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25.神界式呪文

まだ終わらない第一章(/´△`\)

エリカに迫る巨大な拳が目の前を覆い隠し死を実感させられる中、そんなレオのなんとも間の抜けた声が響く。

次の瞬間に目に飛び込んできたのは上から下へ、天から地へ走る光である。触れるもの全てを焼きつくすその光はエティンとエリカの間に走り続ける。いかなるものも通さぬ盾であり、いかなる存在をも消し去る剣である。

気がつけば晴れていたはずの天気が、次第に黒い曇が覆いゴロゴロと音まで成り始める。よくよく見れば天気が悪化しているのは自分達がいるところのみである。その範囲はここにいるすべての魔物を十分に囲える範囲であった。


「い、つの、まに・・・」


敵から身を守る雷に安心感を覚え、周りを見渡すゆとりができていた。そんなエリカの横にレオが近寄る。エリカは悲鳴を上げる身体に鞭をうちレオを見る。その顔には苦しさだけでなく、自分に対する不甲斐なさでばつの悪そうな表情が見てとれる。


「れ、レオ、さん・・・ すm、」

「エリカ、ありがとな。 お前のおかげで苦もなく魔法が組めた。

辛いだろうからあとはそこで大人しく見とけ、な。

・・・すぐに終わるから」


そんな台詞を吐くレオからは金色に輝く魔力が吹き上がる。

それを合図にでもしたかのように雷がさらに激しく響き渡る。


「さて、エティン。ここまで来たら帰れとか言わない。

長いことかけちまったからな・・・ 終わりにしよう。」


――神界式呪文『神罰天雷』――


名による発動と共にレオの魔力が膨大に膨れ上がり、足元に金色の魔方陣が現れる。そしてエティンや部下の魔物、すべてを囲うほど巨大ではあるがレオと同じ魔方陣が彼らの足元にも出来上がる。

それを合図に魔物側の魔方陣が吸い込まれるように天から雷の雨が降り注ぐ。雷に撃たれるたびに次次と魔物が滅びていき、地面すら抉る様子からその威力がうかがえる。オーガやゴブリンは言うまでもなくサイクロプスすら一撃のもとに沈んでいく。

そして彼らのボスであるエティンもその例外ではない。初めは自身の魔法や耐性により一撃二撃は防いでいたが幾度となく降り注ぎ、そのすべてが己の命に届き至る威力に最後は、なす統べなく沈む。

立っている魔物が居なくなっても尚、黒雲消えるまで敵の殲滅を続けた魔法は、最後に範囲すべてを呑み込むほどの特大の雷を落とす。魔法の効果が切れると雲は晴れ、もとの青空が顔を出す。

数百m以上の範囲にいたはずの魔物の姿は影も形も無い。代わりに黒焦げた地面一帯が大量の魔石と太陽の光によりキラキラ光り続けていた。


「よし、帰るか」


-----------------------------------------


エリカは現在、エール王国内にある聖マルベリア大聖堂にいた。

この世界における教会や聖堂は病院のような役割を持っている。

主な活動は神への奉仕や祈りなどになるが、呪いの浄化や治癒魔法による治療なども行っているである。神への奉仕により選ばれたものには治癒魔法が授けられると云われるほど教会の人間には治癒魔法が使えるものが他に比べて多く、地位もそれなりに高いものが多い。治癒魔法が使える者のほぼすべてが教会の関係者であるといっても過言ではないほどに。

エール王国から帰って来てすぐに大聖堂にて治療を受けたエリカだが【魔従契約】と【覚醒】のダメージが深刻で、筋肉から骨にいたるまでズタズタになっていた。そのため集中治療の必要があり入院という形になっていたのだが、今日になりやっと退院を許可されたのだ。


「魔物による侵略?からすでに一ヶ月経ってるんですよね」


そんなエリカが真っ先に向かった先は、王城・・・ではなくレオたちがいる宿屋だった。

ノックをしたのちレオから返事がきたために部屋に入る。


「失礼します。レオさん、あのぉ・・・え?」

「よ、エリカ、大丈夫だったか?」

「は、はい。大まかなものは治癒魔法で一週間もせずに治ったんですが筋肉などに蓄積されたダメージは治癒魔法でもどうにもならなかったようでリハビリも兼ねたら時間がかかりました。

あのぉ・・・それよりも、それはいったい?」

「あぁ、これ?」


そこにはレオに膝枕される形でキューレが寝転んでおり、ゴロゴロと左右に揺れ続けていた。そんな彼女をレオが猫でも可愛がるように頭を撫でているのだ。

エリカからすれば今まで見たことない一面であり、これまでの一面の真逆でもあるために驚いている。

エリカを見つけたキューレは一睨みをしてまたゴロゴロしだす。


「まぁ端的にいうと拗ねてるんだよ。

あの依頼から戻ってきてからずっと部屋ではこの調子でさ。」

「拗ねてねぇし! ただお前だけ楽しそうに力使ってズルいと思っただけだ!」

「それを一般的には拗ねてるって言うんだよ」

「(それに新しい契約までしやがって」

「ん? 何か言ったか?」

「ちっ!もういい!」


レオの膝枕から起き上がるとエリカをチラッと見るとため息一つつき奥部屋に消える。


「なんであんなに拗ねて?いたんですか?」

「う~ん、まぁ、原因の一つは俺が【神界式呪文】を使ったことに気づかれたことだな。ほら、あいつは戦うことが好きなやつだから全力で相手を倒したいと思う傾向があるんだよ。ただ暴れたいだけとも言うけど・・・

で、その力は現在俺が封印している形?になっているらしく俺の許可なく本気が出せない。そんな中、俺だけが好き勝ってやれてることに怒った?形になるんだろうな。

(まぁ元々神様だからか神の力には敏感だし・・・)」

「【しん界式】?っていうのはあのときの魔法の界式ですよね?

聞いたことないですけど・・・」

「そうか、そうだよな~。

【神界式】ってのは神の界式、つまり神が使う領域の魔法に分類される魔法だ。その力は、国を滅ぼすことも容易い。【Ⅳ界式】の上、【魔導】よりも高難度の魔法。

とは言っても、これもピンからキリまである。今回使った【神罰天雷】はその中でも低位の魔法になるから、さすがに国を滅ぼすほどの力はないな。」

「・・・」

「? エリカ? どうかしたか?」


エリカはサラッととんでもないことを話すレオに女性としては駄目な、口をポカンと開けたまま呆然としていた。


「い、いえ、大丈夫です!

(今までも凄い凄いとは思ってましたけどまだこんな力まであるなんて・・・)

つまりキューレさんが不機嫌なのはそれが原因なんですね。

・・・あれ? ならなぜ私は睨まれたんでしょうか?」

「たぶん、それが拗ねてる原因の2つ目、なんだろうな。たぶん・・・」


レオはすごく言いにくそうに苦笑いを浮かべるのだった。



もう少しだけ続くんじゃい!

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