56.議院館
久々にあの技術たちが登場です
二手に別れた後、レオとレイは凄まじい勢いで議院館へと突っ走る。【道】のおかげで無意識に周りの人間が道を開けるからだ。数分もしないうちに議院館に到着する。
「白くてデカイ建物━━ここだな」
レオが見上げるようにして観察する建物こそルフィンの議院館である。真っ白な外壁には染みひとつない。広い敷地には2mほどの枠で石で作られた塀がある。入り口は正面と裏、だが裏門は基本的に締め切られている。議事堂や裁判所などのような建物ではなく縦長の造りになっており、パット見だけでは塔と高層マンションを足して2で割ったような外見だ。
「おそらく間違いないでしょうね。ここで【道】も終わってますし、なにより・・・」
レイが言葉と共に指差す先には門前だけでも10以上の警備員がいる。そこに入っていく人物も複数の警備に守られていた。議員たちは例外なく妖精や精霊付きである。
「さて中に入るには忍び込むしかないようだけど・・・」
塀は最低でも2m近くあることを考えればここを飛び越えるのは面倒だし、見つかる可能性もある。だからといって正面からは論外。ならば裏門からと考えるが裏門にも同様に10前後の警備員がいた。
「面倒だけどしゃーないか」
レオは地面に手を当てながら魔法を使う。
「『波魔』×『知図構成』→『空像投射』」
魔力を波のように薄く広げていく。壁などにより遮られ反射しながらも波は議院館全体を隅々まで調査する。つまりソナーのようなものだ。
魔力に反応があった場所を脳内で正確に製図していく。と、同時に空中にその過程も含めて製図の様子が投射される。
『知図構成』は自身の知識内の情報から本人が必要分だけを取り出し高速で組み立てる魔法だ。簡単に言えば『肉体強化』の頭脳特化強化版である。
そこに『空像投射』を重ねることで自身の脳内で組み上げた地図をレイにも見えるように立体映像として投射してる。
「ふぅ・・・こんなもんか?」
時間にして数分もないほどの時間で地図が完成した。映し出された地図を二人で眺めていると何個か部屋が欠けていたり、無数の点が散らばっている。
「一階のこの広い場所は恐らく本会議場だろうな。点の数から見て多くの人間がいるからな。それと・・・」
一階フロアをぶち抜いたように広い本会議場を指す指を上に滑らせると欠けている部屋で止まる。
「ここはよく分からないな。ただ魔法を弾いたような反応があった」
「ではここに議員が居たんですかね? 妖精や精霊は魔法に敏感ですから」
う~んと唸りながら考えるレオだがすぐに否定する。
「否定はしきれないな。ただ、もしそうなら本会議場も反応しないはずだ」
「確かに。なら本会議場にある点の大きさの差が妖精や精霊の力量差で間違いないですかね?」
「だろうな。そう考えるとここには守護精霊は居ないのかもな」
大なり小なり大きさの差があるが一際目立つような物は1つもない。
「時間もないし、この欠けた部屋を先に見に行くかな」
「ですね。レオ様の魔力に何人か強い反応を示しているようです」
本会議場がある方を壁越しに眺めながらレイは話す。魔力を関知できるものがいればよくわかるのだが明らかに魔力が強まった者たちがいる。
《レイ様、マテリスです。こちらは今から本格的に救出作戦を開始いたします。》
《はい、わかりました。私たちも今なら議院館に突入します》
急に無言になったレイを地図の方を向きながらも横見で見る。それだけで念話をしていると理解したレオは突入の算段を立てていく。
すぐに念話は終わり、レイが再び目線を地図に向けると何やらレオが地図にマークをつけている。位置は唯一キチンと反応しなかった部屋のまん前だ。
「よし、こんな感じかな?」
呟くように発せられた言葉と共にレイに手を差し出すと迷いや躊躇もなくレイは手を乗せる。
「『点間転移』」
次に二人の目に飛び込んできたのは見知らぬ建物の廊下の景色。下には綺麗な赤い絨毯が綺麗に敷かれ、小さなシャンデリアが廊下の端から端まで贅沢に使われている。100mまでは無いが長い廊下に部屋は3つ。その中で一番大きな扉の前にレオたちはいた。
「問題ないな・・・ で、これが例の部屋か」
「防御魔法でしょうか、何かしらの罠が仕掛けてあるみたいです」
「だな」
などと言いながらも全く怯む様子も無く扉に手を当てると「よっ」の掛け声ひとつと共にパリンッと何かが壊れる音が響く。
その後は特に何も起こることなくレオたちは堂々と正面からは扉の中に入っていく。
「なるほどな。そりゃあ厳重に守ろうとするわな」
「なかなか強力な物もありますね」
扉の先にはショーケースに並ぶ、百近く程の、見た目様々なアイテム達だった。整理整頓がされており、掃除も隅々まで行き届いているおかげか、その何れもが美術品並みに綺麗な形である。
だがチラホラ目に入るアイテムの中には強力な物もある。竜を象った木彫りのアイテムは攻撃魔法が内包されており戦場で発動すれば戦況を変えるどころか数百人を一気に殺せるほどだ。
また粘土のようなもので作り上げた眼球のアイテムは契約の魔法が内包されており、一度了承した契約を死ぬまで継続させるほどの強制力があるが、義眼のように目に埋め込む必要があり、アイテム自体に視力などの効果はない。加えて言えば一度限りの使い捨てアイテムである。
そんなアイテムたちの奥、影になるような位置に別の扉がある。【許可なく入室禁止】と書かれた部屋にはこの部屋に掛けられていた以上の魔法が仕掛けられている。
「【認識阻害】が掛かっています。一般人なら集中しないと気づけないようなレベルですね」
「この奥は何だろうな・・・ ここに置けないようなヤバイやつか?」
「見てみましょう」
罠をまたもあっさり解除し扉を開ける。そこは真っ赤な場所だった。一瞬何もかもが赤色に染めてあるのでは、と錯覚するほどに壁や床一面に赤色で様々な大きさの魔方陣が入り乱れるように書きなぐられていた。
「なんでしょうか・・・これ。魔方陣が重なりあっていてまともに詠むこともできませんね・・・ どう思います、レオ様?」
振り向きながらレオに問いかけるレイを待っていたのは驚愕をあらわにしたレオの表情だった。
「レオ、様?」
レイがどうしたのか訪ねようとする前にレオの口が動く。
「思ったよりも事態は深刻かもしれないぞ・・・」
この時点において、最悪な状況に立たされていることを今はレオだけだった。
→初登場 第1話
×初登場 第3話
それから出てきてなかったはずなんで久々の登場でした
(別に忘れてた訳じゃないよ!




