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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
78/125

76.スタイル

大作にして未完成

殺意が近づくにつれ、それの数が複数であることが理解できた。


「全部まとめてぶっ殺す!」



右足を高らかにあげ迎撃の準備をする。ようやく目に見えたのは黒い魔弾群のようなものである。狙いはキューレの上半身、さらにいうなら胸元の位置に集中していた。


「《魔王の進撃》」


降り下ろされた右足により生まれた、先ほどの比ではないほどの邪気の波により先頭を走っていた魔弾群は飲み込まれる。


「はっ!どんなもんだ!」


だが現実は非情である。

すべて打ち落としたと思われた魔弾だがまだ残っていたのだ。

さすがのキューレもこれには驚き対応が遅れた。別にも自慢のスキルを使って倒せない力があることに少し心が折れかけたのも対応が遅れた原因の一つだったりする。

それでもどうにか迎撃しようとするが対応が遅れるという致命的ミスにより魔弾群に曝されることになる。


「こ、こいつは・・・まさか!?」


コーナーに追い詰められたボクサーのように一方的に魔弾群の攻撃を浴び続けるキューレはそこから感じ取れる力により何かに気付き顔を歪めた。

狙い位置は胸元、さらに攻撃力に数、決めては魔弾と思われた力が邪気の塊であったこと。


「(あたしの力? ってことはこれは・・・)


防御体制を取りながらも迫り来る攻撃の一撃一撃は重く苦しい。ガードの上からでも間違いなくダメージをおい、時たまにガードを抜けてくる攻撃を受ける度に軽く意識が飛びそうになる。


「なんつぅ隠し球だよ」


そんなことをボヤキながらも逃げることも出来ずただ耐えるしかなかった。





「そろそろ、かな?」


小さく息を吐くように重々しく口を開くのはレオだ。キューレが闇に捕まり数分が経過していた。闇は道場の端から端まで届くかのような範囲で、ギリギリキューレ以外のメンバーが入らないようになっていた。

そんな暗闇がまるで風により分散する煙のように突如として晴れたのだ。その中からはボロボロになったキューレが現れる。

口で呼吸をしてはいるが息は絶え絶えで、立ってはいるが力強さは感じられない。腰は今にも落ちそうだがキューレのプライドがそれを許さずどうにか踏み留まっている状態だった。


「はぁ、はぁ、あの、えげつないのは、なんなんだよ? 初めて、見たぜ?」


呼吸を整えようと努力をしていたキューレだがすぐさま無意味だと理解しレオに答えを問う。


「『終わる世界エンド・オブ・ザ・ワールド』それが魔法名」


少しずつ余裕が出来始めたキューレはレオの話を聞きつつやっと呼吸を整え始める。


「俺が尊敬する魔法師、一時指導すらしてもらった人のオリジナル魔法だ。ただこれは未完成品だけどな」

「未完成品? お前の異能ならすべての魔法を解析できるんだろ?」

「あぁ、そのはずだったんだけどな。これは、いや、【彼ら】が使うオリジナル魔法だけは例外だった。

エール王国であの戦士長と戦った際も彼らのオリジナル魔法を元に作った魔法だったしな」

「あぁレオが以前に言ってた戦闘を参考にしたとかいう奴等のだったのか」

「そう、さっきの『終わる世界』は相手の攻撃を呑み込み、返す魔法。オリジナルはそこに倍以上の力を加えて返すんだが━━」


既に模擬戦は終わったと言わんばかりの二人だったが乱入者が現れる。

二人が気を抜いたタイミングで『肉体強化』と日頃学んでいる圧縮により一瞬にしてレオ達の前にまで近づいたエリカは剣を抜き放つ。相手は・・・レオだ。


「・・・こっちかよ!」

「へぇいいじゃねぇか、エリカ」


一番近く、弱っているキューレではなくその奥のレオを狙った強襲。こちらに来ないと思っていたレオは度肝を抜かれることになる。

だが、普段のエリカならいざ知らず【覚醒】の反動が抜け落ちていない今のエリカではその俊敏性が違いすぎるためレオは何とかエリカの腕をつかみ腕ごと剣を止める。

レオが心の中で一息付いた束の間、エリカは今の流れが想定内だといわんばかりに次手、本命を繰り出す。


「はぁっ!」


鞘に手を伸ばしそのまま鞘を振り上げる。

エリカの腕をつかみ、安心したレオには回避する余裕などなくそのまま脇腹に鞘が突き刺さる。


「グハッ」


エリカを放し脇腹を抑えながらよろよろと後退するレオを見てエリカは歓喜に震えていた。不意討ちとはいえ、今まで一撃もまともに入れられなかったレオに攻撃が当たったのだから喜ぶのも無理はない話だった。


「いやぁエリカ、よくやったよくやった! スカッとしたわ」


エリカに肩を掛けながら、もたれ掛かるようにキューレが抱きつく。


「お、おい。少しは労ってくれよ」

「あたしはお前にあれ以上のを貰ったならな。そんな義理はない」


道場のおかげでどうにかダメージがひいたあたりで再びエリカと向き合う。


「にしてもよくあのタイミングで来たな」

「あのタイミングが一番奇襲しやすそうだったので」

「エリカも小細工使うようになってきたことがあたしは嬉しいね。真正面から殺り合いもいいが小細工で翻弄するのも楽しいからな」


キューレの言葉に若干苦笑いを浮かべるエリカは心の中で「この2ヶ月近くで王国に居たときよりも色々変わったもんだ」とか考えていた。


「で、今の見て思ったんだけど、エリカ? 居合いを覚えてみる気ないか?」


レオからの問いに聞きなれない言葉が含まれていたエリカは質問し返す。


「居合いってなんですか?」

「抜刀術の一つだな。鞘から剣を抜く、そのたった一閃を突き詰めた技だ。だがエリカの場合は二閃を狙う」

「つまり、さっきのように鞘で行うと?」

「違うぞ、エリカ。レオが言いたいのは変則居合い。二刀流だ」

「出来るかどうかはエリカ次第だがエリカの得意な速さを生かすにもってこいな技でもある」


暫しエリカは考えるがすぐに顔をあげる。


「やってみます」


その答えにキューレもレオも満足そうな表情を浮かべる。


「あ、そうだ、クレイ。あんたはあたしとこれから邪気についての訓練を増やすからな。せめて【魔王】の地位にいけるぐらいにな」


さっきまで一人座っていたクレイはサッと立ち上がりキューレに頭を下げる。


「よろしくお願いします、姉御」


姉御発言にまた少しはムッとしたキューレだが最後は半ば諦めたかのように手を振って答えた。


「んじゃ、遅くなったがお昼にするか」


レオの合図で一度は休憩を取ることになったのだった。


やっと模擬戦が終わった

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