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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第二章 ウェルフィナ国
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65.依頼と約束

永かった・・・

スアの起こした事件が完全に終息してから一週間経っていた。

スアと共謀しダークエルフ達を国家反逆罪として陥れたとされていたルルファ・ラルラだが、スアとの決戦の後パストーゾ村の端に倒れているのを発見される。

本人曰く「私は何も知らない! 私は騙されたのだ」と供述していたのだが、その後エリカ達に敗れレオにより何重にも編まれた結界魔法と魔力の封印を受けたスアの話では「幻術による精神支配は最初だけ。あとは権力を好きに使うことを条件に、すこぶる協力的になった」とのことだ。

スアの発言とその後の調べで横領や政治的圧力による脅迫紛いの行為の証拠が押収された。その中の一つにダークエルフの国家反逆罪がルルファ議長による陰謀だと云うものも含まれ、あえなく御用となった。


「と、この事実を知っているのは今回の関係者のみなんだよな」


実際に世間に公表された話は【何者かによる自爆テロ】でその処理と対応に出た【守護精霊スア】が身を呈して皆を守り大きな怪我を負った。容態は深刻であり治療するためには一度精霊王の元に戻る必要があるためウェルフィナ国を出ることになった、ということになっているらしい。あと、自爆テロの首謀者もルルファになっているようだ。


「あの姫さんの顔は今思い出してもおっかないな」

「私もレオ様同様にしばらくは頭から離れそうにないですね。まさかあんなに悪い顔をさなるとはさすがの私でも思いませんでした」


ヤンデレのごとき目に、口元は裂けたかのように広がり詐欺師のような笑みを浮かべながら「今までのツケですよ、ウフフフ」と笑っていたのだ。

何故そんなマリ姫とレオたちが会うことになったかというと、事件から5日後に事後処理に追われているマリフェルタ姫自らがレオたちを呼び出したからだ。それに加えレオがノックもなしに執務室に入ったのも原因だったりする。


「まぁ主な原因はレオ様にありますからね」

「いやいや、呼んどいてあんな顔しながら待ってるとか思わないだろ、普通」


ただレイの言葉は正論なだけに強くは否定できない。

先に述べた今回の事の本末はその時に姫から聞いた話である。だがそれが呼び出した本題ではなかった。


「何も姫さんが罪悪感を持たなくてもいいだろうに・・・」

「そのわりにはキッチリ報酬は貰うんですね」

「まぁ依頼されたからな~」

「されなくてもやっていたでしょうに」

「先に約束してて、同じ内容で依頼が来たなら一石二鳥だろ?」

「そういうところはガメツイんですから」


今、レオとレイがいる場所は崩壊しかけの守護領地、その神殿の中である。神殿自体も半壊しているために天井や壁の一部が崩れ落ちていた。そんな中二人は床に施された巨大な刻印の中央に立つ。

ちなみにエリカとクレイはスア確保の際にリミット一杯に力を使ったため極度の疲労と筋肉痛(正しくは違うが)のせいでここ数日まともに動けずルフィンの宿にて安静中だったりする。


「さて始めますか。レイ、外で守護領地内の動きを見てくれ。もし何か問題があれば報告よろしく」

「はい、わかりました」


レオのお願いに軽く返事をするとレイはすぐさま外へと向かう。

マリフェルタ姫に頼まれた依頼とは【我々が壊してしまった守護領地を修復してほしい】というものだ。ただ姫自身も全てが元通りに出来るなんて思っていないのだろう、最後に【出来る限り】と付け加えていた。


「普通、壊れた守護領地を直せるのは作った本人ぐらいなんだが・・・」


レオは床に施された刻印を見ながら呟く。


「これが修復用の刻印であるなら話は別。あとはこの場所を再び聖域と同じ環境にするだけで元通りになる」


レオが胸のまで両手でお椀を作る。橙色の暖かな光が俺の手に集まりだすとレオの足元から黄金の魔方陣が展開される。それはすぐさま広がり、床の刻印に重なる。それぞれの魔方陣は形や模様は違えど綺麗に重なり歪さは見えない。

黄金の魔方陣から魔力を受け取った刻印が起動し世界の修復が始まる。

神殿はまるで時間を巻き戻すように次々と瓦礫が本来の位置へと還っていく。空はヒビがふさがり雲一つない青空が再び姿を表す。

裂かれた大地や腐敗した木々や花、戦闘に巻き込まれいつの間にか氾濫した川なども神殿を中心に波紋が広がるように次第にその美しさを取り戻す。

花や木々に力強さが戻り、川も透き通るほど清潔な水が流れていた。だが前のように宝石のごとき輝きはない。


「さて、終いだ。――神界式呪文『聖天同地』――」


両手に集められた光を押し潰すようにパンッ!と両手を叩きそのまま黄金の魔方陣と刻印が混ざりあった術式に押し流すように両手を床につける。黄金がさらに濃く強く輝きだし魔方陣が弾け、その衝撃が神殿の壁を通り抜け守護領地内を駆け巡る。

衝撃を受けた木々や花は砕けたり散ったりすることはなく草原に風が吹いたかのように小さく揺られいる。

全体に広がり終わると最後に黄金の風が吹く。それを合図にしたかのように花や木々があの時の美しさを取り戻していた。最初に見た宝石のような世界だ。


「よし、こんなもんかな?」

「大丈夫だと思います。むしろより鮮明になっている気もしますけど」

「それは仕方ないだろう。【あの時】のレイが集めた属精霊がまだわんさかいただろうしな」


若干苦笑いを浮かべたレイだがより綺麗に出来たのならいいかと諦めるように心を落ち着かせ、最後には素直な笑みを浮かべる。


「チイタ、約束は守ったからな。じゃあな」

「また会いましょうね、チイタちゃん」


二人の声がチイタに届いたかは分からないが風によって生まれた花吹雪は彼らを見送っているようであった。


次回から新章へのエピローグになります

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