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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
103/125

101.危機感

苦労人ェ・・・

「さて――――」


レイの顔が再度ドワーフへと向けられる。


「素直にお話して、いただけますか?」


妖精という姿に加え、幼さの残る顔に笑みを浮かべて聞いてくる様子は可愛らしいものである。

普段ならば子供に向けられるような優しい表情で対応できたであろうが先にその【実力】を垣間見ているドワーフにとっては脅迫にも似た何かに感じられた。「喋らないとメッしちゃうぞ」と。


「こ、降参です。降参」


両手をキッチリあげ、大槌を地面に落とす。


「素直に喋りますから、【それ】を解除してください」


ドワーフが左手は上げたまま右手で何かを指差す。

そこにはいつの間にやら雷球を発動し何時でも攻撃できる体勢を整えたクレイが居た。


「クレちゃん」


レイに名を呼ばれたクレイは一度だけ目で何かを訴えていたが、一切レイに受け付けてもらえないと分かると素直に魔法を解く。

一瞬の緊張を越え、ドワーフはホッと胸を撫で下ろした。


「これでいいんですね?」

「は、はい」


ドワーフは挙げていた両手をゆっくり下ろす。


「ですが、忘れないでください」


手を下ろしきったタイミングでレイの声が響く。


「今のは貴方が自ら招いた結果です。本当ならば―――――」


レイの体から大量の魔力が一気に放出される。

ねっとりとした濃い熱風のような魔力がドワーフの周りを完全に多い尽くす。

総長たるドワーフもそんな魔力にガタガタと震え、意識が飛びかける。

だが、レイがそれをさせないようにギリギリの加減をしていた。


「殺されても文句は言えないのですから」


これ以上やるならば容赦なく殺しますよ、という警告を含んでいるが、その大半はもっとシンプルな理由であった。


「レイ! そこまで、だ」


この状態でレイを唯一止められる人物からの言葉に、レイは素直に従うと魔力を完全に霧散させる。


「もういいだろ? これ以上は話が進まないから、な?」

「ですが、こいつはレオ様やエリカさん、クレちゃんを殺そうとしたんですよ!?」

「それをしようとしたのはあの龍だろ?」

「ですから、それもこいつが指示を――――」

「レイ?」


レオが呆れたような声を上げる。

それを聞くや、レイは口を塞ぐ。


「今、目の前にいるそいつを見てもう一度同じことが言えるのか?」


レオに言われ再びドワーフに目を向けると、必死に頭を下げて命乞いをしていた。

身体中をガタガタと震わせ顔をぐちゃぐちゃにしながら、「すみませんでした、殺さないで」と何度も何度も繰り返す。


「龍を従えるような実力者じゃない。

なら他に考えられる理由は?」

「他の理由・・・?」


目の前にいる圧倒的弱者、それと圧倒的強者である龍。

その異様な関係性をレイは考え、答えを出す。


「龍自身が彼を守護ろうと、した?」

「たぶんな」


レオ自身は初めから違和感があった。

この空洞に入る前、反応は三つあった。二つの反応は察しがつく。龍とドワーフ。

ならもう一つ、自分達が来る直前に消えた反応とは?

その答えは龍の消えていった通路の前に転がる巨大な黒豹である。

全長4mはあり、人間ぐらいならば一呑みできるだろう。

そんな黒豹の体には噛みつかれたような牙後と、身体の一部は火傷だったりが見られる。明らかに龍が戦った後である。

だとするならば次の疑問が浮かんでくる。


「(あのドワーフが二匹の戦いを前に、なぜ逃げなかったか)」


それを考えていたレオの答えが【龍がドワーフを助けた】だった。

そしてそれを証明するような事柄が続く。

ドワーフが「龍を殺さないで」と願い、龍が【ドワーフの言葉を聞き】戦闘を止める。加えて、龍に【名】もつけていた。

これだけあればドワーフと龍の親密さは十分証明される。

そして互いが互いを守り、龍がドワーフの言うことを聞いていた

ならば、変な話になるが主人と従者の中でも、飼い主とペットに近いものに感じられるとレオは思った。


「だからこいつが全面的に悪い訳じゃないだろう?」

「・・・っう」


無意識に考える事を放棄していたレイはレオからの指摘に反論できない。


「あと、仲間に危害を加えられて怒るのはわかるが、やってることがキューレに似てるぞ?」

「なっ!? そ、そんなこと!」

「最後の脅迫じみたやり方はなぁ。 キューレのやり方だなぁ」

「うぅ・・・ 反省します」


今回の被害だけを見ればレイがやったことは過剰防衛ではない。

どころか、まだ穏便な方である。

だが、エリカやクレイが入ってからレイ自身の感情が大きく変化してきていた。

二人の師として厳しくも楽しく過ごす反面、我が子のように大事にする傾向が強く見られ始めていた。

それが顕著に出たのがエルフでの一件である。

自らリミッターを解除させ、神の力の一部を使う。

その理由に、少なからず二人の弟子の存在があったのは間違いない。


「(いつもはルールを重んじて神の力や、過剰な力を使うことを嫌うレイが今回も暴走気味に魔法を使っていたもんな)」


このまま放置すれば今後、今以上の暴走をしかねない。

だからこそ、レイが最も嫌う相手に似ていると伝えたのだ。


「(正直、キューレもレイに似て暴走し始めてるから同じように釘差さないとなぁ。 はぁ~~~)」


これからの事でレオが頭を悩ませている間もドワーフは未だにガタガタと命乞いを続けていた。


「あっと、エリカ!」


急に名前を呼ばれたエリカはビクッと身体を軽く跳ねさせると「は、はい」と元気に反応する。


「俺はもう大丈夫だからあのドワーフを看てやってくれ」

「え、あ、本当に大丈夫なんですか?」

「あぁ、もう少しで【安定】するから問題ない」


レオから嘘をついてるようには感じ取れないエリカは小さく頷くとドワーフの元へと駆け寄った。


「はぁ、もう疲れたわ」


精神異常のドワーフを必死に介護するエリカ。

意気消沈し暗く沈むレイ。

レオの近くで強く握りこぶしを作り悔しそうにするクレイ。

最後に龍が、レイの魔力に反応し奥の通路からチラチラとこちらを伺っているのを見つつ、レオが呟いた心からの声だった。

まともなヤツがいない!(驚愕

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