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23.神魂の盟約

まだまだ戦いは続く!

レオとエティンの会話の内容にエリカは少し呆けていた。「レオさんは魔物と戦いために来たのではないの?」と戦う気満々でこの場に訪れたエリカからしたら当然の反応だろう。

しかし、それも仕方のないことだ。何せエリカはまだ、レオの人となりを知らないのである。

彼は基本的にはめんどくさがりであり、自身の利益にならない戦いを好むんでやるような人間ではない。今までもそうである。自身の肉体のために仕方なくレベルを上げ、強制された戦いを生き延びるために戦い抜いただけなのだ。この世界に来てからのことを思い出してみても、彼は自ら戦いを望んだのは武器のため、しいては自分のためになる戦いの今回を含め2回だけであり、それ以外では【やるしかなかった】だけに過ぎないのだ。だから今回もレオからしたら【戦わずに済むならそれでいい】という意識しかなくそれ以上でもそれ以下でもない。


だが今のエリカにはそれが分かるわけもなく、自身に浮かんだレオへの感情は単純に「なぜ?」であった。エリカ、いや、エール王国からすれば、たとえこの場で魔物が大人しく退いたとしても、再びいつやつらによる侵略があるか気が気でない状態が続くだけである。だからこそ、この場で最悪でも魔物のボスだけでも仕留めておきたい、出来ることなら全滅させたいと思うのは今後を考えれば当然だろう。さらにここにそれができるうる人物がいる状況ならばなおさらそう考えても仕方ない。それ故にレオの【見逃す発言】に対して逆恨みではあるが裏切られたと思ったことも仕方ないだろう。


「くっ」


小さくもハッキリとした悔しさを表す。エリカは自身の中に渦巻く疑念により、戦いの合図などなく始まった戦いに対して一切の身動きが取れなかった。

ゾッとする思いが駆け巡る。先ほどからの疑念が完全に消えたわけではないがそれでも今感じた恐怖はそれを押さえつけるには十分である。エリカの目に映るのは4mという巨体から繰り出された一撃で抉られた地面である。


「(狙いが私なら今ので死んでいた・・・)」


本来一瞬たりとも気を抜いては行けないはずの戦場で、思考の停止と状況判断を怠った。戦士としてはあるまじき行為である。


「(いつもならこんな・・・ なぜ・・・? ) はっ!?」


エリカは新たな疑問の答えを見つけ顔を向ける。その先には自身では手助けすら出来ぬだろう攻防を繰り返すレオの姿があった。


「(私は・・・無意識に頼っていたのか・・・

彼の側であれば何が起きても安全であると・・・)」


レオを無意識に頼る、いや全てを彼に投げていたからこそ、その頼りがなくなると思った瞬間に逆恨みをしてしまった。


「(私は最悪の人間じゃないか・・・!)」


いつでも加勢に入るために握られていた剣の柄にさらに力を込める。その力はまるで柄を握り潰さんとするほどに強く、ギチギチと音がなる。


「(強い彼に頼るだけなんて・・・

だとしたら私はなぜ戦士になった!

自分の手で皆を救った父上に憧れたから、だから私も、と!)」


考えれば考えるだけ悔しさと恥ずかしさが湧き上がる。


「(私も・・・)戦うんだ!

彼と並んで!」


戦いの音に書き消されてしまうほどの声であったが確かな意思と決意がそこに現れていた。今までの疑念など全て消し去り、エリネアにてボロボロになりながらも村人を救ったときと同じ、強い目をしたエリカがそこにはいた。

そしてそれに合わせるように、その気持ちに答えるように意中の人物から声がかかる。


「エリカ!手を貸してくれ!」

「はい!」


彼の言葉に力強く答える。そして頼りにされたということから嬉しさすら込み上げる。一切の迷いも油断もなく、直ぐ様『肉体強化』をかけレオに迫り来る一撃を一閃にて弾き返す。


「説明する時間はないから手短に話す。」


エティンの攻撃を弾きできた隙にレオが話し出す。エリカはエティンの追撃を回避メインに受け止めながらレオに耳を貸す。レオ側への攻撃を完全に止めれたわけではないので余裕はさほどない。


「今から擬似魔従契約して一時エリカ、あんたを強化させる。

俺が魔法を発動させる時間だけ作ってくれ。」

「はい!」


エリカの迷いない返事に一瞬呆けるが直ぐ様切り替えて契約に移る。

魔従契約とは魔法師が自身のパートナーとなり得る人物と契約することで魔力や魔法を共有できる力である。使える魔力や魔法はそれぞれの技量などに左右されるが契約発動中は基本的に能力が一段階格上げされるため大幅な戦力アップを望める。

ただし魔力が共有であるが故にパートナーが無理に魔法を使えば魔法師がただの的に成り下がる可能性もあるためにパートナーは本来、慎重に選ぶ必要がある。そして擬似契約とはその場かぎりの契約であり、魔法師と従者というよりは対等な立場に近い契約となる。


レオは自身の中に刻まれた魔方陣を思い浮かべ、右の手のひらに魔力使い書き描くと自分の目の前でエティンの攻撃の一部を肩代わりしているエリカに準備の完了を告げる。


「次のタイミングで攻撃を弾いたらこっちを向いて片手を出してくれ!」


前を見ながら頷き、エティンの一撃目を回避し、追撃を力一杯弾き返す。先ほどまでとは違う威力にエティンも思わず必要以上に後退する。その隙にレオに言われた通り後ろを向き剣を持たない左手を上げる。

レオはエリカの左手と右手を合わせ宣言する。


「今ここに我ら二人を魔従契約を交わす。仮初め形であるが今だけは我らは最高のパートナーであり一心同体である。」


宣言を交わすとレオの右手に書かれていた魔方陣と同じ魔方陣が二人が入れるほどの大きさで地面に現れ、そのまま彼らの身体を通過し、上へと上がる。

そのとき二人同時に聞き覚えのない声が頭に響く。


-------- 従者から魔法師への絶対的信頼を感知-------

-------- 神魂の盟約を発動します -------

-------- 魂魄レベルを測定 -------

-------- 盟約に従い【覚醒】を許可 -------


魔方陣の消滅と共に声も消え去り、契約が成立する。そこに体勢を立て直したエティンが魔法による巨大な火球が打ち込まれる。

二人を呑み込むほどの巨大なそれは勢いよく迫り二人に直撃する。回避していないことからエティンは三頭とも汚い笑みを浮かべるがそれも束の間だった。

炎を切り裂き、先ほどとは比べ物にならないほどの威圧と魔力を放ちながらも、まるで何事もなかったかのように立ちエティンを見据える。エリカと、その姿に驚きを示すレオがいた。


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