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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第二章 ウェルフィナ国
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49.姉

募る思い

この場に置いてマリとツリナ、カラの分霊は話についてこれていないようで目まぐるしく変わる状況に対応できないでいた。


「どうか、姉を止めるために・・・」


その中でもマテリスだけは願い続ける、目に涙が浮かぶほどに。


「貴方の必死さは分かります。ですが私は今はレオさ、」


話を遮るようにレイの頭上から影が射す。レイがふと、上を見ればそこには大きな手があり、次の瞬間には優しく頭を撫でられていた。


「まぁまぁそんな焦らなくてもいいんじゃないか? 話ぐらい聞いてみればいいさ」


レイの頭を撫でながらレオは説得?する。


「で、ですが先に依頼が・・・」

「ダークエルフの依頼はそもそもは俺が受けた依頼なんだからレイが一時離れても大丈夫だ」


レイからすれば、確かに必死で願うマテリスを無下に断るのは心にくるものがあるが、今の自分はレオの従者であるという意識を優先するつもりであった。だがレオがそういうのであれば。


「わかりました。とりあえずはお話だけでも聞きます」


レイの言葉にマテリスは感謝の言葉を言おうとするがその前にレイが遮る。


「ですが、受けるかどうかは話の後で決めます。いいですか?」

「はい、もちろんです」


レイの答えにマテリスは少しばかりの安堵を得られたが、まだまだそこには必死な部分が見え隠れしている。


「精霊はどの様な形であれ、生まれ出たその時より神への絶対的忠義を持っています。それは私たちの存在意義でもあるからです。

私と姉は同時期に同じ場所で生まれた精霊というだけであり本当の姉妹と言うわけではありませんが、私は彼女を姉と慕い、彼女は私を妹のように可愛がってくれました」


マテリスが始めに話し出したのは【止めたい】と願う姉についてだ。生まれた時より強大な力を持つ精霊であるが特性や性格、地位なども違う。さらにいえば同時期に同じ場所で精霊が二体生まれるケースはかなり珍しいことだ。

そして精霊の地位、階級に関しては精霊の王が神の信託などにより階級を上げるようだ。


「今、私の姉は【守護精霊】として長きにわたりこの地を守って参りました。名は・・・スア」


マリとカラの分霊はその名にかなり動揺している。


「そして長らく神に忠義を捧げてきた姉ではありましたが・・・

いつからか神の存在を疑うようになったのです・・・」

「神って奴は気まぐれな奴等だからな。望んでもないのに人の前に間髪いれずにやって来るやつも居れば、望んだ時には現れるどころか御告げも無し、だからな」


補足するように話をするレオは【間髪いれず】のところでチラッと目だけでレイを見る。レイもそれをわかったのか少しばかりばつが悪そうに肩をすくめる。


「絶対の忠義もその存在を知らなければ、見ることすら叶わない相手ならばいつかは廃れていってします・・・」

「見たこともない相手を信頼し続け、その命を実行し続けることが出来る奴なんているわけないからな」

「それで、いったい何を止めたいのですか?」


忠誠心を少しずつ失い、ただ機械のように決められた流れに沿ってきた精霊をどうしたいのか、肝心な部分が見えてこないでいる。


「4年程前、互いに多忙になった私たちは久々に会うことが出来ました。ですが姉は別人のように変わっていたのです。神への忠義の意思はなく、性格も明るく優しいものから暗いものに変わり、最後には神との謁見を強く望んでいました。話をしたのはたった数分ではありましたが不気味さと異様さを知るには十分だったのです。そして、」


落ち込んでいると表現するべきか、嘆き悲しんでいるというべきか、負の感情に支配された表情がそこにはあった。


「貴方の姉であるスアと共にダークエルフを狩るルルファとかいう人物の話を耳にしたのですね?」


顔は伏したまま小さく、だがはっきりとマテリスは首を縦に振る。


「信じたくはありませんでした。姉がダークエルフを襲うようにエルフの議員を使ったこと、そしてその目的が【聖域】であること」

「なぜ目的が聖域だと分かるのです、か?」


ここで初めてマリが質問する。


「ダークエルフへの攻撃が始まり、しばらくしたのちダークエルフの守護していた【聖域】が荒らさ、そしてその多くは聖域としての機能を失うほどに破壊されていました。

おそらくダークエルフを捕らえ、聖域の場所を聞き出しているのだと思います」


まるで自分の罪を自白する罪人のように一つ一つゆっくりと言葉を吐き出すマテリスの表情は未だに姉がやったとは信じられないと表情と自分のために他を平気で陥れている姉の行動に対する恐怖が混ぜ合わせたようであり、からだ全体がわずかにだが震えている。


「聖域は神が現れる可能性が高い場所。ですが、なぜ破壊まで?」

「候補を調べ、潰しているのでしょう。聖域としての機能を失えばそれは他とは変わらない普通の場所になりますから」


聖域を壊すことで神の降臨する場所を限定させようとしている、それが皆が出した結論だった。


「一つ、質問をしてよろしいでしょうか? マテリス様」


問うのはカラの分霊だ。


「私は守護精霊カラ様の分霊です。今の話を私を通じ本体も見ていたのですが本体からの質問です。マテリス様自身でスアを止めることは出来ないのですか?」

「それは・・・」

「僕が話すよ」


話に入ってきたのは、今まで沈黙を貫いてきたツリナだ。


「詳しい話は省かせてもらうけどマテリスは僕との半一体化状態なんだ。それぞれ個々の存在ではあるがマテリスの力の半分近くが今は僕の中にあるという風に考えてもらうのが分かりやすいかな」

「(なるほどなぁ~。精霊と一体化してたらそりゃ【視認解析】じゃ見れないわな。二人のステータスが重なってるわけだし)」


ツリナの話でエール王国に居たときにツリナを覗いた時を思い出していた。


「マテリスさんの事情はわかりました。その上で率直に質問します。・・・スアさんを殺すことを許可できますか?」


マテリスの心臓が大きく跳ねる。その一言はマテリスが唯一口に出したくない言葉であった。

叶わぬ思い

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