表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
115/125

113.皆同じ

シリアス?注意

「神が、死ん、だ?」


どういうことなのか、分からないジンチュは自然と口に出していた。


「神が死ぬ、そんなことが、起きえる、のか?」


ゆっくりとした口調に、何処か弱々しさを残した声が全員の後ろから聞こえてくる。

その声にいち早く反応したのはエリカだった。


「クレイさん、気づかれたんですね!」


気絶したままのクレイは、事が始まる前にエリカによって祭壇上に寝かされていたのだ。

そんなクレイは上半身を起こしながら貫くような視線をシズイに向けている。


“神は絶対ではない。永遠でもない。だからこそ、死が訪れる”


クレイの質問に答えているように聞こえるが、実際はシズイ自身が自分に言い聞かせるように話をしていた。


「ちょっと待ってください」


エリカが声をあげる。


「【神様は信仰により、その存在を持ち続ける】って話を聞いたことあるんですが・・・」


エリカは、レオの正体を聞いたとき、【神の暇潰し】の詳細の際にチラリとそんな話を聞いていたのだ。


“そう。神は普通ならば肉体が滅びても信仰が潰えぬ限り復活できる。だが・・・”


エリカの言葉が正しいとしながらもシズイは話を続ける。


“魂が、精神が消えてしまえばその限りではないんだ”


シズイの言葉の意味に真っ先に気づいたのはレイだった。

咄嗟に口元を押さえて軽く頭を振る。

それを見たレオが続いてなにかに気づく。

他の面々はまだ意味を理解できずにいた。


「魂が消えるとはいったい?」


クレイが分からないからこそ直球で聞いてくる。


“魂とは神にとっては存在そのものであり、過去から未来までにおいての自身の絶対位置を示すんだ。つまりは名前だね”


クレイは未だに意味が分かっていなかった。

いや、正しくはその意味を理解できるものは先の二人を除き居なかった。


「クレちゃん」


そのクレイにレイが話しかける。


「クレちゃんは名も知らない人々を別々の人として正確に分別出来ますか?」

「出来ません、奥方様」

「神も同様なんです。神なんて名乗る存在は数千数万でも足りません。

その中で自己の信仰を得るために【名】と【形】は神の存在を確固たるものにするために必要なのです」


有象無象の中から個人を特定するために名前と姿形を知ることは大切なことである。

これに関しては人も神も変わりはない。


「つまり、【神の死】とは【名】と【形】を失うこと、というわけですか?」

“そうですね。ただ今回の話でいうならば、【名】が【魂】を、【形】が【肉体】を示していることになるかな”


クレイは「なるほどぉ」と何かを考え始める。


「つまり、火神はどうして【名】を失ったんですか?」

“失ったのではないんだ。自ら捨てたんだ、我らドワーフの【未来】を守るために・・・”


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ある日、ドワーフの頭領の中からある議題が上がる。

それが【火山】の様子がおかしいというものだったんだ。

さすがにそれだけでは何が原因か分からないために、後日調査団を作り手分けして調べあげたが原因にはたどり着けなかった。

それでも日に日に火山は調子を落とし、一週間もするとある火事場ではマグマそのものが消える事態になった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それって今まさに起きている現象と同じだ・・・」


ジンチュは驚愕の表情と共に息をのむ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして、火山の機能停止を恐れた少数のドワーフが、僕や風神が居ない時を見計らい、火神に直接願い事をした。

「我らが信仰する火神様、どうかそのお力で火山を、我らが故郷をお守りください」とね。

火神は良いやつだった。助けれるならば自分の身を危険にさらしてでも護ろうとする、そんなやつだった・・・

だからこそ、あいつは自らの命を代償に火山を救ったんだ。

自身の力のすべてを火山と融合させることによって。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


シズイの話によれば、魔力に敏感であったシズイが真っ先に火山の様子の変化に気づき、火神の元へと向かったが間に合わなかった。

そして火神はシズイの目の前で消滅したという。


「でもそれだけならまだ火神様が生きている可能性もあるはずじゃ?」


エリカの質問にシズイは静かに首を横に振る。


“火神が消えたのちにドワーフ全員から火神の記憶、いや自らが火神の信仰者であったはずの事実まで、きれいサッパリ消えていたんだ”


神が死に、存在すら消えるとその神の全てが世界から消されることになるのだ。


「ならシズイさんはどうして今も覚えているんですか?」

“僕が当時の、火神と風神の巫覡だったからだと思う”


根拠らしい根拠などシズイには無かったが、それ以外に心当たりもなかった。


“そして火神の消滅は風神に怒りと憎しみを植え付けてしまった”


シズイの目に水が溜まり出す。

初めに見て得た雰囲気は鳴りを潜め、拳を強く握り混んでいる。

そんなシズイの姿を見つめているのはジンチュだ。

自分がこよなく信仰し続けた偉人が、目の前で悔しさで涙を流している。

そんな状況がジンチュの心にポカンと穴を空けてしまう。

前向きであり、苦労を重ねながらも最後には必ずその偉大さを、スゴさを、実力を見せつけ成功を収めたシズイが【後悔】をしている。

ジンチュの中にいた偉人シズイが、今ではただの一人の人になっていた。

だが不思議なことにそこに失望の念はなかった。

逆にやる気と勇気が溢れてくる。

敵わないと思っていた人物が、理想の中で届かないと思っていた人物が【自分と変わらぬ】人であると知ったからかもしれない。

そして彼の願いを叶えたいと思ってしまっていたのだ。


シリアスあった?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ