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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第二章 ウェルフィナ国
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59.降臨

こんなのチートや、チーターや!

レイの言葉には主語が抜けていた。誰もが思う疑問、一体何を【外す】のか。流れだけでみればレオにこの場から離れろと言っているようにも聞こえるが、そうじゃないことをハッキリと理解しているが一人いる。他に二人、全容を理解してはいないが違う意味が含まれていると確信を得ていた。


「レイさん・・・」

「奥方様」

「二人はそこに居なさい。危ないですから、ね?」


振り返らずにかけられた声は慈母のような優しさを感じさせ安らぎを与える。しかし、一方で冷たさを感じさせるその声からこれから起きることへの不安が募る。そんなレイはゆっくりとレオたちのもとに向かう。


「キューレさんは力をレオさんに制限されていると言ってました・・・ そしてそれはレイさんも例外じゃない、んですよね?」

「我らが相手をして傷すら付けられなかった相手よりも強力であるあの泥の塊、あれで不完全な状態とは信じられない」

「正直にいうと私、レオさんたちが来きてくださると思わなければ皆さんを連れて逃げていました・・・」

「エリカ嬢・・・」


今もなおエリカの本能は逃げろと警告を放っている。無意識に体は震えている。スアとの戦いの際ではそのせいでスピードもパワーも中途半端だった。


「【覚醒】を使えば・・・」


確かにあれならばスアと対等に戦えるだけの力を手にできるが、時間制限とその後を考えれば倒しきれなかった時のデメリットがデカすぎるのだ。


「まだまだ我らは弱い。だがいつか、いつかは! 我が主と肩を並べて戦いたい。肩を並べることが叶わぬのならばせめて、足手まといにだけはならないぐらいの力を━━」


クレイの決意にエリカも賛同する。だが今だけは、今だけは自分達が追いかける背をしっかりと目に焼けつけることにする。




「スフィアさん、お願いします」


レオたちのもと、最前線に来たレイは再びレオに懇願する。


「あぁ、わかったよ。小さな妖精さん」


互いに何処か他人行儀な発言をしながらも信頼は失っていない、そんな独特な雰囲気を出す。レオの足下からパリンと何かが弾け、光の粒子が舞い上がる。それはすぐにレイに集まりその姿を隠す。さながら光の繭だ。


「やりすぎるなよ?」

「わかっています」


次第に光は広がり、レオと同じ身長にまで広がる。


「あれは? ━━なんだ!? マズイ、マズイ! あれはマズイ!」


スアはいきなり慌てだし、迷いなく泥神に攻撃の指示を出す。力を確かめるために即死させるのではなく、なぶり殺すつもりだったが光の繭から得もいえぬ恐怖をスアは感じていた。

先ほどまでの泥とは違い、槍のように尖らせた岩が、地面からレオたちに向かって無数に生え、襲いかかる。範囲はおよそ10mとかなり広い。

一瞬にして視界全てが岩槍に埋め尽くされた。相手の攻撃速度が早すぎて攻・守ともに間に合わない。それをいち早く理解したリュハはマリ姫を庇うように前に出る。


「(ただの気休め、だとは理解している。けどな・・・)」


もしかしたら自分が盾になることで岩槍の威力を落とせるかもしれない。そうすればあとは妖精の加護で姫は死なぬかもしれない。そんな都合のいい考えだが、それだけで十分だった。


「姫が死ぬには早すぎるしな。我が義子らよ、あとは・・・」


誰にも届かない声だった。リュハは覚悟と共に目を瞑る。だが数秒とせず起きうるはずの死が未だに訪れない。ゆっくりと開かれた目に映るのは歪んだ視界と、その奥で粉々に切り裂かれた岩々だった。


「あとは任せて皆さんと共に下がってください」


いきなり真横で発せられた声に驚きながらもリュハは顔を向ける。そこには見知らぬ女性がいた。薄い紫髪に赤い目。白いドレスに薄く長い一本のレースを全身に流れるように纏う、天女が着る羽衣に近い服装。優しい顔つきからは想像しずらいが、眼からは冷酷さを感じる。

ゆっくりと片手を上げ、押し出すような仕草をしたかと思えば岩槍を抑え込んでいた風刃の壁が弾け、全ての岩槍を土に返す。唖然としたまま成り行きを見ていたリュハに後ろから声をかけられる。


「族長さん巻き込まれないように下がるぞ?」


既にマリを脇に抱えて後退する気まんまんなレオがそこにいた。


「じゃあレイ、悪い子にたっぷりお仕置きしてこい」

「わかっています。皆さんを、頼みますね」


巻き込まれないように最低限レオたちが後退するのを見届けているとレイを容易に包む程の影が出来上がる。目だけでその正体を確認すれば今度は巨岩が頭上から落ちてきていた。だが興味をなくしたようにすぐに目を離す。


「『水』」


迫りくる巨岩はレイに当たる直前に、下から吹き上がった間欠泉により受け止められ、終いには吹き飛ばれる。


「な!? も、もう一撃よ!」


再び投擲された巨岩。今度は二つ一辺に迫りくる。だが岩に全く興味を示さず、見向きもしない。レオたちが安全に退避したのを見届けたのち、やっと岩を視認した。先ほど同様に1つはレイに、さらにもう1つはレオたちに向けられている。


「『雷』」


天空から光の線が二つの巨岩を完全にとらえ直撃する。バン!と音を発てて巨岩は木っ端微塵に砕かれる。


「な、何が・・・ なぜ土魔法による強化を施した岩が相性の悪いはずの雷魔法に!?」

「こんな幼稚な魔法では私を倒すことはできませんよ?

さぁ始めましょうか。神を冒涜したこと、そして━━」


チラリと泥神を見る。スアの命令が無いとき泥神は何やら周りを見渡しながら唸っている。その意味をレイだけが理解していた。


「彼女を苦しめたこと、死よりも辛い苦痛で償いなさい」


覇気と共に放たれた金色の魔力を身に纏う様はまさに神の姿であった。

いいえ、神です

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