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27.大事な話

その男、照れ屋につき!

レオとエリカ、そしてキューレの三人は町の中を歩いていた。

話があると、レオから振られたエリカがドキドキしながら話を待っていたのだが「武器屋にも行きたいから道中に話す」と言われたためにこうして町に繰り出し、馴染み?の武器屋に向かっているのである。

そんなのんびりとした道中だがエリカのドキドキは未だに続いていた。


「(こ、今後について・・・ しかも俺たちって。 あの場には私とレオさんだけしか居なかった。 ま、まさかそれってパ、パートナーの話!? い、いえ、落ち着くのよ。レオさんはそれについては拘ってないって言ってたし! でも可能性は・・・)」


などと、エリカは独りでにヒートアップを繰り返していた。確かにあの場にて魔従契約のことで今後二人としてはどうするかは話してはいなかったのだ。

そんなエリカの考えは、とうとう動きにまで現れているようで、頬に手を当ててイヤイヤと顔を左右に振ったかと思えば止まり、再び深く考えるように顔を下に向ける。また顔を振るの繰り返しを次第していた。そんなエリカを心配に思ったレオが声をかける。


「エ、エリカ? 大丈夫か?」

「ハッ! えっと、あの、えっと!」


思考の渦の中から覚めた途端に目の前に思い人いたこと、そして考えていた内容が内容のために思考が一瞬止まる。どうにか誤魔化そうと、必死に頭を働かせて周りを見渡し、二人から少し離れる形でゆらゆら力なく歩くキューレを見つけた。

そこから生まれた疑問を早口で聞く。


「あ、あのまましばらくはキューレさんのままなんですか?」

「? あぁレイとの入れ替わりについてか。

そうだな、あのまま幽霊みたいについて来られてもあれだしな。

エリカ、ごめんだけどあそこの店で一つものを買ってきてくれないか?」

「あの店ですか? わかりました・・・」


頼まれた通りの店から買い物を済ませてエリカが頭に?マークを浮かべながらも戻ってくる。レオはキューレの側で子供を慰めるように寄り添い歩いていた。


「買ってきました。 けどこれって・・・」

「いいから、大丈夫」


ニコッと笑うと、買ってきた物を隠すように手に持ちキューレに向き直す。


「キューレ、いつまでも落ち込むなよ、な?」

「はぁ、もうわかっ、モゴッ!?」


キューレが口を開けたところに構わず買ってきた物、サーターアンダギーのような菓子を詰め込む。サーターアンダギーと違うのは、恐らく砂糖であろう塊のコーティングが所々に付いているため、見るからに甘そうな菓子である。


「モゴ、モゴモゴ!?」

「ほらキューレ、食べ物を粗末にするなよ」


そんな言葉にさっきまでの暗い雰囲気のキューレからキリッとはした雰囲気に切り替わる。ただしそれはあくまで目元だけであり、端からみたらギャグのような空間である。


「モゴ、モグモグ・・・ ――――!?」


観念してお菓子を噛み始めた瞬間、悲鳴みたいな高い声をあげたかと思うとポンッと爆発したような音と煙があがる。煙は数秒とかからずに晴れると、そこには嬉しそうな笑みと共にお菓子を体全体で頬張るレイがいた。


「あのぅ、これって?」

「あの二人には明確な好き嫌いがあるんだけど、それがまぁ真逆の位置にあるんだよ。今回で言えば、キューレが甘いものが嫌いで、レイが好き。だから、甘いものを食べたくないキューレと食べたいレイとの意思が噛み合って入れ替わった、てな感じだな。

ちなみに、レイは辛いのが嫌いで、キューレが好き。」

「それってつまり、無理矢理入れ替えたって風に聞こえるんですけど・・・」

「そうとも言えるか、な?」

「レオ様? キューレが中でワアワアと五月蝿いんですが・・・」

「レイ、申し訳ないけど我慢してくれ」


レイははぁ~と深いため息をつく。


「あとで甘いもの、お願いしますね?」

「はい・・・」


そんなやり取りをしているといつの間にやら目的地に到着した。

まだ何度も来ているわけでないはずだが、レオの性格なのか、常連客のように何の躊躇もなくドアを開けて気軽に入っていく。

そこには「待ってました!」と云わんばかりに店主であるディースが出迎える。


「ディースさん珍しいですね、受け付けにいるなんて。

いつもは奥の鍛冶場で作業されているのに。」

「あぁ、そこの若造に大量に武器の発注を受けてな。ここ数週間はそいつの武器のみで手一杯だったもんで、さすがに疲れたからここで待ってたんだ。」

「全部出来上がったって聞いたから来たけど大丈夫か?

かなりの量だったはずだけど。」

「俺は嘘が嫌いだ。それに今、嘘をつく理由がねぇ。」


こう言ってすぐ、下から武器を入れた木箱を取りだしカウンターの上に置く。そこには数にして50以上にもなるダマスカス鋼の武器があり、種類は主にナイフや長剣である。


「依頼通りだ」

「触ってもいいか?」


ディースに問いかけながらも答えを待たずに一本一本直に触り、感触を確め武器の精度を見ていく。その真剣さにディースを含むこの場の全員が黙ってしまうほどだ。


「確かに、いい出来だ。」

「気に入ってもらえて何よりだ。あと、依頼を受けた際にも言ったがさすがに一月足らずで50以上の武器を作るのは俺には出来ん。中には元からあったものや、中古を軽く打ち直しただけのものもある。それだけは忘れるな。」

「あぁ大丈夫だ。軽くだけど見させてもらった中には粗悪な物は一つもない。ホントにいい出来だった。」

「ふん、ならさっさと持っていきな。俺は疲れたから寝させてもらうぜ。店じまいだ。」


そんな台詞を吐きながらくるりと背を向けて奥に消えていくディースのことの節々にはえらく機嫌のよい声が混じっている。

どんな表情をしているかは顔が見えないため分からないが、声から察するに嬉しそうだ。

それに合わせるようにレオも嬉しそうに答える。


「また、よろしくな」


レオの問いに「また来な」と一言答えると角を曲がり完全に見えなくなる。

武器を『次元収納』の中に放り込み、店を後にした。


「あ、ごめん。忘れてたな。」


唐突に声を出したレオはエリカの方を向く。


「俺たちにとって重要なこと・・・


なぁエリカ、エルティダイトってなんだ?」

「え?」


ドキドキしながら待ち望んでいたはずの質問の意図が読めず、エリカは間抜けな顔をさらすのだった。


次回で第一章終幕!(予定)

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