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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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119.二人目

神が神を狙う

「よっ、ほっ、はっ」


レオは風神からの攻撃を軽々と避けていく。

レイもレオに合わせながら最小限の動きで回避し続ける。


「いい加減、にせよ!」


風神の手に魔力が集中していく。

ボウッと音が響くと、手に纏った魔力は小さな竜巻に生まれ変わる。


「無視しないでください!」


すっかり標的をレイに向けていた風神にはエリカもクレイも既に眼中にはなかった。

そんな態度に少し苛立ちを見せながらエリカが突っ込む。


「―――――ふんっ」


突っ込んできたエリカを横目に見ただけで風神は直ぐに目を離し、ついでに鼻で笑う。


「このっ!」


さらにムキになったエリカは力任せに剣を振る。


「危ない!!」


エリカの剣が風神に迫る直前、エリカの体が突き飛ばされた。

よくよく見ればクレイがエリカの体を抱えるように風神からの距離を離したのだ。


「クレイさん何を―――――」


エリカはクレイの突然のタックルに困惑していると、不意に魔力の高なりを感知した。

その場所とはまさに先ほどまでにエリカが居た位置であり、次の瞬間には視界が歪むほどの風の刃が無数に現れその場にあった一切合切を呑み込み切り刻んだ。


「ふぅ、間一髪間に合った」


クレイが一息つく。

エリカは自身の結末を変えてくれたクレイに「助かりました」と添えるも、内心に生まれた恐怖を隠せないでいた。

そんな二人を全く意にした様子のない風神は作り上げた魔法を解き放つ。


「『嵐槍・裂斬』」


初めに生まれた竜巻は、その姿を勢力を保ったまま薄く、細く、鋭く伸び、嵐の槍を形成する。

形成された槍は迷い無くレイを貫かんと投擲された。


「散!」


レオの掛け声とともにレオとレイ、互いの距離を限界まで広げる。

それはレオもレイもこの魔法の性質に気がついていたからだ。


「弾け、ろ」


回避したレオとレイの丁度間に位置する辺りで風神の掛け声と共に槍はその姿を解放する。

無理やり槍状にまで押し付けられていた嵐は解放と同時にうちにはらんだ激流を周りに当たり散らし出す。


「耐えてくれよ!『護領ー二源ー』


レオはダマスカス鋼の剣を『次元収納』から取り出し、自身とレイに同時に結界を張る。

強烈な嵐の並みに結界に亀裂が走り、一部分が弾け飛ぶ。

だが、どうにか嵐をやり過ごした結界はその役目を果たしたと同時にダマスカス鋼の武器までもを道連れに消滅した。


「(やっぱこのレベル相手だと【一回一本】か・・・」


今まではどうにか回避でやり過ごしていたレオだが、これから先の戦いに対してレオが使用できる魔法の数、つまり武器の貯蔵数が持つかどうかを気にしなくてはならなくなっていた。


「残弾数は残り40ぐらいか?」


通常一回に一本などという効率の悪い戦い方などしないが、相手が神格ならば話は違う。見誤れば即ち【死】の世界なのだから。

レオがそんなことを気にしている隙に風神が動いた。


「レイ!」


レオの目に写し出されたのは、忘れかけていた俊敏性を生かした風神によるレイへの一気詰めである。

あっという間にレイの目の前に現れた風神は躊躇なくその岩腕を降り下ろした。


「潰れろ」


今までとは違い、ハッキリとした口調が聞こえると同時に、ガンっと鈍器で殴られたかのような鈍い音が洞窟に木霊した。


「ん? ・・・!」


風神から奇妙な声が上がる。

自分ではしかと降り下ろしたはずの腕が肩位置ほどで止まっているからだ。

さらに風神を困惑させたのは、自らの腕が固定されたようにピクリとも動かないためでもあった。


「おいおい、楽しいことしてるじゃねぇか」


風神からすれば聞きなれない声が、皆からすれば聞きなれた声が楽しそうな口調で届く。


「おら、よっと!!」


固定されていた風神の腕がふと動いたかと思えば次の瞬間には腹部への強烈な衝撃を受け、さっきまでいた位置へ強制的に戻される。


「グホ・・・」


咄嗟に張ったはずの障壁すら粉々に砕かれた風神の腹部は、岩すら砕きボロボロと派手に崩れ落ちる。

苦悶な声を上げながら風神は加害者へと顔を向けた。

そこにはさっきまでいた妖精の姿はなく、だがとても良く似た背の高い女性だった。

濃いめの紫短髪に赤い目、ぱっと見だけならば男のようだが、体の部分部分から女性の雰囲気を漂わせている。


「誰だ、貴様は・・・」

「ははっ!」


どうにか絞り出した風神の問いに、キューレは獣のごとき眼光と笑みで高笑う。


「関係ないだろ? あんたが敵で、倒すべき相手、それだけだ」


決して口から笑みを絶やさないキューレだが、目だけは今にも風神に噛みつかんと、襲いかからんと、殺さんと、呑み込まんとする気配を強く強く面に出し続けている。

それはまさに風神を獲物としか見ておらず、狩人と獣という立ち位置を強制的に分けられたのだ。


「どうした? ビビったのか、あぁん?」


軽く挑発するキューレに対し風神は身動きを取らない。

それが恐怖からなのか、ただの様子見なのかは判断が着かない。


「レオ、【二】だ」

「ダメだ。こんなとこでやったらこっちにも被害が出る」

「ちっ、たくしゃあねぇな」


レオの言葉に悪態を吐きながらもキューレはそれ以上の反論をせず、そのまま全身から次々と邪気を孕み出す。


「さて《魔人》様の登場だ。特と味わいな」


キューレの笑みがさらに濃く悪どく変わりながら。

風神VS邪闘神

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