは少しばかり思考する。真横で既に決意を固め、今にも「助けに行きましょう!!」と声を上げかねないエリカがいることを理解しながらも考えをまとめていく。


「1つ、質問いいか?」

「かまわぬぞ」

「どうして島を出なかった? 鍛冶師としてならば何処でやろうとドワーフなら引く手数多だろうに」

「島を出る案が出なかった訳ではない。

じゃがあの場所は特殊なのじゃ。

活火山故にかなりの頻度で噴火が起きるのじゃが、噴火後の近隣洞窟には微量ではあるがオリハルコンなどの希少鉱石が見つかるのじゃ」

「え!? それって普通じゃあり得ないですよね!?」


レオが目を見開き驚く。そんなレオの心情を代わり伝えるようにエリカが大きく反応する。


「どうしてそうなるかはワシらにもわからんが、事実じゃ」


噴火後に希少鉱石が見つかるだけでも十分な理由である。たとえ、レオが逆の立場でも状況が復帰する可能性を模索するだろう。


「それにじゃ、ワシらドワーフが如何に【あらゆる鉱石を加工】する技能を持っていようと、それを武具などにしようとすれば必ず製錬、つまり鉱石を鍛え上げなければならない。

それを怠ればただの飾り物じゃ。

その中でもオリハルコンを鍛え上げるには溶岩ほどの熱量が必要なのじゃ」

「なるほどな」


バダの話を聞き再度レオは考えるが、自身がドワーフの国に向かう理由を思い返せば答えは決まったも同然だった。


「わかった受けよう、その依頼」

「レオさん!」

「ほ、本当か! 恩に着る!」


エリカもバダも喜びを隠さず素直な気持ちを露にする。


「俺たちがドワーフの国に行くのも集めた鉱石で武具を製錬してもらうためだしな」

「そうだったのか。 そうじゃ、そうじゃ! 報酬の件じゃが━━」

「今は保留でいいさ。とりあえずはドワーフの国にさっさと向かうとしよう」


レオの声は何処か、誕生日プレゼントを目の前にした子供のように何かに期待するような楽しそうな声だった。

三部序章終了

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