13.目的と最善手
久々に?あの男が来た!
アンケート締め切りました~
初め、レオの声に耳を傾ける者は少なく、聞いていたとしても話を止める気配はない。
それも次の言葉で一気に変わった。
「おそかく魔物の狙いはエール王国じゃない。
だけど、それに巻き込まれる形にはなるだろうな。」
ざわざわと騒がしかった全員が、レオの声に全員がピタッと話をやめてレオを見ている。
静かになる中でレオは再び話始める。
「先に一つ聞きたいんだけど、【魔物の活発化】は今回が初めてじゃないよな?」
全員が周りの顔を見渡しながら質問の意図を探していると真っ先に反応したツリナが代表して答える。
「確かに初めてじゃない。これまでにもいくらか報告されてたいたが、ここまで大規模なのは初めてだよ。」
「エリネアの一件で気になることがあったんで昨日冒険者ギルドで資料を見せて貰った。
資料の内容な魔物の異常行動。で、書かれていた内容を簡単にまとめて説明すると、異常行動がある際には必ず2つ以上の離れた地域で同時に起きていること。そしてそれぞれ種族の違う魔物であること。」
「今回のケースと同じだな。
で、つまりそれがなんだというんだね?」
「はぁ~、この時点で詳しく調べていたら今回の一件はもう少し早く対処できただろうって話さ。
【こちら側の世界】にこの現象が確認されているかどうかは分からなかったがさっきの話で理解した。【知らない】ってことを。」
「レオさん、いったい何が起きてるんですか?」
「これは魔物による【縄張り争い】だ。
で、この話が正しかったら今議題に上がった魔物は先遣隊である可能性が高い。つまり本命たる魔物はまだ姿を確認できてないってことになるな。」
レオの話を聞いてエリカとキューレを除く4人の反応は著しく悪いものだった。
可能性の一つとしては参考になるが彼らからすれば突拍子のないことゆえに理解できても受け入れることができないでいる。
「つまり君はリッチやサイクロプスが君のいうところの先遣隊であると?」
「ありえないな。奴らが他を従えることは可能性としてはあるだろう。だが、奴等が言いなりになるような魔物などこの辺りで聞いたことなどない。
ドラゴンでも来ているというのか?、バカらしい!
たとえお前のいう通りだとしてどう対処すると言うんだぁ?」
マナキスは苛立ちを隠そうともせずにレオに問う。だがそこには明らかに、お前程度に何が出来る、という意思が含まれていた。
そんなマナキスの態度など一切気にせずレオは提案する。
「ここからが俺個人的には本題だ。
なぁ王様、俺とキューレを【国の依頼】という形で雇わないか?
そうしてくれたなら俺たち二人で今回の件、解決するから。」
「な!
我々をバカにしているのか!?
さっき貴様が今以上の強敵を示唆したのだぞ!」
「レオさん・・・さすがにそれは無茶なのでは・・・」
「聞く意味すらなかった・・・
やはりこのような愚かな奴らは使い物にはならないようだ
さぁ話をつ・・・」
ツリナと王だけは黙り思考の渦のなかにいるが、他の3名が直ぐ様異を唱える。マナキスがレオを無視して話を続けようとしたとき、王が静かに右手をあげた。その行動の意味を悟り全員が黙る。
一呼吸置いてから王が問う。
「レオとやら、そなたはマルベス戦士長に雇われたのではないのかね?」
「確かに、力を貸してほしいとは頼まれたけどまだ報酬も依頼内容も決まってないんだ。
それに今回の件の報酬って話になればエリカ1人で払うなんて無理だろうしな。」
「ふむ、それでそなたは何を望む?
金銭か?土地か?それとも地位か?」
「俺が今ほしいのは決まってる。
オリハルコンだ。可能なら50kgほど、ダメでもせめて10kgだな。」
「オ、オリハンコンだと?」
「貴重な鉱石だとは理解してるが今ほしいのはそれぐらいだしな。」
「オリハルコンを用意することがどれだけ大変か、お前にはわからないのか!
それにお前の実力が分からないのにすべて任せるなどと無謀なことは出来るわけがないだろ!」
「マナキスさん落ち着いてください。
確かめれば納得するんですよね?
それに彼等が二人だけで先に戦うというなら我々はその間に準備をすればいいだけの話でしょ?
間違ってますか?」
レオの言葉に終始怒りを顕にするマナキスに対して、ツリナは笑顔でマナキスに言い聞かせるように提案する。
だがその程度で納得が出来るわけがなくマナキスはレオに噛みつく。
「ならば私が確かめましょう。聞いた話ではレオ?でしたか?
彼は魔法師と報告を受けているよ。
そこまで自信満々ならば私と張り合えるぐらいの力は示してもらわなくてはな。」
「あんたが俺と?
『視認解析』・・・う~ん、ダメだな。」
レオが確認できたマナキスのレベル表示は31。
「(確かに今のエリカよりは強いみたいだけど・・・)」
レオはそのまま周りを見渡す。
エリカ父 Lv37・王 Lv14、そして第1戦士長Lv??
「(あいつ1人だけステータス隠蔽をしてるのか・・・
王様が使ってない時点でこっちでは基本的にステータスの隠蔽系と解析系は珍しいんだろうな・・・)」
と1人思考しながらやはり気になるのかツリナを見て指差す。
「あんたが相手してくれよ。」
「僕がいいのかい?」
「あんたがこの中じゃ一番良さそうだし。」
会議室の会話をドアの外で聞く影があった。
だがそんなことを知るよしもないマナキスは自分が侮辱されたことにさらに怒りを募らせる。
「お前、私を無視するな!
お前の相手は私d・・・」
その時、勢いよく会議室のドアが開かれる。全身を鎧で包みならがも肉体は端から見てわかるほどの筋肉隆々、30後半ほどで銀髪のオールバックを姿の男が1人入ってくる。
第2戦士長ガルバ・D・ジャヴァである。
「いやはや、楽しそうな話だな。どれ一つ我も混ぜてもらおう。
どうだ?レオ殿。我と手合わせするか?」
マナキスや周りを無視したまま、ジャヴァは笑顔を作りながらレオだけを見て問う。その笑顔には優しさはなく正に威嚇、好戦的な意思が表に現れていた。
それを見たレオもつられるように口元に笑みを浮かべハッキリと頷く。レオもまた、ジャヴァへ好戦的な意思を向けるのであった。