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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
116/125

114.託したモノ

さぁどんどん深みへ

“風神を助けってやって来れ!”


再びシズイが懇願する。


「その前に一つだけ聞いておきたい」


誰もが二つ返事で引き受けようと考える中、レオだけが待ったをかける。


「風神は初めからあんな姿だったのか?」


レオたちが赤岩人と呼ぶように今の風神の姿にはその存在たる影も形も見当たらない。

壁画を見ていなければまったく別の話だとさえ感じてしまうほどである。


“・・・いや、違う”

「なら何故あんな姿を?」

“それは・・・”


口をつぐみながらシズイはチラリとエリカを見る。

その意図を理解できずエリカは目が合った瞬間に首をかしげる。


“僕と協力者によってその力を抑え込んだ結果なんだ”

「協力者?」


再びシズイがエリカをチラリと見ると同時にレオも釣られるようにエリカへと目線を向ける。

二人の目線を受けたエリカはさすがに居心地が悪くなったのか、眉にシワを作る。


「さっきからチラチラと何なんですか?」


少しご立腹になりつつエリカが声をあげる。


“・・・さっき君が聞いてきていたけど、その鎧は何処で?”

「え?これは・・・」


エリカはここに来る前にあった出来事を話し出す。

ニュク旧総長に会ったこと。そこでこの鎧を見つけたこと。

そして霧の中で結晶龍と出会ったこと。


“そうか、彼女はまだ待ち続けていたんだね・・・”

「シズイさんはクリホワを知っているんですか!?」

“クリホワ?”

「私が付けた名前です」

“そうか、クリホワか。ふふ”


シズイは口許に笑みを浮かべ、目には懐かしさや嬉しさを浮かべている。


“知っているよ。彼女こそ【協力者】だから。

そしてその鎧を作り上げたのは僕だ”

「え?」


突然のシズイの発現に間の抜けた声を出したのはエリカだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


彼女、クリホワは僕が総長になる前からの協力者だった。

僕は彼女へ、食料や快適な寝床の提供を。

彼女は僕へ、彼女の持つ【結晶化】で作り出した鉱石を貰っていたんだ。

さらにいえば彼女の住み処は火山の深部にあったおかげで他の仲間たちに見つかることもなかった。

だけどそのせいで、火神の問題に巻き込まれることにもなった。


怒り狂った風神は、火山を壊すことを決めた。

ドワーフたちが望んだこの土地を枯らすことが最大の復習と思ったんだと思う。

だが、それは火神を無駄死にさせるだけでなく火神が望んだ未来を守ることにも反していた。

だからこそ、止めたかった。彼の死を無駄にだけはしたくなかった。

そのために、僕は彼女に協力をしてもらい風神を抑え込んだ。

だけど・・・風神を倒すことだけは出来なかった。

だからこそ封印することを選んだんだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


“封印に成功した僕らだったが、被害は決して小さくはなかった。

彼女は僕をかばい、重症を負ってしまったんだ”


親友たるもの達を次々失っていくシズイの過去に、エリカはとうとう下を向いてしまう。


“彼女は子供を身籠っていた。

そして子を産んですぐ力尽きたんだ”


その言葉にエリカは無意識に自身の鎧を優しく撫でる。

クリホワと出会い、彼女が唯一望んだことを改めて胸に刻みこむ。


「クリホワは最後まで【我が子】を気にかけていました」


エリカの言葉にシズイは小さく微笑む。


“彼女への感謝を込めて作り上げた鎧。

その適合者が君でよかったと思う。

そして、彼女に託した結果は思いもよらない運命を運んでくれた”


運命。

それを口にしたシズイが見る先にいるのはジンチュとハイズーである。


「質問ばかりで申し訳ないけどまだ聞きたいことがある」


いい話で終わりかけた流れを良くも悪くもぶったぎるのはレオだ。


「この壁画は、未来を示唆した絵だと言ったよな?

だけど今の話だと過去にまったく同じことが起きたわけだよな?」

“この絵は未来を示唆したもので間違いない”

「ならどうして再び龍の力が必要なんだ?

あんたならそれをどうにか出来るだけの武具を作り出せるだろ?

それに、今のままだとただの繰り返しになるだけだろ」


レオの考えは至極当然のものであった。

風神を救うとしても、過去と同じ戦力では倒すことは難しい。

ましてや、現在の戦力は過去よりも低くみてもおかしくない。

ならば今回は封印すら難しいと考えるべきである。


“それならば大丈夫さ。ちゃんと託した物がある。

現代の総長が僕に似た姿をしているからね”

「託した物ってあの大槌か?」


レオが大槌の名を出した瞬間、ジンチュが顔を青くする。

そのまま崩れ落ちるかのように地面に手をつき【orz】の体勢を取る。


「シズイ様、申し訳ありません!

僕が至らないばかりに【バイシィー】を赤岩人に壊されてしまいました!」

“大丈夫大丈夫。【バイシィー】の力は失ってないよ。

それに【バイシィー】の大きな役目は終わってるから”

「それ、は?」


シズイはハイズーを見て微笑む。

その姿を見てエリカは確信する。


「この龍がクリホワの【子】なんですね」


シズイがゆっくりと首を縦に振る。


「ハイズーが?」

“そうか、ハイズーという名を貰ったんだな。

親子で名を貰えて良かったな”


その優しい微笑みは親が子へ向けるそれに良く似ていた。


「それで? 質問にまだ答えてもってないぞ。

託した物はわかった。だが、なんで未だに龍にこだわる?」

“それは、【ハイズー】の中に火神が居るからだ”

「は?」


消えたはずの火神が居る。

意味の分からない言葉にレオは初めて間抜けな声をあげるのだった。

謎が増えていく。

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