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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第二章 ウェルフィナ国
56/125

54.きっかけ

今回は短めです(ただし2000字超え

何処かで他人を、他種族を信じられないでいた。仲間だと、じゃないにしても手を取り合える相手だと信じてきたエルフに、精霊にされたあまりにもひどい仕打ちを受けたから。だから他の種族も同じだと。マユナはレオと初めて会ったあの時からいらいらを抱えていた。


「(なぜ他種族に頼る? こいつらに何ができる?)」


そんな意思は簡単に喰われた。


「やり過ぎた、大丈夫か?」

「あ、あぁ・・・」


殺意だけとはいえ、そこに明確な死のイメージが付き、さらに抵抗すら許されないほどに差があったとき自身の強固な意思など簡単に砕ける、それを強く感じていた。実際、レオからの殺意を受けマユナの中にあったのは一つ、生への渇望だけだった。生きたい、死にたくない、逃げたい、廻る思考は様々でも原点は同じ。そこに同族のための復讐心も、他種族に対しての不信感もあるはずない。


「(これじゃあたしの意思は偽物みたいじゃないか・・・)」


今マユナの中には、復讐も不信感も沸き上がってなどいない。生きていたことに心の底から安堵と感謝をしているだけだ。

落ち着きを徐々に取り戻しつつも、まるでバラバラに砕かれたガラスのように、喰われた意思たちはもとの姿には戻らない。


「レオ様!」

「うわっ!?」

「何してるんですか! 皆さんびっくりしてましたよ!」

「いや、実際に見せた方がわかりやすいかなって・・・」

「だとしても味方に本気じゃないにしてもいきなり殺意は向けないでください」

「わかった、わかったから」


【本気じゃない】、レイのこの一言にマユナを含め皆が苦笑いを浮かべる。あれで本気じゃないならば本気を、全力を出したらいったい殺意だけで何人が死ぬのだろうかと。


「敵わないな・・・」


マユナの小さな呟きを聞いたものはいない。力が全身に戻るのを確認しマユナは立ち上がる。


「お? もう大丈夫みたいだな」

「あぁ、もう、大丈夫」


落ち着いた声で答えたマユナの顔はどこか吹っ切れたような表情で、さっきまでの殺意や負の感情は見当たらない。


「ありがとう、な」

「何か言ったか?」

「いや、なにも」


自分が憎しみに支配されていたこと、それがちっぽけな感情だったこと、それをたった一つのきっかけで気づかせてもらえたことに対しての感謝だった。


「あたしは仲間の救出に行くよ」


ルルファやスアを倒しても仲間はまだ苦しみ続けているんだから早く助けたい。殺意や憎しみが、仲間への心配と一刻も早い救出への意思に変わる。マユナから伝わるまっすぐな意思は目の前のレオはもちろん、レオ以外の皆にも伝わったようだ。


「ルルファとスア、アイテムの所在に関しては俺とレイで行く」

「なら我々が救出に向かう」

「話が終わったなら早く行こう」


急かすツリナにレイが待ったをかける。


「連絡手段を構築しましょう。私とマテリスさん、レオ様とティアナさん・・・がいいです、よね?」


何故か次第に弱々しく話をするレイはティアナの名を上げたあと、諦めたように繋げる。


「いったい何を為さるのですか?」


マテリスでさえ何をするのか分からない様子で疑問をぶつける。


「今から『念繋伝心』という魔法を発動させ、互いの魂を一時的に繋げることで遠くにいても魔力を通して会話できるようにします。マテリスさんとツリナさん、マユナさんとティアナさんが基本的に行動を共にしていると思いますので、片方それぞれ一人づつ選ばせてもらいました」


説明を終えると選ばれた二人が呼ばれる。レオがティアナに、レイがマテリスの頭に手を置くと魔法を発動させる。


ーーー『念繋伝心』ーーー


青く淡い光の魔方陣がティアナとマユナの足元にそれぞれ浮かび上がる。そのまま足元から胸元まで浮上し、心臓辺りで止まると回りながら魔方陣が小さくなり、最後には体の中に吸い込まれるようにして魔方陣が消えた。

魔法の発動を確認するとレイもレオも手を離す。


《あ~、あ~、聞こえるか?》


ティアナの中にレオの声が響く。耳から聞こえるわけではなく、心からというか、頭からというか、とにかくどこからともなく響いてくるような不思議な感じだ。


《聞こえないか?》


聞こえてはいるが返事の仕方が分からないでいた。心の中で聞こえると伝えても相手に伝わっているように感じない。どうしようもないから口で伝えようとすると再びレオの声が聞こえる。


《あぁ、忘れてた。話すときは言葉に魔力を乗せるように意識して話すんだ》


言われた通りに実践してみる。


《コレデ、キコエ、テイルダ、ロウカ?》

《まぁ最初だから片言なのは仕方ないか。大丈夫、聞こえてるぞ》


どうにか伝わったようでほっと胸を撫で下ろす。隣を見ればマテリスとレイは既にそこそこ出来ているのだろう。互いに内々で話をしながら少しばかり盛り上がっていた。


「そっちは大丈夫そうだな」

「はい。この手の魔法があまり得意でないため、ノイズ混じりになりがちですが聞こえないわけではないので問題ないさそうです」

「よし! じゃ、行くか!」


こまめに連絡を取り合い情報の共有をすることを最後に伝え、二手に別れたのだった。

これからが本番

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