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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第二章 ウェルフィナ国
32/125

30.刻印

進むような進まないような

エール王国からエルフの国、ウェルフィナ国へと向かう参道に遠目から見ても目立つ馬車がいた。引く馬は体長2、3mほどある巨体で色艶は綺麗な黒、筋肉質のある意味立派なものである。そしてそれが引く荷台もこれまた立派なもので、少し大きめな小屋に車輪を付けているかのような構造である。車輪との連結部分に秘密があるのか、道が悪い場所でも荷台自体は大きく揺れることは滅多にない。


「すごいですね。・・・もう何度目になるんでしょうか、私がレオさんたちに会ってから驚いているのは」


そんなことを呟くのは場所の中で揺られるエリカである。先程の鎧を脱いでおり、今は私服姿だ。そんな彼女は外を眺めている。

窓から見える外の景色は道のせいもありガタガタ揺れているのだがエリカ自身は一切の揺れはない。これは荷台の性能のせいではない。

それを再確認するためにエリカは、視線を窓の外から中へと変える。

そこにはまさかに快適空間と呼べるような景色があった。ソファや絨毯、リビング、キッチン、トイレに風呂、個室に至るまで有りとあらゆるものがそこにある。しかも、【ここへ】の入り口の横には二階に上がる階段まである。どう考えても荷台の広さと【中】の広さが合っていないのだ。


「まだ慣れないのか?」

「レオ様、まだ走り出してから一時間も経ってませんからね?」

「え、いや、時間とかではなくて・・・」

「ん? ここの説明はしただろ?」


レオの問いに対して、それはそうですけどと言葉を濁すエリカを見かねてレオが再び説明に入る。


「さっきも説明したから簡単にしか言わないからな。

【ここ】は荷台に【時空間魔法】、【結界魔法】を【刻印】して作り上げた、いわば疑似空間だ。俺の『次元収納』と同じような場所になるな。

ただし違うのは【結界魔法】があるかどうかだ。【時空間魔法】は空間と時間の伸縮とその固定、がメインになる。実際にこの場所は二階も含めて、本来の荷台3倍以上にしてあるし。

で、【結界魔法】は空間の中での位置を固定する魔法。これだけ聞いたら話がややこしいだろうけどな。

【時空間魔法】は大雑把な空間で、これだけなら上下左右前後の概念が薄い。重力という概念もないから当然と言えば当然だけどな。

変わって【結界魔法】は、空間と空間を断絶し、範囲指定した内の位置を固定、修正する。この修正っていうのに術者に必要な環境っていうのも含まれてるわけだ。だから【時空間魔法】には無いはずの重力や空気などの概念が生まれる。

だから面倒だけど【時空間魔法】で範囲を広げて【結界魔法】でその範囲の中で必要な部分だけを指定して固定することでこの広々快適空間が出来てるわけだ。

ちなみに外の道が悪いのに揺れを感じないのは【結界魔法】によって【この場】と【外】が断絶されて別空間になってるから。

オッケー?」


最後の最後で何やらうざったらしく聞いてくるレオに、イラッときながらも、なんとなくは・・・、とエリカは頷く。

だが実際にエリカの理解は、曖昧なままなのだ。彼女からすれば【Ⅱ界式】までの知識しか持ち得ないため【Ⅲ界式】以上の魔法に関してはまったくと言っていいほどに知識量が足りないために、なんとなくとなってしまうのだ。それに・・・


「レオさんが当たり前のように言った【刻印】って古代の技術ですよね?」


この世界において、物に魔法を付与するということは少なからずはある。だが永続的に付与することは出来ない。だからこそ、魔石を燃料としたアイテムを作ることで代用品にしているのだ。


「それはこの世界の話で、俺がいた場所では当たり前の技術だったからな~」

「エリカさん、一応補足しますけど、レオ様のいう【当たり前】は最高ランクでの、ですから。」


エリカにもそれはわかっているのだろう。小さく頷く。


「それに【刻印】ならさっきから何度もやってみせてるだろ?」


その言葉を聞き、初めてエリカはレオの不思議な行動の意味を知ることとなった。

レオの不思議な行動とは、部屋の一角、4人は掛けれるほどのL字ソファとその前に設置された机を独占するほどに大量の武器を広げて、一つ一つ手に取り何やら魔力を流しては異空間へとしまうの繰り返しのことだ。

広げられた武器は机側に長剣、ソファ側にナイフというふうに分かれているがどちらも、エール王国で買ったダマスカス鋼の武器だ。そして先に作業をしているのはナイフ側である。

レオは作業が終わったナイフを持ち上げて刃の部分を持ちながら逆持ちし、ハンドル側をエリカに見せる。


「見えるか? 手持ち側に魔方陣があるだろ?」


レオの言葉を確認するように目を細目ながら魔方陣を探す。すると、本当に小さな魔方陣が見える。ナイフを普通に持てば余裕で隠せてしまうほどの大きさである。


「これが【刻印】な。今、付けてるのは【攻撃強化】。

効果は名前通りだな。普通はナイフに付けるなら【鋭利強化】とか【貫通強化】だけど、俺の場合は金属の【硬度】を威力に変化させるから【攻撃強化】。付与されたナイフによるあらゆる威力の増加を意味してるから、こいつを媒体にする魔法の威力も上がるんだよ。」


一通り説明したらまた異空間へとしまっていく。


「エール王国での戦いとかで予備の鉄ナイフ合わせて、ほぼ使いきったから今こうして用意してるってわけ」


話ながらも作業は進める。1本の作成に数秒という早さで片付けていく。レオの動きに違和感を覚えなくなってきているエリカにたいして再び妖精が補足に入る。


「と、簡単にやって見せてますけど、プロの刻印師でもナイフに【強化】付与をするのに1本1分かかりますから。

魔方陣を彫り入れて、そこに魔力を流して定着させる。という行程があるためですね。

レオ様は頭の中に魔方陣自体が完璧な形で保存されてますから、魔方陣を彫り入れる作業と魔力の定着を同時に出来るため数秒で仕上げることができます。」


テキパキ作業を続けるレオを細目を向けるレイが続ける。


「はっきりいうとレオ様が異常なだけですからエリカさんも気を付けてくださいね。そのせいでいらないトラブルとかしょっちゅうありますから」


状況が浮かんだのか、うわぁと言いながら苦笑い浮かべるエリカと深いため息をつくレイに体裁が悪くなったレオが二人へ促す。


「ほ、ほら! そろそろエリカの特訓をやって来てくれよ

二階の様子も確かめてほしいからな!」


そんなレオに二人は顔を見合せ、小さく笑いあってから2階へと上がっていった。残されたレオはソファに深くもたれ掛かると、「これからはこんなのが続くのか?」と一人ごちるであった。

どうやら第2章も長くなりそうだ!

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