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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第二章 ウェルフィナ国
42/125

40.種も仕掛けも・・・

It's magic!

道場内には緊張感と不穏な雰囲気が混ざりあった嫌な空気が充満していた。


「『風』よ」


そんな空気を壊すしたのは先制を許したレイであった。短縮詠唱により一言までに圧縮された呪文を口にすれば、風なんて生易しいものではない突風が吹き荒れる。


「切り裂け『風刃の境界』」


吹き荒れる突風がレイの回りに渦巻くように集まると、十数個の風の球体になる。球体の中は風が暴れ狂うかのように渦巻き、ひしめき合っている。レイが片手をあげる動作に合わせ球体が敵に向かって突撃する。


「さすが【妖精】。短詠唱であそこまでの魔法がつかえるとは・・・」

「はん! あの程度の魔法ならあたい一人で何とでも出来るさ!」


マユナは双剣を構えたまま襲い来る風に向かっていき、切り捨てる。


「魔法を切り裂いた!?」

「どうした、エリカ? お前も【あの時】やってただろ?」


レオのいうあの時とはエリカが【覚醒】したときの話。エティンによる巨大な火球を一刀のもとに切り捨てたあの時のことだ。


「た、確かに。ですがあの時は無我夢中でしたし」

「エリカ嬢、魔法は魔力の塊です。ならばそれと対抗するために必要なのは【魔力】または、それに匹敵する何かです」

「そう、だから相手の魔力に負けないぐらいの魔力で対抗する。

今のは双剣に魔力を纏わせて切り裂いただけだ」

「か、簡単に言いますけどかなりの難易度だと思うんですが・・・」

「そんなことよりちゃんと見とけよ」


レオに言われ視線を戻せば新たな展開が起きていた。


「そらそら! そんな程度じゃあたい一人にだって勝てないぜ!」


既に半分近くの球体を切り裂かれ、再び接近を許そうとしていた。だがレイに焦りはない。焦る必要がないからだ。

その証拠だといわんばかりに挙げられていた手に、今度は力強く握り拳を作る。いや、見た目だけでいうなら何かを握りつぶすような動作だ。


「『裂境』(『・・・』)」


小さな声と共に【それ】は発動された。相手を攻撃するにはあまりにお粗末だった球体が、一度一回り小さくなったかと思えば次の瞬間には弾け、一つにつき半径1mほどにまで及ぶ無数の風の刃が周囲を呑み込む。それが切り裂かれた球体を含めすべてに同時に起きたのだ。


「なっ! ぐぁああああああ!!」


球体群の中心にいたマユナは切り捨てたばかりの球体の爆発に巻き込まれ、足を止めた瞬間には既に他のものの爆発から逃れる術を失い、一気にその身を切り裂かれる。


「グフっ・・・ はぁはぁ、うっ、ぐ・・・」


この場とマユナ自身の耐久力のおかげでどうにか倒れずには済んだが、傷はないもの身体中が切り裂かれた証明として全身の装備がズタズタになっている。さきほどまでの威勢はなく、剣を握れても持ち上げることが出来ず腕はだらんと下におろし、足も生まれたての小鹿のように覚束ない。だが目だけは未だ、しっかりとレイをとらえ獣のごとく捉えていた。


「(まだ、戦う意志が消えていないんですね)『かz・・・」


吹けば倒れそうなマユナを、文字通り吹き倒そうと再び風の魔法を発動させようとしたレイを再び矢が狙う。

レイも警戒を怠っていた訳ではないが、その矢は避けることなく横を過ぎる。レイへの牽制であり、威嚇の矢だろうか?

だがそれが違うことはティアナの表情から読み取れた。明らかに狙っていたのに外れたことへの驚きの表情である。


「(な、なぜ!? しっかりと標準は合わせたはず!)」

「終わりですか?」


レイの静かな声により一層の不気味さを覚えながらも攻撃を再開する。魔法の矢による攻撃は矢の装填の時間がぐっと短縮されるため、ある程度の連射が可能である。秒間にして普通なら5、6矢なら多い方なのに、ティアナは10前後と異様なまでの速さである。


「(魔法において【固】が苦手な私では、まともな魔法は使えない。だが【流】だけは一族一と自負している!)」


ティアナは【流】による魔法の構築を常人の倍の速度で行える。そこに【弓】にもとから備わっている能力、【矢の精製】に【固】を丸投げする形で矢を作り出す。そのため、連射と速度に関しては申し分ないが威力と飛距離が弱いのだ。


毎秒10以上もの矢がレイめがけて波のごとく押し寄せて来る。

レイはそれを容易く避け始める。矢の雨の中を前後左右上下、空中でダンスを踊るように軽々と避け続ける。


「(狙っているのに気づけば狙いからずれた位置に矢が・・・)」

「な、なんですか【あれ】!?」


ティアナと同じタイミングで疑問の声をあげたのは毎度お馴染み、エリカだった。


「うるさいぞ、エリカ」

「す、すみません・・・ ではなく、【あれ】は一体どうなってるんですか!」


エリカが指差した先はもちろんレイである。ことごとく矢を避けている【ように見える】。


「さっきから明らかに狙いがレイから外れてますよね!?」

「そうだな。立ったままでもギリギリ避けるぐらいにレイの【横】を狙ってるな。レイは適当に動いてるだけだろうし」

「相手の意図が読めません。あれだけの攻撃群なら【直接狙う】方が確実なのに何故わざわざあんな無意味なことを・・・」


エリカたちからとティアナが受けている印象に差が出始めた頃、矢の攻撃の隙間から別の何かがレイを狙う。双剣だ。

ボロボロの体でありながら溢れんばかりの力で無理やり飛び込むようにレイに接近する。後の事など考えていないであろう飛び込みは数本の矢を受けながらもレイに接近し、正真正銘最後の力で剣を振るう。一度しか振るうことしかできなかった剣はレイを捉えたかに見えたその瞬間には空を切る。レイと交差するようにすれ違いマユナは勢いで壁にぶつかり、そのまま気を失った。


「マユナ! ・・・今のは、」


ティアナに見えたのはエリカたちと同じ光景だった。弱り果てていたとはいえ双剣士のマユナが【空振り】した光景に違和感が膨れ上がる。


「あと一人ですね」


そんな中、やはり静かな声が響くのであった。

あるから!種も仕掛けも、あるから!

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